タイトルのないミステリー

タイトルのないミステリー

おもにミステリー小説を書いています。
完成しました作品は電子書籍及び製本化している物があります。
出版化されました本は販売元との契約によりやむを得ずこちらでの公開不可能になる場合がありますのでご了承ください。
小説紹介HP→https://mio-r.amebaownd.com/

ご訪問ありがとうございます。

こちらは私が趣味で書いている小説をUPしています。


それぞれの小説のタイトルをクリックしていただくと 

掲載中の物はその物語の最初のページに、

書籍化された物はその書籍の販売ページに飛びます。


途中、誤字脱字あるかと思います。

(気がついたところは直していますがそうでないところもあります。)

そこは流してください・・・あせる


*注>ここのところ自動と思われるコメントが多く入ってきます。記事内容に全く関係の無いコメントはスルーさせて頂きます。

 

☆リンク ~棘~  (2010年7月~2012年10月連載)

男と女が織りなすミステリー一体誰が彼を手に掛けたのか…

長編ミステリーです。
こちらのお話は2019年1月に電子書籍化致しました。

Amazonnにて販売中です。



☆ゲンと源太 (2012年10月~11月連載)
こちらは短編物です。

狼と人間の切なくも悲しいお話です。

こちらの本は電子書籍とペーパーバック版があります。

電子書籍と製本ではラストが全く違います。

製本の方が元々の原作通りです。どちらもお楽しみただけると幸いです。

只今Amazonnにて販売中です。

製本の方は書店でも注文購入可能です。



羅刹(らせつ)の囁(ささや)き (2012年11月~2015年5月連載)
かなり超がつく長編です。

人と人とが何処でどう繋がっているのかを解き明かしていくミステリーです。

複雑怪奇に繋がった人物関係を楽しみながら読んで頂けると嬉しいです。

只今、電子書籍化中です。



魍魎(もうりょう)たちの誘(いざな)い

(2015年6月~ 2018年2月)
 全二十話 ★目次

 
 こちらは短編構成です。1話が20~40回くらいの連載でお話が完結しますが一話から二話、三話、もしくは何話目かと関係ない中にもどこか関連があったり、違うお話の登場人物が出てきたりします。


短編でありながら長編?みたいな。

構成を楽しみながら読み進めて頂ければと思います。

 

深層の滓(しんそうのおり)  連載中

 (2018年2月~)


長編連載物です。別々に起こった全く異なる事件が人と人を通してどこかで繋がっていく・・・どこで誰が、どんな風にかかわっていくのか、そしてその渦中の人物の真意とは?色々想像を巡らせて読んで頂ければ幸いです。


★尚、ここに掲載されている全ての物語はフィクションです。

登場する人物、団体名は実在するものとは一切関係が有りません。






 

まげは上天茶筅(しょうてんちゃせん・上を向いた引っつめの髪に括りあげたもの)に結い、胸ははだけたまま、袴の代わりに腰には縄帯をして火打袋を下げ4尺ばかりの太刀を大地に構えてそびえるように立っている。どこの百姓小僧だ、という出で立ちに似つかわしくない長い太刀が妙に様になっている。尾張ではこのように百姓の倅も太刀を持つのかと少し驚いた。

「こしゃくな!」

先頭の者が切りかかろうとしたときにその若者は太刀を構えた。侍相手にやる気満々という感じだ。見ていて心が躍ってしまった。

(なんて面白い!)

尾張に入った途端、こんな寸劇のような展開。ここでの生活は面白くなりそうだと私はさらにワクワクした、が、そう思ってばかりもいられない。こんなところで百姓の子倅と血生臭い事になったら寝覚めが悪い。なんと言っても私はこれから婚礼をあげる身。こんな日に血を見るのは好まないし、ゲンが悪いと言うもの。それに戦でもないのにむやみに人切りをするのは好ましくない。侍が刀を振りまわすのは戦場(いくさば)でないとただの輩になり下がる。それはあってはならないことだ。しかも侍が百姓を無礼打ちだと称してその命を粗末にするのはただの弱い者いじめに過ぎない。それがどれほど武士の格を下げる行いかという事をもっと知るべしであると私は思っていた。

「待ちや!」

私が駕籠の中から声をかけると今にも切りかかりそうな勢いをしていた者の足が止まる。

「今日は妾(わらわ)の輿入れの日ぞ。むやみに血を流すでない」

「ははっ!」

重臣たちはその場にかしづき、立ち上がると行列は何事もなかったように再び動き始める。

 さっきの童(わっぱ)は不敵な笑みを浮かべたままそこに立って通り過ぎる私の駕籠を見ていた。浅黒く日に焼けてはいるが細面で繊細な顔立ち、あまり百姓らしくない顔だ。とはいえなんという怖い物知らずの童だ。尾張というところは巷は無礼講なのか、私はそれまで侍の行列の前に立ち塞がる百姓など見た事はない、などと考えながら3度目の夫がいる那古野城(なごやじょう)に辿り着いた。

 

 天文18年2月24日(1549年3月23日)、私の3度目の婚礼の日。恭しく私を迎え入れた重臣達、その誰もが私を見て一瞬「え?」という顔をする。何故か知らないが美濃から来る斉藤の姫は見目麗しいという噂が流れていたようだ。皆(みな)が思っている事は容易に想像できる。噂と実際はかくも違うものか、そうして下を向いて笑っておる。勝手な噂に困惑しているのは私の方だと言うのに。全くもって迷惑甚だしい。

 その後、似合いもしない婚礼衣装を整え、重臣達が並ぶ部屋に案内(あない)され、用意された壇上に着くと殿の妹だという姫が挨拶に来た。

「姉上様にははるばるようこそおいで下さいました。市(いち)にございます。今後とも良しなにお願い申しあげます」

そう言って頭(こうべ)をあげた妹御の顔を見た途端、

(ウワッ!)

と、思わず声が出そうになった。何と麗しい姫御(ひめご)だ。私はこのように美しい女子(おなご)を生まれて初めて見た。女の私でも惚れ惚れと見とれてしまう、まるでこの世の者とは思われないほどの美しさに息を飲んだ。私の母、小見の方も兄の母の深芳野様も相当に美しい方達だと思っていたがその比ではない。

 

〈什伍に続く〉

※こちらのお話しは史実に沿ってはいますが、不明な部分、定かでないところは多分に作者の創作(フィクション)が含まれますので、ご留意の上ご拝読いただけますようお願いします。