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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 最終章−7 アルゴス登場

2020-03-30 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 

 その時、急ブレーキの音が響いた。

 クライスラーのジープに乗ったビルがようやく駆けつけてきた。

「すまん。さっき、留守電を聞いた!」

「おそすぎ!」

 ナオミが、絞り出すような声で言う。

「孔明、まだ生きてるか? オムニポーテントの俺様にまかしとけ」

 うめき声だけだが、どうやら孔明もまだ生きているらしい。

「ビル、ゾンビどもをなんとかして!」

「ノー・プロブレム! 本邦初公開、これがアルゴスだ」

 えっ、これが? 

 ナオミがそう思うのも無理はなかった。図体ばかり大きくて不格好なまるで逆立ちしたカバにしか見えない代物だった。

「ファイン・シェイプだろ? トロイから帰ったオデュッセウスをご主人様と見破った忠犬から取った名前だぜ」

 ナオミは思った。(エッ、でもその後、忠犬アルゴスは喜びのあまり死んだというオチがつくんだじゃなかったっけ)

 ゴーグルを着けたビルはジョイスティックを動かして照準器らしきものを操作した。

「ナオミ、見てろよ!」

 逆立ちしたカバは上空に雷を打ち上げた。ゴロゴロと神鳴りがした。

「マザー・ファッカー!」

 ビルがジョイスティックのボタンを押すとナオミに近づきつつあったゾンビに稲妻が落ちた。爆弾でも破裂したような音がとどろいてゾンビは跡形もなく砕け散った。

「どうだ十億ボルトの熱雷の味は!」ビルが叫んだ。「続いていくぜ!今度は渦(うず)雷だぜ!」

 二匹目のゾンビが文字通り粉みじんになった。

「残りは四匹だな、アレッ」

「どうしたの?」

「バッテリーが・・・・・・」ビルが、情けなさそうに言った。アルゴスは上空に中途半端な電撃を出しては湿気ったネズミ花火の音を立てた。

「まだ未完成なんだよ、これ」

 ナオミがどなった。

「なにやってんの! あんた、インポーテントじゃないの!」

「形勢逆転かなって思ったけど反撃もここまでね。最後はどんな死に方がお望み? 切り刻まれたい? 焼け死にたい? それとも、頭から食べられたい?」マクミラが勝ち誇ったように言う。

 

 

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