民族の再生を考える | 草莽崛起~阿蘇地☆曳人(あそち☆えいと)のブログ

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自虐史観を乗り越えて、「日本」のソ連化を阻止しよう!

民族は、ある種の共同体だと考えられてきたと思います。その場合、民族と云う共同体の実体をどのようなものと考えるかは、おおよそ次の3つのいずれか、あるいは三つのうちの2つないし3つの複合ととらえられてきたのではないでしょうか。
 
1)言語に代表される、生活文化の共有
 
(2)血縁的・遺伝子的要素の共有

 

 
(3)共同体の形成史についての自己認識の共有(「神話」共同体)
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しかし、言語共同体の境界線は、それ自体として必ずしも自明ではありません。つまり、よく似た二つの言語体系AおよびBの関係をそれぞれ独立の言語と見るか、それとも一方を他方の方言とみなすかは、多くの場合政治的条件に依存しているからです。
 
例えば、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの北ゲルマン語諸国の言語は、たがいの国民がそれほど苦労なくたがいの言語のままで意思疎通できると言わるれほど共通性が高いそうです。
 
また、オランダ語は、広義のドイツ語の一派である低地ドイツ語から派生したもの。
 
血縁的遺伝子的要素も原始的血縁集団の生活圏域が広がるに従って、遺伝子的要素はかなり広範囲に分布するようになっていて、今日独立の民族と考えられている集団間の区別の指標としてはあまり有効でなく、むしろ、複数の民族を含むより大まかなグループと他のグループとの区別の指標ぐらいにしかならないようです。
 
それに、過去の混血だけでなく、『ダーリンは外国人』ではありませんが、今後の混血の可能性も当然あって、それを禁止・排除することが出来ない以上、血縁的・遺伝的要素は少なくとも、絶対的な基準とはなりえないでしょう。
 
最後に、説話や伝承文学などの形態を取る、集団の出自を語る「記憶の物語」の共有ですが、今日、民族とされている集団は、結局のところ、これに依拠して存在しているとしか考えられません。
 
しかし、すでに、プリンセスまるしん さんがコメントを下さったように、ここでも言語共同体の場合と同様に、政治的な事情が影響を及ぼしてきます。
 
「記憶の物語」は、初めから今日、民族とされている集団ごとに唯一の物語として共有されていたわけではなく、将来「民族」となっていく集団「内部」のもっと小さな集団ごとにさまざまな物語があったことにまず間違いがありません。
 
そして、本ブログの2010/1/5(火)の記事「神道復古の大号令で書いたように、将来の「民族」「内部」の、より小さな様々な生活圏ごとのバナキュラーな文化の独自性を悉く否定することを通じて、より大きな「民族」への統合とが行われたこと、それがいわゆる「国民国家」の形成とほとんどパラレルにか、もしくは不可欠な前提条件の先行的措定としてなされたことも明らかです。
 
生活文化も血縁集団も、最初は、いわゆる二種類の生産(生殖[=人間の有機的身体の生産]と物質的生産[=人間の非有機的身体の生産])として営まれる自然と人間の物質代謝と、この自然と人間の間の物質代謝の人間集団(社会)の行為による媒介という二つの役割を果たすための単位でした。
 
 ※非有機的身体とは、人間の生存と活動に不可欠な人工物、天然物か らなる物質的環境のこと。
 
 
生活圏域が、商品生産の発展によって著しく拡大し、そうして形成された「局地的市場圏」を更に統合してより大きな「国民経済」圏を創成し資本の国家の基盤となすことが可能且つ必要となった時、「民族」の「神話」、「民族」の「記憶の物語」の共有も、バナキュラーなものに対する暴力を伴いながら進行したのです。
 
つまり、言語共同体(あるいは生活文化共同体)としての「民族」も、血縁共同体としての「民族」も、自生的秩序として今日まで維持されてきたわけではなく、今日あるような姿においては、人為の秩序として想像=創造されたものに他ならないということです。
 
それは、直接の対面関係に基づくバナキュラーな小共同体が持っていた、スミス的「共感」やトムスンの「モラル・エコノミー」による市場の社会(=各共同体)への埋め込みの条件が破壊されていく過程でもあったのです。
 
保守主義の錯誤は、このような伝統破壊運動の産物である、近代的「民族」(≒国民)国家を保守されるべき伝統と取り違えている点にあります。
 
ここまで考えてくると、「民族の再生」と云う言葉に託された《真意》を、文字通り、近代の「民族」の再生として実現することなど不可能であることが分かります。
 
「民族の再生」を求める人々が、再生されるべき「民族」の中に見出している「価値あるもの」が、実際には当の「民族」においては否定されているからです。
 
(未完)
 
途中ですが、あえて公開してコメントを頂きながら書きくわえ、書き換えをしていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 

 

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