伍子胥が死んで数年がたった。呉は相変わらず他国の内乱に軍を介入したり、伯
ヒが国政を省みず、知らずのうちに衰退の一途をたどっていた。
ある年呉王夫差は、北方にある黄地という場所で開かれる他の国との会盟のため
主力軍を引き連れて国を留守にした。
覇者とは、この会盟の盟主になることであり、会盟に参加した国から多額の贈物
がもらえるが、かわりに他国に問題があったら助けるという役目があり、強大な
国力がなければ盟主にはなれない。
この覇者になることは呉王夫差の念願であった。
越王勾践はこれを好機と判断し、呉に攻め入った。呉には太子友が少数の軍勢で
守っているだけである。呉はまさか越が攻めてくるとは思っていなかったのだ。
越が小国だと油断していた呉は、手痛く破れ首都を占領され太子友は殺された。
この報せは黄地にいる呉だけでなく、諸侯にも知れ渡ってしまった。この件で呉
は覇者になる為の諸侯の心証を悪くしてしまった。
--自分の国さえ守れない者が、どうして他国を守ることができようか。
会盟で夫差は自国の軍隊の強さを謳ったが、つい先日、越に攻められ首都を落と
されてるため説得力がなく、覇者になることはできなかった。