ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

在りし日の歌

2020-04-02 23:58:24 | あ行

胸を突かれ、震えた・・・・・・!

たしかにこれは中国版「ぐるりのこと。」だ。

 

「在りし日の歌」80点★★★★

 

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1994年。中国の地方都市。

川で遊ぶ少年たちを、見つめている少年がいる。

幼なじみの少年が、じれったそうに彼を誘うが

少年は「泳げないから」と動かない。

 

そして、日が沈みかけたころ

大人たちが必死の形相で、川へと走ってきた――。

 

数年後。

川での事故で、たった一人の息子シンシンを失った

リウ・ヤオジュン(ワン・ジンチェン)と

妻(ヨン・メイ)は

ある港町で暮らしていた。

だが、彼らには「シンシン」と呼ぶ息子がいる。

 

いったい、どういうことなのか――?

 

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185分。最初は正直「長いな…」と思ったす。

しかし観てたら

「いや、人の人生、3時間じゃ足りないくらいだよ」と思えた。

それほど、すごい作品でした。

 

1980年代、まさにワシも生きてた時代から始まった

中国の「一人っ子政策」。

まず

一人っ子政策を、こう捉え、描くとはなあ!と、驚いた。

 

 

そのなかで悲劇に逢い

翻弄される夫婦の30年を描くドラマなんですが

 

繊細にしてやさしく、

それでいてダイナミズムに満ちていて

人生の綾に泣けるんですわ。

 

 

はじまりは1990年代の中国の地方都市。

同じ工場に暮らし、ともにひとり息子を持つ同士として

仲良しだった2組の夫婦。

しかしある事故で、片方の息子が亡くなり、状況は一変してしまう。

 

そして映画は、事故の前、若夫婦が出会ったころの1980年代や

事故のあとの2000年代、さらにその先の2010年代と

時間軸を自在に行き来しながら

中国という国と、その夫婦を追いかけていくんです。

 

○○年、とかもちろんテロップもなく

説明もなく

マジで自在に過去といまが行き来する構成に、

最初は話が見えにくく、戸惑うんですが、

次第に流れにのせられていくので

しばし、辛抱して、身を任せるとよいと思う。

 

 

それに

不適切かもしれないけど、

中国はネタの宝庫だ、とつくづく思ってしまった。

 

人権無視の国家政策、近代化で激変する街と人々の感覚・・・・・・

彼らにしか描けないものが、ありすぎる。

 

そして、人生において

子(子に限らず、動物を含めて、若くして亡くなってしまった存在、まだ逝くべきではなかった存在)

に先立たれるほど悲しく、辛いことはないんだと体感させられました。

 

そのことを思うとき、いつも頭に浮かぶのは

「ぐるりのこと。」(2008年、樋口亮輔監督)と

「ラビット・ホール」(2010年)

 

特に「ラビット・ホール」にある

その悲しみをどう超えていくか、の言葉は

個人的にも、いろんな方に伝えています。

 

★4/3(金)から角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

「在りし日の歌」公式サイト

※公開状況などは、サイトでご確認いただけますと幸いです。


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