まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう | 空想俳人日記

まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう

 デジタル技術で民主主義社会を築けるんだ。この本を読むと、それがよく分かる。

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 ようは、デジタル技術が悪いのでなく、デジタル技術を利用する政府やプラットフォーム企業の人々が悪いのだ。それが、この本でよく分かる。デジタル・ファシズムもパンデミック監視社会も皮下監視も、デジタルを使って国民・市民の情報をデータ化するためにデジタル技術を悪用しようと目論む人間が悪いのだ。

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 まず、「はじめに」を見てみよう。
「最後に、私は自分の著作を持ちません。なぜなら自分自身をオープンソースにしておきたいからです。したがって誰でも私の話を広めることができますし、インタビューの内容をネットに公開してあるので、私の発言部分に関しては転載・二次利用していただいて構いません。(CC01.0-いかなる権利も保有しない)」
 この姿勢が大事だと思います。プログラマーであり台湾のデジタル担当大臣であるオードリーの姿勢こそ、デジタル技術を扱う者すべての人に必要かと思われます。

 中身を見ていきましょう。

☆デジタルの向こうにあるもの
 「IT」とは機械と機械をつなぐものであり、「デジタル」とは人と人をつなぐもの。
 デジタル化は決してデジタル単独で進むのではなく、その向こうには私たち人間がいるのだということ。

☆デジタルのコアバリューは、人と人をつなぐこと
 その先にいる人が機械に置き換えられたり、すべての経緯が機械によって代替されてしまうのであれば、それはデジタル担当大臣である私の職務ではありません。

☆AIは「Assistive Intelligence(補助的知能)」か「Authoritarian Intelligence(権威的知能)」か
 AIとは「Assistive Intelligence(補助的知能)」であり、「理想のAIはドラえもん」だということです。私たち人間の価値がどんどんなくなり、AIの決定に従わばければならなくなるのは「Authoritarian Intelligence(権威的知能)」。

☆市民には、政府に個人情報を監視されているかどうか、確認する権利がある
 台湾ではどのようなケースでも警察が「ショートメッセージを利用した実聯制」のデータを見ることはできません。我々はこれが「通信」ではなく、中央感染症指揮センターに協力している行為であり、犯罪の捜査とは完全に切り分けられるべきであると認識しているからです。

☆「ソーシャルイノベーション」とは何か
 私たちの仕事は、すべての人が孤独に闘うのではなく、助け合えるよう「ソーシャルイノベーション」を用いて支援することです。

☆自分一人で解決しようとしても永遠に一部分しか解決できない
 異なる能力を持っていたり異なる角度で物事を見る人が、自分とは異なる部分の問題を解決できるのです。

☆オープンにすればするほど、政府と市民が近づく
 台湾では「政府オープンデータプラットフォーム」上であらゆるデータが公開されてますし、市民から特定のデータのオープン化をリクエストすることもできます。・・・本当に市民たちが必要としている資料を後悔できているかといった意味ですね。

☆言論や報道の自由と、フェイクニュースの問題
 まず駆動すべきはデータであり、データによって私たちが駆動されてはならないのです。

 以上、転載・二次利用させていただきました。

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 台湾では、デジタル民主主義のために「オープンガバメント(開かれた政府)」がデジタル担当大臣を中心に推進されています。それは4段階に分けられます。

1段階・・・政府の資料やデータを解放する「オープンデータ
2段階・・・解放された後に何か意見がないか問いかける「市民参加
3段階・・・それらに政府が回答する「説明責任
4段階・・・「3段階目で誰かのことを忘れていないか」を探す「インクルージョン

 4段階目のインクルージョン(inclusion)とは日本語で「包括」と訳される言葉で、組織内にいる誰もが「その組織に受け入れられ、認められていると実感できる状態」を指します。 つまり、市民の誰一人も取りこぼさない、ということです。
 そして、そうした市民参加による意見がシェア(共有)され、多くの賛同者がいる案件を政府は計画策定実施していく。これは、「選択権を市民に委ねてこそ、民主的だといえる」ということなのです。

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 こうした台湾の取り組みは、これまで読んできた本の中にも、世界の中で、台湾がデジタルによるさらなる民主主義の推進を進めていることが書かれておりましたし、コロナ禍におけるパンデミックへの対応も、世界で一番優れていることも語られておりました。
 これは、ひとえに、市民の行動や思想を監視するという上からの統制目的では、デジタルは民主主義とは逆の方向に走ることになることを意味します。市民が悩んでいること、問題視していること、それらを解決する政府こそ、民主主義の政府なのですから。
 デジタル民主主義を推進する台湾は、市民による市民のための市民の政府を築いています。

 第4章は、Q&A形式で、悩みを抱えている方に応えてくれております。

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 そして、オードリーの姿勢は、「台湾政府のために働く人間ではなく、台湾政府とともに仕事をする人間である」と。
「Not for TAIWAN,with TAIWAN」。

 こうした素晴らしい活動をする台湾が、いまだ国際連合にもWHOにも参加が認められていないことは、悲しい現実です。でも、私たちは、いや、すべての国が、これからのデジタル社会に対し台湾をお手本にしていかなければならない、そう痛感します。


まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう posted by (C)shisyun


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