<信仰と見世物のはざまで>
昭和期からこれまで、幾度となくテレビ番組等で取り上げられてきた妖怪のミイラ。X線照射によって作り物と判定されたものもあれば、「判定困難」とされるものもある。いずれにしろ、一生に一度は見たいモノではある。
それが今年10月、広島県三次市の公立施設「三次もののけミュージアム(湯本豪一記念日本妖怪博物館)」で見る機会があった。それは企画展「幻獣ミイラ大博覧会」(会期は10月で終了)に於いて。「幻獣」とはユーマのような意味であろう。
展示されていた完全体のミイラの妖怪の中で、最もメジャーなものは人魚と烏天狗であろう。しかしここに展示されていたそれらは、よくテレビや雑誌で見るミイラとは異なっていた。
雑誌等でよく見る人魚のミイラは、ムンクの叫びのような表情をしているが、ここのミイラは爪の生えた手を、首元と腹に当てている。坊主頭は同じだが、頭部は細長く、口の中は奥行きがない。
体長43cm。ある寺に藩政時代から秘蔵されてきたもので、来歴等は不明。
その他、上半身が猫の「猫人魚」(栃木県産=上の写真上部)や骸骨人魚も展示されていたが、これらは昭和前期に開催された「大妖怪展」という見世物イベント時の出展物故、作り物であろう。
烏天狗と人間体の天狗との違いが分からない者もいると思うが、後者は神格化される場合もある「大天狗」で、前者は「小天狗」とも呼ばれることもある、大天狗の使者的存在。嘴があり、鳥のような手足をして、黒っぽい色をしていることから、烏天狗と呼称される。ただ、地域によっては大天狗のような人間体もある。
展示されていた烏天狗のミイラは6体。藩政時代のもので、代々修験者の家に伝えられていたもの。三段の台座(修験者の家でも)に展示されており、上段の二体は、両腕で頭上に輪っかを作る「天の禊」を現し、中段の二体は胸の前で手を組む「人の禊」、下段の二体は座禅する「地の禊」を表現している。座高は30cm少々。
テレビや雑誌では見たことがないミイラもあった。それがキングギドラを彷彿させる三頭竜である。体長45cmで、昭和前期の群馬県産。これも大妖怪展出展物。
三つ首の付け根が黒っぽくなっていることから、子供のワニの胴体に三匹の蛇の頭をくっつけたものであろう。今の時代なら動物虐待となり、製作者は捕まる。
他にも先祖が竜と人間の娘との間に生まれたという者の家に伝わる竜の頭骨や尻尾、以前、荘内半島のハイキング記事で触れた、雷によって地上に落ちてきた妖獣と同類の「雷獣」のミイラも数体展示されていた。
大分県にある身長2メートル以上の鬼のミイラの写真も展示されていたが、そのミイラは誰でも現地(場所は机上で確認済み)で拝観できるものの、禁を破って写真撮影すれば呪われると言われており、被害報告も上がっている。→公式サイト
これらのミイラ、信じるか、信じないかは、あなた次第。尚、常設展の中にミイラがあったか否かは覚えていない。
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