さて、自作はともかく、新人監督映画祭で出会った監督や俳優などの裏話を。

コンペティション部門の担当をしたため、直接監督たちとメールのやりとりをすることが多く、多くの監督さんたちが名前を言うとなんとなく分かってくれるのが嬉しかったです。全ての作品上映に立ち会うことが出来なかったので、ごく一部の方々の話をします。


準備段階からまめにメールをいただいた「tig☆hugちぐはぐ」の渡辺喜子監督。挿入歌を担当された河口恭吾さんからお花が届くとのことで、ロビーにあったテーブルを花を置く台として拝借。ふた鉢届いたのですが、渡辺監督は2日に分けてひとつずつお持ち帰りでした。3日間通われていて、見かけるたびにご挨拶してくださった方のひとりです。お疲れ様でした。


関谷崇監督「震える」の上映では、エンドタイトル後に入る映像の前で上映をストップしてしまうという痛恨のミス!これは最大の失敗でした。関谷監督は内心はともかく、笑って「気をつけてくださいね」とおっしゃってくれましたが、上映の責任を強く感じました。


この「震える」を含むブロックからMCを担当してくれたのが、映画祭応援大使のそたいくん。自ら映画好きを公言するだけあって、10分の監督紹介トークだけじゃもったいないほど話の広げ方がうまい。しかし監督いじりもすごいので「変態~metamorphose~」の松本剛監督は「変態!変態!」といじられて、ちょっと気の毒な感じでした。そたいくんはMCとしていくつかの会場を移動していたのでじっくり映画を観る時間がなかったのですが、それでもタイム涼介監督の「イルカ少女ダ、私ハ」を面白がっていて、あと少しで終わりというところで出ていかねばならないのを悔しがっていました。そたいくんには、後ほどタイム監督からいただいた「イルカ少女」のDVDを進呈しました。ある意味、本映画祭で一番親しくなったのが彼でした。


「獅子仮面あうん」はディスクチェックで観た時は3分ほどの予告編のみだったので、これでいいのかと心配でしたが、結局予告だけ上映するプロモーションだということで、上映前にあうんや妖怪などが登場するアトラクション付き。通常閉め切りにしていた扉を特別に開けてもらって、スクリーン前に突然あうんが飛び出してくるという演出が出来ました。


翌29日の朝イチに上映されたのが「さくらさくら、それから」。残念ながら山口誠監督は舞台挨拶には来られませんでしたが、脚本の方と出演者が登壇。話を聞いて驚いたのが、映画の中で小学3年生の少年少女と中学生になった彼らを演じる役者が、よく似ているなーと思ったら、なんと同じ役者を使って彼らが成長してから撮り足したという、倉本聰監督「時計アデュー・リベール」もビックリの長期撮影が行われていたという事実。しかも、少年と姉を演じたのが実の姉弟で、脚本の人はそのお母さんと聞いて、ええと今手元に資料がないけど監督はお父さん?これはまたホドロフスキー監督にも迫る家族映画ではないか!映画そのものも今回応募された作品の中でもお気に入りの1本ですが、裏話を聞いてますます好きになりました。賞にひっかからなかったのが残念。


「ミント」は遠く沖縄から参加の田港栄輝監督作品。監督も出演者も泊まりがけで映画祭に参加。3日間、何度となくその姿をお見かけしました。これもまた心にすっと入ってくる、しかしラストに不思議な展開のある、余韻を残す作品でした。


「ファーザー×ファーザー」と「母との旅」は出演者が妙にかぶるなあと思っていたら、両監督からもらった名刺が同じ会社のもので、図らずも仲間同士の作品がカップリングされたことになりました。女優の生見司織さんは両作品のゲストとして挨拶。


上記2本と合わせて上映されたのが朱彦潼監督の「コップの中の子牛」。アニメならではの利点を活かした絵柄と、美しいんだけどシビアな人生の断面を描いた作品。監督の実体験に基づいた物語だとどこかで読んではいたが、本人の口から聞くとまた違った感慨が。見た目は実に控えめな感じのお嬢さんなんだけど、その視点は鋭い。月イチ映画祭でも上映されたそうで、月イチの野火明監督(この人もえび天で知り合った人のひとり)ともよく話していました。


「ノー・ヴォイス」古新舜監督にもずいぶんご迷惑をかけてしまいました。本来この作品にはドラマに続いてドキュメンタリーが付いていて、それで1本の作品なのですが、時間の都合でドラマ部分だけを上映することを快諾していただきました。ところがそれだけでなく、レッドカーペットの登壇名簿から監督の名前が抜け落ちていたりと、ミスが続発。本当にご迷惑をおかけしました。舞台挨拶終了後、ゲストの幸染さんや東優夏さんともお話させていただきましたが、この映画への思いの強さが伝わってきました。


2日目の最終回、私が個人的に楽しみにしていたのが「フールジャパン ABC・オブ・鉄ドン」。プロデューサーの星野零式氏とは何度かメールをやり取りして、独特な上映方法(拍手か「しょーもなー」のツッコミ必須の観客参加型上映)や、総勢26監督の参加など、何が起こるか分からない、ある意味一番お祭りらしい映画でした。私も何度か観ていたので、観客がどれに拍手しどれに「しょーもなー」と言うか興味津々で観ていましたが、結構意外な作品に拍手が起きたりして、その反応も面白かったです。その中の1本、飯塚貴士監督の「OBAKE」は釣り糸バレバレのチープな人形劇に監督の一人全役(たしか5人か6人と1匹)のアテレコが楽しい作品でしたが、大拍手。内容は「しょーもなー」ですが、作品として認める人が多かったのは嬉しい勘違いでした。上映終了後、延々と続くトークに時間切れを告げる私が乱入する段取りを考えていましたが、意外と時間ぴったりに終わってしまい、なぜか私に向けられた「金返せ」コールに反撃したものの、風邪で声がしゃがれていたもので、あまり迫力がなく申し訳なかったです。


さて3日目。しょっぱなの「ビリーザキッドの最期の弾丸」は役者がよくて、特に男だか女だか設定が分からない転校生、サヤマ役の菊池佳南がすごく魅力的に撮られています。菊池さんは、この日、上映された「異(あだ)し日にて」の主演で舞台挨拶が予定されていましたので、ミーハーにも話しかけてしまいました。気になるサヤマの性別ですが、別々に聞いたにも関わらず、ワタナベカズキ監督も菊池さんも「どちらともハッキリさせない」という方針だったようで、二人とも「解釈は観客に委ねる」という答えでした。ここだけの話、普通の女性役(人を殺しますが)を演じた「異し日にて」より「ビリーザキッド」の彼女の方が、表情の変化を見ているだけで楽しくてよい。


同時上映が短編部門グランプリを獲った藤井悠輔監督の「COIN LAUNDRY」。藤井監督は同時に「はちきれそうだ」も出品していたのですが落選。私は個人的に「はちきれそうだ」がツボだったのでその話をしたところ、監督もこの作品は気に入っているようで「でも、こちらはなかなか入選出来ないんですよね」とおっしゃっていました。したまちコメディ映画祭にも出品され、上映されましたが、確かにコメディというよりは、シュールでぶっとんだ展開の作品なので、「COIN LAUNDRY」の方が万人に受け入れやすいとは思います。たった9分間でも、オチの付け方など、実に巧みな作品。


このあたりで私は「サメロメ2014」の上映に行ってしまったので、戻ってきたのは三原慧悟監督の「バクレツ!みはら帝国の逆襲~世界解放宣言~」上映時。事前には時間の都合で冒頭しか観ていなかったのですが、かなり過激で病的な内容なので、そたいくんが呼び込んだおばさまたちが途中耐えられないのではないかと余計な心配。しかも同時刻にはメインホールで表彰式が進行中。しかし、ただ過激さを狙うのではなく、いくつものエピソードを重層的に重ねていくしっかりした脚本があり、精子を溜めた風呂にあこがれの人を沈めるとか、うんこ投げるとか、終始妄想とも本音ともとれる周囲の人々の声が聞こえてきたりとか、そこだけ取り出したら顰蹙ものの描写が、最終的には何か突き抜けた、タイトル通り解放された気分になれる快作。監督自身が驚いていましたが、意外に多くの観客がそのまま最後まで残り、終映後には惜しみない拍手を贈っていました。MCのそたいくんとの相性もよく、監督のキャラが何より観客の心に残ったようです。おばさまも「応援しますよ」と温かく声をかけていました。

で、実はその後に「フナQ」というそたいくんとふなっしーのおしゃべりに絵を付けたアニメをなぜか上映(実は3日間上映予定が、2日目はディスクトラブルで断念)。熱心なそたいくんファンがいて、かなり遅い時間でしたが、最後まで観客が(三原監督まで)残っていました。そのままダラダラとトーク。そたいくんが私に話しかけるものだから、つい前に出て、たまたま耳にしたグランプリ情報とそたいくんDVDのPRの手伝いをしました。

この他、私の担当する上映ルーム以外でも、初日から訪れて何度か話した「蒼のざらざら」の上村奈帆監督や「SunFlower向日葵」の木内一裕監督。わざわざご挨拶にみえた「ゲットリベンジ:恋人に復讐する方法」の長尾雄一郎監督、朝早くから上映チェックに訪れた「私は知ってる、私は知らない」の澤田サンダー監督など、いろいろこぼれる話はあるのですが、このへんで。


怒涛のような3日間、しかも最終日には完全撤収をしなければいけなかったので、打ち上げする時間もなく片付け、解散。忙しく、トラブルも多く、なんだか不完全燃焼な感じもしましたが、少なくとも観客のみなさんには、映画を思い切り堪能してもらえた3日間だったと思います。疲れた。もう手伝わんぞ!!(笑)



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