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経済対策「108兆円」 家計・中小に6兆円給付(東京新聞)
(略)家計や中小企業などに総額約六兆円の現金給付を行うほか、法人税や社会保険料約二十六兆円の支払いを猶予する。政府は七日午後、財源を示した二〇年度補正予算案とともに閣議決定する。
首相は六日の新型コロナウイルス感染症対策本部会合で「国内総生産(GDP)の二割という規模は諸外国と比較しても相当思い切ったものだ」と強調した。(略)
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毎度のことですが、事業規模とかどうでもいいのよ。
「お前はオウムか」と言われようが何度でも繰り返します。大不況下、恐慌下で絶対に必要なのは、
失われたGDPの穴を埋めること
なのです。ああしつこい。ああうるさい。すみませんねえ。
その穴埋めは、事業規模ではなく、財政赤字の額(いわゆる真水)でしか判断できません。当たり前でしょうが。銀行から100万円借りて、そのまま返済したら100万円の所得になるんですか?ならねえよ。ゼロだよ。カスミか何か食って生きてるんですか?
ちなみに、この東京新聞の記事にある一番手の事業としては、
>家計や中小企業などに総額約6兆円の現金給付
とあります。あら安い。
これは規模はともかく、真水として積んでよい。
次に、
>約26兆円の法人税や社会保険料支払いを猶予
ですと。
ほれ、二番手からして「猶予」でしょう。つまり、「後で払ってね笑」ということです。真水ではない。あとは例の、所得が減った世帯に30万円というのがあります。約1000万世帯とのことなので、総額で3兆円くらいか。
マスク2枚配布。
繰り返しますが、マスクは確かに貴重品だし、やるべきことをやってるなら配布しても構いません。単なる誤魔化し、やってる感を出すための事業なら地獄へ堕ちるべし。
アビガンの備蓄。
この薬がとんだけヤバいのか、本当に効くのかなど専門的な話は分かりませんが、必要ならやってくれ。ただし、備蓄とは「コロナ後」の話です。今という大問題から目をそらすことはできません。
最後、よく分からないのが「中小企業などを対象に給付金制度を創設」。売上高が急減した中小企業が対象で、地方税の固定資産税や都市計画税を減免…とありますが、これだけで50とか60兆円積めるとも思えません。
というわけで、合計の真水・実弾としては半分もいくのかどうか。リーマン時の比率で行けば40兆円くらいあればマシ、って感じでしょうか。
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(追記)
緊急経済対策の財政出動は39兆円 首相表明「思い切った措置」(産経新聞)
安倍晋三首相は7日午前、首相官邸で開かれた政府与党政策懇談会で、新型コロナウイルスの感染拡大に対処する政府の経済対策の財政出動は39兆円に上ると明らかにした。
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というわけで、39兆円だそうです。珍しく予想がほぼ当たりました。(注:事後に書いたのではない笑)
GDP比7.3%くらいですかねえ。これなら、取りあえず消費税によるダメージくらいは埋められるでしょう。1QのGDP成長率は年率▲7.1%でしたよね。もちろんこれが1年続くとは思いませんが。
ただし一発限りだけどね。消費税は未来永劫に渡る無間地獄なので、その意味では焼け石に水です。
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話が前後しますが、その「世帯30万円の給付金」ってのは、
† 地 ● 獄 ● 絵 ● 図 †
になる可能性が極めて高いと思います。
もう、かなり以前に出た「第一報」の時点で、各記事のコメント欄は炎上していました。それらを端的に書くと、こういうことです。
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支給の要件が「収入が半減以下」なのであれば、収入が6割になった世帯は救済されない。4割になった世帯は30万円もらえるので、立場は逆転する。
ということは、収入を故意に減らして半減以下(4割台)にした方がよく、落ち込んだ収入をカバーしようと頑張らない方がいい。…
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「稼がない方がマシ」という状況は、一見して「家でおとなしくすべし」という方針と親和性が高いようですが、全く違います。なぜなら、①半減しそうにない人は同じように働くし、反対に②半減どころでない人も、何とか半分になるまでは頑張ろうとするからです。
つまり①②のような人々は「危ないけど頑張って働いてねwww」と国が推奨することになってしまうし、一方でボーダー付近の人々は殺伐とした給付金受給戦争に参戦することになります。
もちろん、色々あるんですよ解釈は。本当に国が「国民どもは給付金争奪戦をやれ」なんて推奨してるわけじゃありません。消費税だって同じです。あれは「カネを使うなら死ね」という意味の税ですが、国が本当にそう考えているわけではない。(結果的には同じだから弁解の余地は無いのですが。)
いや、つまり、色々言ってますが、
どうあれゴタゴタ考えさせる時点で、
政治としてはアウト
なのです。こういうのって国民同士の憎悪を煽るんですよ。バカがケチるからだよ。全員給付か、せめて無段階の傾斜(行政ってそういうの得意じゃん)をつけて機械的に配布すべきです。
憎悪を持つ国民が悪いのではありません。経済危機にあっては国民は財布を開かなくなり合成の誤謬を招きますが、それは国民一人一人のせいではない。同じことです。個々の様々な意思を持ち、自分は何とか幸せになりたいと考える人々、そして命は一つずつしかないという点では誰もが同じである集団。そんな集団をうまく統制するのは政治の重要な仕事です。ましてや国内での対立を煽るなど下策です。
「いまは非常時だから我慢しろ」も大事です。それは認めます。しかし一方で、カネなら出すと言わねばなりません。安倍総理大臣は事業自粛への補償について、
「その店舗が自粛すると、納入業者なども事業がストップする。店舗だけが補償を受けると公平性を欠く。だから現実的ではない。」
と答弁しています。
じゃあ30万円、受給世帯10%程度ってのは公平なんですかね。(はい支持者の皆さん出番ですよ。うまい理屈を考えてください。)
国民の意識を高めるための政策、説明は、大事です。そんなことは分かっています。しかしカエサルじゃないのだから、不平不満を一瞬で黙らせるような、天才的な「言葉」などそうそう出てきやしないのです。
このブログでは大前研一の名前がよく出てきますが(笑)、あの手合いは個々人の物欲低下、個々人の国への依存などをよくヤリ玉にあげています。
違うんだよ!
人間の根源的性質なんて、そうそう変わるものではない。自分が満たされて余裕があれば、懐が痛まない範囲で誰かに奉仕するし消費もする。世の中が荒れてくれば自衛に走る。国からカネをもらえるかどうかの瀬戸際にあれば他人を蹴落としてでも自分はもらいたい。うまく行かなければ「あいつはズルい」と批判する。実際に声に出して言わない人も多いでしょうが、多かれ少なかれ不平不満はたまるのです。
程度の差こそあれ、それが人間です。当然だろ。その根源的性質を持った集団をどのように調整するかが政治の勝負です。だから、人の根源的性質自体について批判したり、無視したり、性質を変えろと命じるのは傲慢です。人とはそうしたものだと理解した上で、政治は進めるしかありません。
(その点では「グローバリズム」も、人の根源的性質を丸無視した考え方です。)
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さて、取りあえず39兆円という数字が出てきました。
もちろん足りません。混乱が長引けば長引くほど補償は長期に渡り必要だからです。そして、この状況が1か月や2か月程度で終わるとは思えません。
経済面もそうですが、医療面でも相当まずいでしょう。日本の集中治療のベッド数はイタリアの半分以下だから、最悪の場合は「阿鼻叫喚」になる可能性があります。
この39兆円は、第一歩に過ぎません。
「リーマンを超える」っていうフレーズ、一体何だったんだろうね……という規模の財政赤字が必要になる可能性が、今後は非常に高いと思います。そして、それで財政的には何の問題も起こりません。
仮に平時で、国民が今まで通りに働き、総額530兆円の所得を得ていた状態で39兆円を配れば、まあそれなりのインフレになるでしょう。(もちろんハイパーインフレなどはバカのたわごとですが。)
しかし、所得減少の穴埋めとしての39兆円であれば、そう簡単にインフレにはなりません。誰もお金を使わない、お金を大事にする状況なのだから、当然です。
いつか、ようやく「戦後」になった時、我々は財務省・政治家・経済音痴の専門家どもに対して、
「サラリーマン世帯なら破産してる」
んじゃなかったっけ?
と指摘し、退場を求めねばなりません。