神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 人種問題(3-032)
読売新聞 1938.11.23-1938.11.25 (昭和13)

(下) わが傘下に投ぜよ 残る安住地、極東のみ

 

侮日抗日の因

中原代議士の北支視察談に、李凰鳴ほか二三の支那青年の談として「日本政府は抗日容共を許さぬといって蒋政権を討伐中だが、日本最高学府の教授らは著書や雑誌で国際法至上主義を唱えて国際連盟を支持し、或いは日本精神をファッショと呼び、人民戦線に近寄り国家主義に反対している、支那が去就に迷うはこの点で、政府が正しいのか次代の日本を作るであろう大学教授が真か。日本は政府の代る毎に対支政策が変るから判断に苦しむ」と支那インテリの日本内情誤判断の一適例を提供しており、また事変勃発の一因たる或るものを示しているのは識者の関心を要する。

 

世界的反猶熱

アメリカ大統領発意のもとに国務長官が二十九ヶ国に呼かけ独欧政治的避雖移民の救済に今春以来乗出しエヴィアン会議の結果ロンドンに国際政治委員会を本年八月創設し三十二ヶ国の在英外交官が委員となり大々的ユダヤ人救済運動に乗出したとは極めて注目すべきである。これは換言すれば既に体勢挽回し難き国際連盟を見捨て新たに結成された反全体主義国際連盟ともいうべき性質を持っている。わが国の新聞も通信もこれに対し何等の関心を持たなかったとはその重要性に鑑み甚だ奇異の感に打たれる。これもユダヤ人問題に未だ認識不足の一例である。かかる国際的組織を作り出した原因は米国ユダヤ人団体が独欧合□即ち中欧のユダヤ人□□オーストリアの消滅に驚愕し、爾来総動員されて自由主義擁護ファッシズム、ユダヤ同胞救済に狂奔し米国大ユダヤ系雑誌新聞が世界のユダヤに呼びかけ怒号しているところに明かなる如く、今や反ユダヤ人運動が独り欧洲のみならず全世界に展開され真にユダヤ民族の大危機が到来しつつあることを物語るものである。それは世界大戦以来最初の全米ユダヤ民族投票が米国ユダヤ委員会に依って決行された事実が雄弁にこれを示している。かかる悲況に追い込まれた原因は米国の一有力反ユダヤ人首領が「ユダヤ人の遣り口が自ら破滅を招く」といえる如く、ユダヤ民族の二千年来堅持し鍛練されて来た排他民族思想即ち""ユダヤ人は神の選民、他族は畜生""という宗教的観念並びに酷烈な民族闘争の結果である。国家なき軍備なき彼等がこの闘争に当って利用したところの思想戦、経済戦、政略戦はユダヤ民族特異のマキァベリズムが強く正道をはずれているので永久的持続性が少なく必然的に思わざる破綻を招来するからである。
たとえば中欧ユダヤ人の永久的根拠地であり楽園であったオーストリアがユダヤ人の予期に反し疾風迅雷的アンシュルスに依りその策源を完全に□滅された如きこの適例である。またユダヤ人の識者間には「足元の明るいうちに欧洲を去れ」と主張した書物を数年前出しているものもある位である。

 

極東に安住地

欧洲においては今や安住の地を求めることが出来ない状態にあることは極東ユダヤ指導者の間にも夙に問題とされ、満洲帝国出現以来安住の地を極東に求めんとし満洲に入り込まんとする運動さえ公然行われわが外交官に直接交渉を受けたものもあった。しかしこの満洲投資及び欧洲ユダヤ人五十万移民案も思う如く進展しないのに焦慮した結果、彼等は五十年計画で既に一応回収を終っていた支那に再投資を決意し、その基礎工作たる幣制改革を断行するに至ったのである。彼等はここにもまた誤判断即ち極東における日本勢力を過少に認識しこれを除外し、支那を経済的に或いは政治的に独占せんとし、日支離間的策動をやった結果が今日の日支事変を招来し、彼等支那再投資の対照が破壊され停止されるの悲運を招いたのである。しかも彼等が助けた支那人に依って大部分は破壊さるるの皮肉なる結果を見たのである。西洋人が日本を認識するの困難なことは勿論であるが、ユダヤ人に至ってはその個人主義求利第一的観念強きが故に一層困難である。殊に日本人の犠性的愛国心等は殆ど国を持たざる彼等には諒解出来ないと見え、只管物的資料に依って日本の実力を判定せんとする傾向が大である。この認識不足の一例は今春帝国議会が四十八億円の軍費を一人の反対者もなく即決したのに仰天したのでも分る。また今年初めサッスーンなどは日本財政は四月までしか戦争をやれぬ等の誤判断を日本人に臆面もなく話しているのでも分る。サッスーン系財閥は最近米国の与論外交界に策動し対日牽制策に出ていると新聞にも伝えられているが、彼の米国の九ヶ国条約を楯に取る反日抗議もこれに一因あると観察している向もある。これに反し他方自ら商業的活動に当っているユダヤ財閥例えば海運業者の中にはその事業の性質上著しく現地新政権等に近寄らんとする傾向を認められていることは事実である。

 

わが対策如何

日本の対策の基調としては既に建国の昔より八紘一宇の大和民族伝統が当然原則として認められなければならず、また事実現地においても新政権に協力せんとするものはその国籍と民族とを問わずこれを傘下に糾合等しく東亜建設に乗出さんと声明されている。しかしながら前述の如く従来ユダヤ民族の日本認識は甚だしく低劣であり、嗤うべき誤判断をなしていた。事実今日の情勢に於て世界の新聞動員や外交威嚇で日本の内部攪乱をたくらむ如きは何等の成功性を持たぬ。事変が進展するに連れ日本の挙国一致、聖戦目的貫徹に邁進する底力を彼等は果して認め得ぬのであろうか。然りとせば米国識者がいえる如く「ユダヤ人の遣り口が自ら破滅を招き」彼ら自ら認めるユダヤ人の楽天地である日満支に自ら世界的に激化している反ユダヤ運動を輸入し、日本が未曾有の犠性をも惜まず、東亜再建に邁進し、出現する民族協和万里同風の桃源境から同じぐ亜細亜種たる彼等が好んで逃避するの愚を演ぜんとするものである。殊に近来支那の復興には当然外国の資本が要るから日本が頭を下げて来るであろうなどという期待は、世界的な彼等の悲況を強いて日本に眼を覆わんとしているのではないか。(完)

 

 

 

宇都宮希洋とは、ペンネームであり、犬塚惟重氏である。

 

彼は、大日本帝国海軍の軍人、ユダヤ問題研究家。最終階級は海軍大佐。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AC%E5%A1%9A%E6%83%9F%E9%87%8D… 

このような軍事研究家がおられながら、80年前の大東亜戦争を回避できなかったことは、痛恨の極みである。。