tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

村上春樹の「奈良にうまいものあり」(「群像」1983年1月号)

2020年09月29日 | 観光にまつわるエトセトラ
村上春樹は以前、奈良県下の1軒の宿坊と、2軒の飲食店を訪ね、その美味しさを讃えていた。「群像」1983年(昭和58年)1月号に載ったエッセイ「奈良の味」である。私もコピーを取っていたが、いつの間にかなくしてしまった。ところが4日前(2020.9.25)、吉田遊福さんがFacebookで、東京紅團(くれないだん)のサイトに載ったその抄録を紹介されていた。参考までに以下に抜粋しておく。紫が東京紅團の文章、青が村上の原文である。
※トップ写真は綿宗(大和郡山市八条町45)、吉田遊福さんのFBから拝借

村上春樹は「群像」(講談社)で昭和54年に「群像新人文学賞」を、昭和57年に「野間文芸新人賞」を受賞しています。昭和57年に受賞した「第4回野間文芸新人賞」の発表は「群像」の昭和58年1月号です。この1月号の「季語暦語」に村上春樹は「奈良の味」という随筆(エッセイ)を書いています。

毎年秋の終りから冬のはじめにかけて、静かなところにでかけて美味いものを食べることにしている、どうしてかというとこの時期が我々の結婚記念日にあたるからである。

<三嶋亭>
村上春樹は京都の食については決して良くは書いていません。このエッセイ(奈良の味)でも、厳しく書いています。


見ばえだけ立派で味に心がこもっていなくて、値段が高い。おまけに「東京の人に味なんかわかりますかいな」という態度がミエミエである。実に腹立たしい。地下鉄ができると街はみんな駄目になってしまう。最近では京都に行っても「三嶋亭」で肉を買って、錦小路で野菜を買って(えび芋がなくては冬が来ない)、それでおしまい。家に帰って自分で料理した方がよほど気がきいている。

<矢田寺>
それに比べて奈良の料理は決して凝ったものではないのだけれど、そのぶん素朴で、不思議に心になじむところがある。田舎料理といえば田舎料理だけど、ここにはまだ生活の匂いのようなものがある。値段も安いし、観光客の数も京都ほど多くない。

今回の収穫は矢田寺の宿坊と吉野の「弥助」の鮎料理と二階堂の「綿宗」のうなぎ料理だった。
矢田寺の宿坊は1泊2食3900円という安さだから、べつに立派な食事が出るわけではない。というか、はっきり言って粗末なものしか出てこない。野菜の煮ものと酢のものと精進あげぐらいのものだ。でもこれが本当においしかった。


<綿宗>
「綿宗」は今にも消えてしまいそうな町なみの中にある今にも崩れ落ちそうな料理旅館だ。暗い台所をのぞくとおばあさんが一人でうなぎを裂いている。味はとてもいい。まだ口の中に残っている。


<釣瓶鮨 弥助>
「弥助」は有名な料理旅館だから御存知の方も多いと思う。ちょっと季節外れではあったけれど、僕は鮎料理が大好きだから、全品鮎料理なんていうお膳を見ると実に感動してしまう。鮎子も美味い。


いかがだろう。よく京都は雅(みやび=都・宮の美)、奈良は俚(ひなび=山里の美)といわれる。34歳の村上が、地味で素朴な奈良の味をほめてくれていたことは、とても嬉しい。皆さんも胸を張って「奈良にうまいものあり」をアピールいたしましょう!

本件を報じた新聞記事(紙名・掲載日は不詳)

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