語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】安定してさえいればいい  ~官僚の掟(15)~

2019年03月22日 | ●佐藤優
 改めて「安倍政権は事実上の超然内閣だ」と私が考える要素をまとめてみます。
 安倍政権は、国会運営において議席数の優位から、その気になれば数の力でかなりのことができます。そんな安倍政権の強引さや政策の矛盾を国民にうまく伝え、政権交代を狙える力量のある野党もなければ、自民党内に安倍首相の求心力に対抗できる有力議員もいませんから、メディアや世論の非難は一時的なダメージにしかならないのです。小選挙区制も安倍政権に有利に作用しています。2017年の衆院選小選挙区での自民党の得票率は48%なのに、75%もの議席を獲得できたのです。
 つまり、安倍政権は、野党や自民党との関係において摩擦係数が「ほとんど0」という状況にあると言えます。そして世論は、政治への関心が薄く、混乱を望んでいませんから、他の選択肢に比べて、安定をもたらしてくれるように思える安倍政権の継続を容認している。
 これだけの条件がそろい「自分が理解したい形で世界を理解する」タイプの首相が政権を担えば、超然内閣になってしまうのも、仕方ないことなのかもしれません。決して、受け入れることはできませんが。
 そんな「一強」政権のもと、官僚たちは「一部の奉仕者」として、不祥事を繰り返しながらも、競争なき世界を享受し、新自由主義社会の中で容易に統治を進めているのが、現代の日本の状況と言えるのです。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「安定してさえいればいい」を引用

 【参考】
【佐藤優】混乱にはうんざり ~官僚の掟(14)~
【佐藤優】ロシアと似た無関心  ~官僚の掟(13)~
【佐藤優】安倍政権は事実上の超然内閣 ~官僚の掟(12)~
【佐藤優】安倍政権の反知性主義  ~官僚の掟(11)~
【佐藤優】内閣支持率42%の心理的根拠  ~官僚の掟(10)~
【佐藤優】世論と信頼  ~官僚の掟(9)~
【佐藤優】「劣位」の元キャリアの特徴  ~官僚の掟(8)~
【佐藤優】どの上司に評価されたか  ~官僚の掟(7)~
【佐藤優】官僚は年次がすべて  ~官僚の掟(6)~
【佐藤優】官僚に「落選」はない  ~官僚の掟(5)~
【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次



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