ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

サタンタンゴ

2019-09-13 21:40:30 | さ行

7時間18分!それでも観たかった!

 

「サタンタンゴ」77点★★★★

 

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ハンガリーの、ある田舎の村。

秋の長雨が始まり、降り止まない雨に道はぬかるみ、

村は陰鬱な空気に覆われはじめていた。

 

村人フタキ(セーケイ・B・ミクローシュ)は

隣人シュミットの女房と一夜を共にしていた。

その朝、シュミットの女房は言う。

「きっと今日、何かが起こる」――

 

そんななか、

村にある知らせが舞い込んでくる。

 

「1年半前に死んだはずの男、イリミアーシュが帰ってきた!」

 

果たして、

イリミアーシュの帰還は本当なのか?

彼は貧しく、すさんだ村に救いをもたらす救世主なのか?

それとも――?!

 

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「ニーチェの馬」(11年)を最後に

映画監督業を引退を宣言したタル・ベーラ監督が

1994年に発表した伝説的作品。

4Kデジタル・レストア版での公開です。

(35ミリのネガを4Kスキャンして、300時間以上をかけて、傷や汚れを取り除いたそうです)

 

7時間18分!とあって

さすがに一日旅行に行く心持ちで望みましたが

 

うん、やっぱり観てよかった!

 

陰鬱な悪夢のようで、しかしあらゆる暗示が提示され、

25年前の作品とは信じがたいほど、鮮烈なのです。

 

上映中に2回の休憩があるし、

全体が12章で区切られていて

各章がその前のエピソードを別の視点から見せてくれたりするので

「そうか、こういうことか」という謎解きもできるし、読解の助けにもなる。

大丈夫、予想以上にいけると思います!

 

 

貧しい農民たちの村に、死んだはずの男イリミアーシュが戻ってくる。

キリスト然としたルックスで弁達者な彼は、

村人たちを導こうとするがーー?!というのが大筋で

 

降り続く雨、ぬかるんだ道、

全てが暗たんとして、暗~~く晴れない気分になる。

が、その悲壮感が実に今日的で

苦しいけれど浸りたい、という(笑)

 

特に

少女が猫をいじめるエピソードはキツかったんですが

そこに含まれた暗澹たる未来と、現状への苛立ち、

そしてその後に続いていくこの展開では、致し方なしか・・・・・・と。

 

さまざまな解釈ができるし、それを必要とする作品ですが

ワシのシンプルな脳みそでは

 

時代はいくらめぐっても、

人間がいるかぎり、その営みも、愚かさも繰り返される。

真に愚かしいのは

騙す人間か、騙される側か、

あるいは知ること、見ることを怠っている盲目たる者か――という

問いかけであるのかな、と。

 

25年の時を経てなお、波動砲のようにズドーンと

いまの我々を直撃してくる。

 

目撃すべき映画、だと思います。

 

本作はイリミアーシュ演じるヴィーグ・ミハーイのカリスマ性がキモでもあるんですが

彼は本作含め83年からタル・ベーラ作品の作曲を手がけている

作曲家でもあるそう。すげーかっけー・・・・・(笑)。

 

 

そしてタル・ベーラ監督、いま日本にやってきています!

取材、してきます!ドキドキドキドキ・・・・・・(心拍MAX)

 

★9/13(金)からシアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「サタンタンゴ」公式サイト


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