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「常時使用」という用語、法令により定義に違いが

2018-12-03 19:59:03 | 労務情報

 労働関係法令には「常時使用」という用語がしばしば登場するが、その正確な定義を誤解している人も多いので、ここで整理しておくこととする。

 まず、労働基準法において「常時使用」とは、「常態として雇っていること」をいう。
 例えば、労働基準法第89条は、「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に就業規則の作成と届け出の義務を課している。これは、事業場の規模を「常態として何人雇っているか」によって見るものであるので、短時間労働者も短期雇用労働者も含めてすべての労働者を数えなければならない。仮に正社員は2人だけであったとしても、短期アルバイトを常に8人以上(顔ぶれは変わったとしても)雇っている会社は、この規定の適用対象となる。
 同法第32条の5(1週間単位の非定型的変形労働時間制)や第138条(時間外割増賃金の一部適用除外)等についても、これと同じ考え方を採る。

 労働安全衛生規則(労働安全衛生法が委任する厚生労働省令)においても、第4条(安全管理者の選任)や第7条(衛生管理者の選任)等、事業場の規模により適用の有無を判断するに当たっては、労働基準法と同様に、すべての労働者を数える。
 ところが、同規則第44条「事業者は、常時使用する労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない」(一部略)等に個々の労働者が適用対象となるか否かについては、行政通達(平成19年10月1日基発第1001016号)により、次の要件(1)と(2)のいずれも満たす場合に「常時使用する労働者」として扱うことが示されている。
  (1) 次のいずれかに該当する者
     a 期間の定めのない契約により使用されている
     b 1年以上使用されることが予定されている
     c 更新により1年以上使用されている、のいずれかに該当する者
     ※特定業務従事者は、b・cの「1年」を「6か月」に読み替える
  (2) 所定労働時間数が通常の労働者の4分の3以上である者
 すなわち、労働者それぞれの雇用条件によって適用の有無が定まることになる。
 これは、同規則第43条(雇入れ時の健康診断)・第45条(特定業務従事者の健康診断)・第52条の9(ストレスチェック)等についても同様だ。

 ちなみに、「常用労働者」という似た用語もあるが、こちらは、毎月勤労統計調査(統計法第9条に基づいて厚生労働大臣が実施する基幹統計調査の一つ)において用いられる、まったく別の概念だ。「常用労働者」は、「期間を定めずに、または1か月以上の期間を定めて雇われている者」と定義されており、短時間労働者は含むが、短期雇用労働者は含まない。

 事業場の規模を見るための「常時使用」、労働者個々の雇用条件を見ての「常時使用」、そして国の統計調査で用いられる「常用労働者」、これらを混同しないようにしておきたい。


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