『幕末史』(半藤一利著、新潮文庫)を読了しました。

 

 

作家でジャーナリストの半藤一利が、ペリーの来航から大久保利通の暗殺にいたるまで、幕末から明治維新までの25年の動きを分かりやすい語り口でまとめたものです。講義の書き起こしのようですね。

 

かつて幕末史についてハマったことがあるものの、この数年は少し遠ざかっており、改めて半藤先生の著書で学びなおそうと思った次第です。懐かしい出来事や人物の名前もたくさん出てきて楽しかったですね。

 

巻末に年表が載っていますが、日本の政治体制も生活様式もガラッと変わったにも関わらず、この間たった25年なんですね。平成よりも短い。いかに激動の時代であったかがわかります。

 

さて、本書を読み解いていくうちに実感させられることは、明治維新というものが明確な国家観をもった人々によって成し遂げられた大偉業ではない、ということですね。

 

いわば、薩長を中心とした連中による幕府(政権)打倒のための革命であった、ということでしょう。私もそう感じます。天皇を“玉”として奪い、自分たちを官軍として、旧幕府軍を賊軍呼ばわりして追い詰めていく過程を見ていると、特に強く感じます。

 

半藤先生は賊軍となった長岡藩士を祖に持っていることもあり、生涯忸怩たる思いを持たれていたのでしょう。特に戦前の薩長史観に染まったっ教育を受けているわけですから。でも、半藤先生のお考えの通りでしょうね。

 

本書の締めとして、西南戦争や大久保の暗殺ではなく、山県有朋が陸軍から参謀本部を独立させたという事実で終わらせたところも印象的でした。維新の締めくくりとして、その後の泥沼の太平洋戦争へとつながる出来事をあえて強調されたかったのでしょう。終生、反戦を掲げられた先生らしいですね。

 

ほかに気になったことは、最後の将軍・徳川慶喜を酷評していることです。慶喜については同情すべき点もあると思いますが、もう少し毅然としていれば幕末維新の流れはまた変わっていたのかもしれません。その代わり、江戸の被害を最小限に抑えた勝海舟は絶賛していますね。

 

現在の日本が形作られていくうえで欠かせない、幕末の動きを知る入門書としては最適な書です。

 


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