映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『市子』ネタバレあり 船の甲板の上で大事な写真見ないで欲しい

2024-04-21 | ネタバレあり

市子(2023年製作の映画)上映日:2023年12月08日製作国:日本上映時間:125分
監督 戸田彬弘
脚本 上村奈帆 戸田彬弘
原作 戸田彬弘 
出演者 杉咲花 若葉竜也 森永悠希 渡辺大知 宇野祥平 中村ゆり
脚本 上村奈帆 戸田彬弘
原作 戸田彬弘 
出演者 杉咲花 若葉竜也 森永悠希 渡辺大知 宇野祥平 中村ゆり


船の甲板の上で大事な写真見ないで欲しい。
風で飛んじゃうかもしれないし
風で飛んだら海に落ちて100パー取り返せないじゃん。

大事な写真甲板の上で見ないで欲しい。

**


無戸籍児の問題については、ドキュメンタリー映画『愛と法』で知ってはいたけど、
やっぱ問題の源泉は性差別、男女の不均衡だなと改めて思った。

〝法務省によると、
無戸籍となる原因の多くが、
前夫との婚姻中又は離婚後300日以内に子どもを出産した場合、
民法第772条の規定により、
戸籍上、前夫の子どもと推定されることを避けたり、
前夫に子どもの存在を知られたくないなどの理由から、
出生届を提出されないことが原因とされています。〟

とのこと。


その離婚後300日問題に関わる改正民法は、この4月施行。


**


複数の証言によって市子という人物の輪郭を描いていく、
という仕組みなので複数の証言者が出てくる。

それを演じる俳優さんたちが
「この数分で私の力全部見せたるねんっ!」と気合いが入った演技を全員が見せてくる。

その中で杉咲花の浮遊感が際立つ。

ラスト、20代の男女2人が乗った自動車の海への転落事故のニュースを宇野祥平が知るシーンも素晴らしかった。
動作としてはほぼ無反応。
「あ、市子がやったんだ…」って思ったかも知れないと思わせるシーン。

それまでがとても説明過多だったのでより際立って良いシーンでした。

 映画『異人たち』ネタバレあり 大絶賛の中、申し訳ないんですが

2024-04-20 | ネタバレあり

異人たち(2023年製作の映画)All of Us Strangers 上映日:2024年04月19日 製作国:イギリス アメリカ 上映時間:105分
監督 アンドリュー・ヘイ
脚本 アンドリュー・ヘイ
原作 山田太一
出演者 アンドリュー・スコットポール・メスカル




「LGBTQ物には食傷気味です…」
みたいな言葉を最近見まして、

は?
LGBTQプラスは
大衆を満足させるために提供されるコンテンツではなくて
単にやっと可視化されて
語られてこなかったことが
やっと語られ始めただけで
今後もこれくらいの量で語られるんだけど!?

じゃあ
「男女物には食傷気味です…」って声が出たらどうぞ男女物を縮小させてくださいな。

と腹が立ちました。


**

で、この映画。

大絶賛の中、、申し訳ないんですが、、、、、、、、、
ちょっと乗れなかった。。。。

まず、2部屋しか住んでない高層マンションで、もう設定わかっちゃうよね??
外に全然人がいないし。。
なので終盤でもとくにびっくりもしなかったし、、
「うん、だから、、死んでるってことだよね」ってなっただけ。。

**

テーマは好きですよ。

両親の演技も素晴らしくて
ほんとに幽霊を連れてくることに成功したのかと思いましたよ。
孤独の被害者のつもりでいた主人公が
実は「孤独にさせる」という加害者でもあった、というひっくり返しも良かったです。

ただ、その素晴らしいテーマを伝えるには
ちょっと演出がくどすぎませんか。
くさすぎませんか。

でもねぇ僕は同監督の『ウィークエンド』もそんなに好きではないので、、
これは好みなのかも。。

結構セリフで喋っちゃうし
映像もくどくて。。

もうちょっとドライさ、クールさというか、登場人物に対する突き放し感が欲しかったかな。

〝存在しない映画〟映画『えぇ、彼女は斧を持っていました』(2020)

2024-04-11 | 映画イラスト
※この映画は実在しません。〝ない映画〟です。

****


映画『えぇ、彼女は斧を持っていました』
(2020年製作の映画) Carrie Nation 上映日:2020年11月25日 製作国:アメリカ 上映時間:118分
あらすじ
禁酒法時代のアメリカの禁酒主義活動家の実在の女性、キャリー・ネイションの生涯を描く。
元夫をアルコール依存症で亡くしたことを契機に禁酒主義活動を始めた彼女は、バーに乗り込んでは斧で店を破壊して回った。
この破壊活動により逮捕もされたが、アルコール依存症患者の妻や子供を保護する施設を設立したり、女性の体を縛るコルセットの着用に反対するなど、女性や弱い立場の人々を救う活動もしており、彼女の名声は高まっていく。
監督 ダグラス・ムーア
出演者 ミシェル・オーモンド アルム・ランドルフ ガス・C・ポッツ クリス・ライト




『三日前の犬』でラ・スペツィア映画祭のグランプリを獲得したダグラス・ムーア監督の新作!



キャリーの生涯を時系列をバラバラに描いているのでちょっと難しいところもあるんですが…、猛女という印象のキャリーの多面的な人間性が伝わってとにかく最初から最後まで面白かった!


なんと言っても主演のミシェル・オーモンドの演技が素晴らしくて、


酒瓶を割るシーンもちょっと楽しそうというか、活動のためだけじゃなくちょっと自分のストレス発散もあるんじゃない?と思わせるような、複雑で人間的な表情でした。

元夫役のサスキア・ベルカドのアル中演技も凄まじかった…。『北極VS南極 どっちも寒い』で潜水艦の艦長を演じてた人!全然違うので最後まで気づきませんでした…。





キャリー・ネイションは実在の人物であり、エピソードも事実ですが、この映画はありません。。
彼女を描いた1分間のサイレント短編映画『Kansas Saloon Smashers』(1901)や ブロードウェイミュージカル『Carry Nation』(1932)はありますが 長編映画は存在しません。
共感しづらい破壊行動と現在に通じるフェミニズムの両面を描くと とても豊かで面白い映画になると思うのですが。

映画『雪山の絆』「多くの報道が無思慮で強引な方法で我々の食事に焦点を合わせた」

2024-03-20 | 映画感想

雪山の絆 上映日:2023年12月22日  製作国:ウルグアイ スペイン チリ 
監督 フアン・アントニオ・バヨナ(J・A・バヨナ)
脚本 フアン・アントニオ・バヨナ(J・A・バヨナ) ベルナ・ビラプラーナ  ハイメ・マルケス  ニコラス・カサリエゴ
原作 パブロ・ヴィエルチ
出演者 エンゾ・ヴォグリンシク  アグスティン・パルデッラ  マティアス・レカルト  エステバン・ビリャル  ディディエゴ・ベゲッツィ  フェルナンド・コンティヒアニ・ガルシア  エステバン・ククリスカ  フランシスコ・ロメロ  ラファエル・フェダーマン  ヴァレンティノ・アロンソ




映画『生きてこそ』で描かれたウルグアイ空軍機571便遭難事故なんですね。


『生きてこそ』観てないんですが。

**

この事故と
彼・彼女らのサバイバルと
ある決断と
その後その決断を受け入れた人たちの物語ですね。

僕はその決断についてどうのこうのと意見を言う立場にないし
何か言いたい気持ちも正直あまりない。

**

生還したナンド・パラードが自著『アンデスの奇蹟』にこう記している。

事実上、我々の生還は国家のプライドの問題となった。
我々の試練は輝かしい冒険譚として祝われていた。
…私はあの山脈には栄光などなかったと彼らに説明する方法を知らなかった。
それは、全ての醜悪さと、恐怖と、自暴自棄と、とても多くの罪無き人々が死にゆくのを見る不快だった。
また、私は報道が我々が生存するために食べたものに関することを扇動したことに動揺した。
我々の救出後すぐに、カトリック教会の職員たちは、教義に照らしても我々が死者の肉を食べたことは罪に当たらないと発表した。ロベルトが山で論争したように、教会は罪は自分たちが死にゆくことを許容することにあると世界に発表した。
私にとっての素晴らしい満足だった出来事は、死んだ少年の両親の多くが、我々が生き残るために選択した行為を理解し、受け入れたことを世界に公表し支持を表明したという事実だった。
…これらのジェスチャーにもかかわらず、

多くの報道が無思慮で強引な方法で我々の食事に焦点を合わせた。
中には薄気味悪い写真を一面に飾り、恐ろしい見出しで報道した新聞もあった。
(Wikipediaより)


**

彼らの決断を周囲も受け入れ、
彼らが信じている宗教にも許され、
法的にも無罪、もしくは訴えられもしていないのであれば
この物語は完結しているもので
やはりこの出来事について僕は何かを語る気が起きない。

ただ、
生存者の方々が割と映像化や書籍化に協力的な感じがするので
勝手な想像ですが、
なかったことにしたいとか忘れて欲しいと言う方向ではなく
むしろ何度でも語られて伝えていきたいと思っているのではないかと思うので

こうして新たに映画化され、
賞レースを賑わし、多くの観客に見られるのは何かの効力があるのでしょう。

**

てことで、
映画としてどうかというと、確かに素晴らしく見応えがあった。


「…もう大丈夫です…」っていうくらいに色んなことが起きてその都度キツイので。。

ラストは知ってるので安心して観れるってのはありますし。

過剰な演出がなかったのも良かったです。
尾根からの景色を見て大絶望するシーンがあんですが、劇伴ナシ、セリフもナシ。
山々を観ただけで観客はわかる。大絶望。
観客を信じてくれてるのも嬉しい。

無名の若手俳優たちが本気の演技アンサンブルも素晴らしかったです。

ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』

2024-03-19 | 映画感想

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)
監督 豊島圭介
ナレーション 東出昌大
出演者 三島由紀夫 芥正彦 木村修 橋爪大三郎 篠原裕 宮澤章友 原昭弘 椎根和 清水寛 小川邦雄


「もう一度、国の運命と自分の運命がリンクしているという、ある種の陶酔感、高揚感みたいなものをもう一回経験したいっていう欠落感みたいなものが、あの世代(1930年代生まれ)にはある」
by内田樹

**

全共闘という言葉はよく聞くし
なんとなくのイメージもあるけどよく知らない。
僕は78年生まれ。

全共闘って小学生の時に『ぼくらの七日間戦争』(小説版)を読んで、ちょっとノスタルジックに語られてるので初めて触れた程度。

あとは浅間山荘とかにつながって
映画などで見知って、あ〜怖い…という印象。

**

『独立少年合唱団』に全共闘のことが出てきましてイマイチ掴めなかったので
全共闘について知れる映画はないかと検索したら
これが出てきましたので観ました。

『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』。

**

討論自体の熱情もすごいんですけど
文字量!
語彙力!

そして言葉がひとつひとつイキイキとして語られていることに驚きました。

で、ちゃんと討論をしてる。
相手の話を聞いている。
そしてちゃんと答えている!

↑こんな当たり前のことを、、、
いまの日本でどこで行われてるんだろう。。

今は
SNSでの短い言葉での叩き合いとか
冷笑とか
論破とか、
到底人と人が有機的に繋がる気のないことばかり横行してる。。

真逆!!

**

この映画に出てくる人たちが言ってることに共感はできないけど
話を聞けばどういう思考回路なのかはわかってくる。

全否定したい極端な思想もあるけど
そこに至るまでの、ある種の人間的な気持ちをつかめると、
単なる敵、もしくはヤバいヤツだと思っていた人が対話できる相手に感じられるかもしれない。

**

てか、三島由紀夫が◯◯したのは45歳だって!
僕いま45歳。