皆様、こんばんは。
長らくお休みしてごめんなさい。
ホント忙しくって、アメーバにインさえ出来ていませんでしたよ。
なんかこの3連休も言葉だけの連休で。
在宅ワークに慣れてくると、家に居てもお仕事をするのに抵抗が無くなって、
いつもお仕事してるようで。
4月からお仕事が倍くらいに増えるので、その引継ぎでなんか・・・。
良くないですねー。
さて、続きです。
『泣いちゃダメ。泣いたらアイトが本当に行っちゃう』
泣いてしまったら、本当にアイトが戻って来ないような気がして、一生懸命涙を我慢していたはずなのに、涙だけがボロボロと流れて行きました。
そうして、しばらくすると、我慢できなくなり、大声で泣き始めてしまいました。
↓
夜まで泣いていて、父が帰って来ました。
父は私が何か言う前に私の後ろに立つと、両手で私の両肩に手を当てて、小さく「なっちゃん、泣くなよ。」とだけ言って、お風呂に入りに行きました。
暫くたって、お風呂上りの父が居間に戻ってきました。
「父さん、あ、アイトが。アイトが。」
私がそう言うと、父は黙って私の頭を撫でてくれました。
「そうか。そうか。そうじゃろうのう。」
父はそんな事をつぶやきました。
「私、どうしたらいいの?」
父は何が起きたのかわかっている様子でした。
「泣かんでもええ。明日は日曜じゃから、一緒に山の畑に行こうか。」
父はそう言ってくれました。
父は何も説明してくれませんでしたが、何もかも分かっているようでした。
「うん。明日ね。」
私はちょっと安心して、眠りに就きました。
そして翌朝。
朝ご飯を食べると、すぐに父と二人で山の畑に向かいました。
秋の山の畑は結構寒く、植えてある作物もほとんど収穫が終わってガランとしていました。
畑の周囲の木々もすっかり紅葉して、朝の空気は秋から冬に変わる時特有の香りがしていました。
山の畑に着くと、私はすぐにブドウ棚の下に行きました。
アイトのお花が生えていた場所です。
お花は一度家に持ち帰りましたが、また同じ場所に植え直したので、ぶどう棚の下にあるはずです。
アイトのお花は当然ですが、もうお花は付いていませんでした。小さなそのお花は、葉っぱも半分以上は落ちてしまい、残った葉も茶色くなって、もうすぐ土に還る時期が近いことを物語っていました。
私はそれを見て、アイトはもう帰ってこない事を悟りました。
アイトはきっとお花の精。お花が終わると、どこかに行ってしまうのでしょう。
でも、あの消え方を思い出すと、とてもどこかに飛んで行ったようには思えませんでした。
本当に消えてしまったような。
私はほとんど枯れたアイトのお花の前で、うずくまって泣きました。
アイトとの思い出がまた蘇って来て、悲しくて仕方なかったのです。
暫く泣いていると、父がやってきました。
「父さん、アイトの花がこんなになっちゃった。」
泣きながら私が言うと、父もしゃがみこんで、枯れかけたお花に顔を近づけて見ていました
「これか。なっちゃん、よく見てみいや。」
「え?」
私は父の顔と枯れかけたアイトのお花を見比べながら、意味が分からず不思議に思いました。よく見ても何も変わりません。
「その草があの子の花じゃったんじゃろう。もっとよう見てみいや。」
私は目を凝らしてみましたが、やはり意味が分かりません。だって目の前にあるアイトのお花は、もう枯れて死んじゃう寸前でしたから。
「これじゃ。」
父は指でアイトのお花の、お花がついていた辺りを指さしました。
お花の付いていたところの先には、小さな小さな鞘のようなものが付いていました。
「これを取ってみぃ。」
「え?取ったらお花が痛いって言うかも。」
「大丈夫じゃ。」
父がニッコリしながら言うので、その小さな鞘を指で触れてみました。
すると、ぱちんと鞘は割れて、中から本当に小さな粒がいくつか出て来ました。
「え?たね?これって種なの?」
「そうじゃ。」
「アイトの種?」
「多分のぅ。」
それはホント、やっと目に見えるくらいの小さな黒い粒でした。
言われて初めて気が付きましたが、アイトのお花が付けた種だったのです。
「それを持って帰ったらどうじゃ?」
父がそう言うので、地面に這いつくばって、地面に落ちた種を一粒づつ拾って、ハンカチに包みました。この小さな小さな種の粒は全部で20粒くらいありました。
「これって、植えたら芽が出るかな?」
「そうじゃのう。出るかもしれんし、出んかもしれん。わしにもわからんが、持って帰りゃぁええじゃろう。」
私は、アイトの種をハンカチに包んだまま家に持ち帰り、マッチ箱の中に紙を敷いて、その中に種を入れて、保管することにしました。
そして何事も無く何ヶ月か経った頃の、ある夜の事です。
続きます。
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