関 節夫のパラダイス・カフェ

関 節夫のパラダイス・カフェ

心からの言葉「ココトバ」を紡ぐココロ二スト&短歌アーティスト・関 節夫の公式ブログです。

https://www.bestkenko.com/

心からの言葉「ココトバ」と、魂を込めて紡いだ31拍の短歌をお届けする

ココロニスト&短歌アーティストの 関 節夫ワールドへようこそ。

短歌を武器にして、音楽、写真、イラストなどのコラボレーションによる

クロスメディアの表現で時代を先鋭的に切り取り、 癒しから元気の素を

発信しています。

心の琴線に響く、メンタルデザインと短歌セラピーの世界を

ゆっくりと ご堪能いただければ 幸いです。

*「ココトバ」「ココロニスト」は関節夫が商標登録です

関 節夫のパラダイス・カフェ

短歌朗読CDアルバム        i-Tune からダウンロードができます。                     

「ゆらぎの言ノ葉」

                        「ゆらぎの言ノ葉」のCDや

                  「関 節夫・短歌スピリットコンサート」の動画が   

                               MySpace から試聴できます。

関 節夫のパラダイス・カフェ 九州・博多の自殺しようとした男性の命を救い、

マスコミで話題になった

~お父さん応援短歌~

「たそがれはまだ早い」

関 節夫のパラダイス・カフェ 日本で最初の

短歌と写真のコラボ

写歌集

「恋  時」           

関節夫ビタミンラヂオ【ココトバWAVE】 関 節夫のパラダイス・カフェ

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#関節夫の手のひら小説35


解放区


圭介は小さな喫茶店で真里子を待っていた。窓際の席には、コーヒーの湯気がゆっくりと立ち上っている。久しぶりに会う彼女の顔が、どんな表情を浮かべているのか、彼には想像もつかなかった。


真里子が店に入ってきた。薄いベージュのコートを脱ぎ、微笑むでもなく無表情でもない顔で圭介に歩み寄る。席に着くなり、彼女は一言こう言った。


「解放区を探しに行かない?」


圭介は少し驚いたが、彼女の提案にはどこか引き込まれるような魅力があった。解放区――それが何なのか、具体的にはわからない。ただ、言葉に込められた響きに、胸の奥で何かが動くのを感じた。


二人は車に乗り、目的地のないドライブを始めた。都会の喧騒を離れ、どんどん山の方へ向かう。道中、真里子は静かに話し始めた。


「圭介、私はずっとどこにも居場所がない気がしてたの。家族の中でも、職場でも、恋人と一緒にいてもね。でも、圭介といると、少しだけ違うの。あたしの解放区は、圭介といるこの時間なのかもしれない。」


圭介はハンドルを握りながら、彼女の言葉を反芻した。真里子と出会った頃、自分もどこか閉じ込められているような感覚を抱えていた。社会の期待、家族の期待、そして自分自身が作った壁。そのどれもが重くのしかかっていた。


車はやがて小さな湖のほとりに着いた。風が冷たく、澄んでいる。二人は車を降りて、湖を見つめた。


「ここが私たちの解放区でいいかな。」真里子がぽつりとつぶやく。


圭介は頷いた。「どこにあるかじゃなくて、誰といるかだよな。」


真里子は笑った。初めて見るような、心の底からの笑顔だった。


解放区――それは特別な場所でも、壮大な夢でもなかった。ただ、お互いを受け入れ、心を許せる瞬間。それが二人の解放区だったのだ。