ふゆから、くるる。 ネタバレ感想 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 ちょっと書き殴りたかっただけなので特に作品の詳細とかは書かない。

 やり終えてからずっと不完全燃焼感があって、なんでなんだろうとずっと思って、作品のOPをYoutubeでくり返し聞いてたりしたんだけど。

 結局、俺は物語にある人物の人生が始まってから終わるまでを描いてほしくって、ちゃんとその人物の人生の意味をきちっと描き切って欲しいのだ。

 中途半端な描き方をするくらいなら、いっそ主人公を殺して欲しい。それくらいちゃんと物語をちゃんと終わらせて欲しいって気持ちがあって、ふゆからくるるはなんというか輪廻的な要素もある作品だから、世代を越えて関係が繋がっていくという展開自体は仕方がないというか、そこがメッセージ性なんだろうけれど、主人公の空丘夕陽についてはもっとちゃんとなんとかしてほしかった気持ちがある。

 次世代に繋がっていくとしても、主人公が親友を失った事実については変わらないし、それをどう乗り越えていくかも充分に描かれていない気がする。だからこう、これまでの四季シリーズみたいに、主人公の人生と世界の謎がばーん! ってダイレクトに繋がっていっている気がしなくって、そこがとても寂しいのだ。

 群像劇として描かれていて、見どころは色々あると思うんだけれど、やっぱり自分としては主人公のその後をもうちょっと見たかったかな、という気持ちが強い。

 缶詰少女も、あまり評価がよくないレビューとかも見てきたけれど、個人的には大好きで、それはやっぱり最後に主人公の持っている衝動がどこに繋がっていくかがちゃんと示されたのが好きだったのもあったと思う。そこから四季シリーズや渡辺遼一の同人作品や、はてはウェブノベルにまで手を出していったのだし。

 

 ふゆから、くるる。に自分が完全に面白いという感想を抱けないのは、主人公の描かれ方が充分ではないのではないか、という上に書いたこと以外に、やはり、人生観として次に繋いでいく、子孫に繋いでいくという価値観に自分自身が共感できないからかもしれない。

 そう。結構人生観的なことも考えてしまう作品ではあるんだけれども、その根底にある将来に繋ぐために子孫を作っていく、みたいなテーマに俺はやはり感情移入できない。まあこう書くと情けない気持ちもあるけれど、そういう生物として当然! みたいな価値観を手放して、自分一人の人生の中で最大限物語を楽しむことに全力で生きようと決めたのだ。

 最後にプレイヤーとの交信シーンみたいなのもあるけれど、やっぱり基本的にはその子の幸せを信じて、未来に送り出すというかそういうイメージがあると思う。

 日本において、どれだけの人が自分の子供の幸福を願い、送り出すような気持ちで子供を育てようと思うんだろうか?

 そこまで考えずに子供を産んでしまったり、未来は暗いから無責任に子供を産むのはどうなんだろう? みたいな考え方があるような気がする。

 きっと自分たちは幸せになることを望まれて生まれてきて、だから自分たちも誰かが幸せになることを祈る、そんなことを子供が考えられるだろうか?

 

 いや、もちろん前提として、これはSF作品であって、現実とは異なる世界観を軸とした創作なのはわかっているのだけれど……。

 それでも人生観について考えさせられる作品にしては、現代の価値観とはちょっと違うところに基準を置いているような気がした。

 

 だけど、ここまで書いて思ったけれど、その基準のズレみたいなのはもちろん悪いことではなくて、人と違うからこそきっと物語る意味があるんだろうし、ここまで考えてしまったり、言いたいことが出てくるのって、ふゆから、くるる。みたいな作品じゃないとなかなか起きないと思う。

 だから単純に面白い! だけで終わらない作品をこれからも渡辺ファッキン遼一先生には作ってほしいね。

 願わくば次は自分の嗜好にも合っているといいんだけど……。

 主人公と犯人が対峙するところとか、好き同士ではない関係の中の行為とか、場面場面で印象に残るシーンは沢山あったので、次回作を楽しみに待ち続けたいと思う。

 

 万人が満足するものじゃないかもしれないけれど、作品として充分な完成形じゃないかもしれないけど、それでも渡辺先生にしか描けない味みたいなものがあって、だから俺はこの人の作品をプレイし続けたいんだと思う。

 

 ちなみにこれは余談だけど、冒頭から6シーン分エロシーンがバンバンバン! って続くのはちょっとかったるかったというのはありましたね……そこからの事件編も尺が長いというわけではないので、もう少しこういう謎がある作品特有の「こっからどうなっちゃうの!?」みたいな気持ちを引っ張りたかった気はする。そういう意味では缶詰少女とかはるまでくるる、なつくもゆるる辺りの方が物語の牽引力は感じたかも。

 この作品はエロシーンの尺が長いことも含めて、本質はかなり穏やかな祈りに似た作品じゃないかな、と思う。

 それだけに主人公の憤りが異質で光っている部分になってるし、OPも恐らくそこら辺を絡めた表現なんじゃないかな。

 OPは格好いいので色々な人に見てみてほしい(まあここから見に行く人もいないでしょうけど)。