帯状疱疹後神経痛と共に読むドストエフスキー(連載18) 師匠と弟子

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帯状疱疹後神経痛と共に読むドストエフスキー(連載18)

師匠と弟子

清水正

 イエスは自分を裏切り、つまずく弟子たちの内心に寄り添い、心底からつき従ってくるように働きかけることはない。イエスの言葉は確信に充ちており、絶対である。イエスは十二弟子のすべてが、一人の例外もなくつまずくことを知っている。イエスは知っていることをそのまま口にしているだけのことである。

 

    それから、みなが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福して後、これを裂き、彼らに与えて言われた。「取りなさい。これはわたしのからだです。」

  また、杯を取り、感謝をささげて後、彼らに与えられた。彼らはみなその杯から飲んだ。

  イエスは彼らに言われた。「これはわたしの契約の血です。多くの人のために流されるものです。

  まことに、あなたがたに告げます。神の国で新しく飲むその日までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」

  そして、賛美の歌を歌ってから、みなでオリーブ山へ出かけて行った。

  イエスは、弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、つまずきます。『わたしが羊飼いを打つ。すると、羊は散り散りになる。』と書いてありますから。

  しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」

  すると、ペテロがイエスに言った。「たとい全部の者がつまずいても、私はつまずきません。」

  イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたは、きょう、今夜、鶏が二度鳴く前に、わたしを知らないと三度言います。

  ペテロは力を込めて言い張った。「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」みなの者もそう言った。(14章22~31節)(89)

 

  読みようによってはなんとも凄まじい場面である。イエスは弟子たちの誰もが、ひとり残らず彼を裏切ること、つまずくことを知っており、そのことを口に出して言っている。弟子たちは口をそろえてそれを否定する。ここで名指しで裏切り者と断定されているのはペテロで、どういうわけかイエスはユダの名前を口にすることはない。

 先にペテロはイエスから〈サタン〉とまでののしられながら、ここでもイエスへの忠誠を誓っている。〈サタン〉のイエスへの忠誠とは何を意味しているのか。福音書というテキストはじっくり読めば読むほどさまざまな恐るべき仕掛けが施されているように思える。福音書が二千年の時空にさらされながら生き延びてきた秘密に肉薄しなければならない。

 福音書において弟子たちはイエスに対して率直な疑問をぶつけるとができないし、怒りや反発の言葉を発することができない。なぜ〈サタン〉と言われたペテロは反撃しないのか。言われた時に反撃しなければ、イエスの言葉をそのまま認めてしまうことになるではないか。では、福音書に書かれてある通り、ペトロを〈サタン〉と見なせば、この〈サタン〉はイエスを裏切るにもかかわらず、「たとい全部の者がつまずいても、私はつまずきません。」「たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」と断言したことになる。ペテロを〈サタン〉と見るなら、これぐらいの嘘は平気でつくだろう。イエスは彼を裏切り、つまずく者たち(十二弟子)と一緒に最後の晩餐をしたことになる。

 

  ドストエフスキー文学に関心のあるひとはぜひご覧ください。

清水正先生大勤労感謝祭」の記念講演会の録画です。

https://www.youtube.com/watch?v=_a6TPEBWvmw&t=1s

 

www.youtube.com

 

 「池田大作の『人間革命』を語る──ドストエフスキー文学との関連において──」

動画「清水正チャンネル」で観ることができます。

https://www.youtube.com/watch?v=bKlpsJTBPhc

 

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これを観ると清水正ドストエフスキー論の神髄の一端がうかがえます。日芸文芸学科の専門科目「文芸批評論」の平成二十七年度の授業より録画したものです。是非ごらんください。

ドストエフスキー『罪と罰』における死と復活のドラマ(2015/11/17)【清水正チャンネル】 - YouTube

 

 https://www.youtube.com/watch?v=KuHtXhOqA5g&t=901s

https://www.youtube.com/watch?v=b7TWOEW1yV4