同業者さんからの相談。
「ATの調子が悪い。ミッションの載せ替えを考えているんだけど、一度フリークで診て貰えないだろうか?」
という事です。
お預かりして乗ってみると、
・Dレンジに入れても、すぐに動き出さない。
・Dレンジでブレーキを離してもクリープが殆ど無い。
・5速~6速辺りでギクシャクしたり抜けたりショックが出たりする。
などがあります。
コンピュータ診断機にて、何かしらエラーが入っていないかを確認してみましたが、・・・何も無し!
でも、明らかにATはおかしい!
この辺りの年式は、コンピュータ不良から来るAT不調もありますし、
もちろん、内部不良による症状も考えられます。
※詳しくはこちらのブログをご覧下さい → マークX AT不良
ATの調子が悪いからと言って、試運転も診断も無く、
いきなりATF圧送交換に取り掛かるのは愚の骨頂です。
既に不調が現れている場合は、しっかりと症状確認を行い、
調べられる所はしっかりと調べ、
不具合個所があるならばそこから着手。
原因がはっきりしなかたり、ATFが原因である可能性が高いなど、
色々調べて万策尽きた後に、お客様にご理解を頂いた上で行うのが「圧送交換」なのです。
※予防整備でのATF圧送交換は、もちろんですがその限りではありません。
まずは一番簡単な所から。
ATFの量は適正かを診ます。
油量確認の為の適正油温に上がった事を確認し、
オーバーフロープラグを開くものの、ATFは全然出て来ません。
著しく油量が減っているのであれば、原因のひとつにもなり得ますので、実際どの位減っているのかを計測します。
専用のツールを使ってATFを少しずつ充填して行きます。
すると、充填量が0.7リットルを超えた所で、オーバーフローして来ました。
ATに様々携わっている方なら分かると思いますが、
1リットル程度の油量の違いで、この様な症状はまず出ません。
余談ですが、
ATF油量をどんどん減らして行くと、どの様な症状が発症し始め、
どの様に悪化して行くのかをテストした事があります。
そんな変な実験やる人なんて、まぁ居ないでしょうから、この時の経験や情報もまた何かの機会にお伝えしますね。
ATFの汚れは?と言いますと、こんな感じです。
少し抜き取ってみました。
汚れも酷く臭いもきついですが、さてさて、本当にこれが原因なのかは分かりません。
まだ、万策尽きた訳ではありません。
別のアプローチで調べて行きます。
エンジンコンピューターの所で、制御ソレノイドの点検を行います。
初期の段階でサーキットテスターの個体差による測定抵抗値の微差は確認済み。
9種類のソレノイドの抵抗値を計測すると、
・ソレノイドS1は、基準値11~15Ωに対して13.2Ω
・ソレノイドS2は、基準値11~15Ωに対して40.5Ω
・ソレノイドS3は、基準値11~15Ωに対して13.1Ω
・ソレノイドS4は、基準値11~15Ωに対して12.4Ω
・ソレノイドSRは、基準値11~15Ωに対して13.1Ω
・ソレノイドSL1は、基準値5.0~5.6Ωに対して6.5Ω
・ソレノイドSL2は、基準値5.0~5.6Ωに対して6.0Ω
・ロックアップソレノイドは基準値5.0~5.6Ωに対して6.0Ω
・ラインプレッシャーソレノイドは基準値5.0~5.6Ωに対して6.0Ω
尚、抵抗値測定基準温度は20℃となっているが、計測時のATF温度は25~30℃なので、基準逸脱が10%以下は問題無しと仮定しても、ソレノイドS2は基準値を大きく逸脱、ソレノイドSL1は基準値を少しだけ逸脱しています。
続いて、波形を見て行きます。
資料を基に、順番に点検。
綺麗な矩形波です。
こちらも問題無し。
つづけてどんどん診て行きます。
そして、ロックアップコントロールソレノイドの波形を診た時、
デューティ比が逆転しています。
おや!? この矩形波の形、以前ECU不良だったマークXでも、同じ様な矩形波が出て、結果不良でした(リンクは今回のブログ書き出し位に貼付)。
他は問題無し。
上記診断結果を踏まえ、
診断を先のステップに進めるなら、次はバルブボディ脱着が必要となる事、
AT不調の原因は、一部のソレノイドバルブ不良によるものである可能性が非常に高い事、
でも、出来れば他のソレノイド一式交換がお勧めである事と、もちろんATFは圧送交換にてしっかり綺麗にするべきである事などを、診断依頼主の業者さんへお伝え。
見積もりも合わせてお伝えすると、
「ミッション本体載せ替えも考えていたので、その金額で直るならぜひ進めて欲しい!」と快諾頂きました。
ATFを排出。
バルブボディも取り外しにかかります。
取り外したバルブボディ。
汚れも随分溜まっています。
あとでミッション側も綺麗にしておこう!
バルブボディを綺麗に掃除した後、ソレノイドを交換して行きます。
全てのソレノイドの抵抗値を測って行きます。
ハーネス抵抗やその他含まれる要因を排除した実抵抗を計測する事で、その部品が本当に悪いのか、断定させていきます。
事前の診断で基準値逸脱していたソレノイドS2。
ビンゴ!!
ちなみに新品は、
基準値11~15Ωの範囲内です。
当然か。
ダメなソレノイド。
ま、目視で分かる訳も無いか・・・
同じ様に、全てのソレノイドで、新・旧の抵抗値を比較して行きます。
交換したソレノイドたち。
元通り組み付けて、ATF圧送交換を行います。
全ての作業が終わった後は、「はい!完成!」では無く、
最初に測定した各ソレノイド基準値を、同じ条件にて再度計測します。
全てのソレノイドが基準値に収まっています。
続いて波形を確認して行きます。
問題ありません!
そして、デューティ比がおかしくなっていたロックアップコントロールソレノイドの波形派と言えば・・・
こちらも正常な矩形波となりました!!
そして試運転!!!
リフトから降ろして、エンジンかけてDレンジに入れただけで、
クリープでグングン!!進みます!!
ちょっとラフにアクセル踏むと、ホイールスピンするし!!
これが2GRのトルクですよ!!!
勿論、変速フィーリングなど、入庫時に発生していた症状は全て消失しています。
これは調子が良い!!
でも・・・、ブレーキ踏んでも止まらない(^^;
止まらないって訳では無いけど、ブレーキの効きが悪い。
原因はこれ。
リヤのブレーキキャリパーです。
スライドピンが錆て固着して動かないので、
本来適度・適正に動かないといけないキャリパーが動かないせいで、
内側のブレーキパッドはピストンに押されてブレーキかけはするけど、外側のブレーキパッドはキャリパー固着の為お仕事出来ず、見ての通りしっかりと隙間を保った状態で沈黙。
パッド残量も、殆ど残っていない内側に比べ、外側はほぼ新品という状態。
それは左側も同じです。
右側程に酷くは無いものの、やはり内側を押し付ける事だけで、リヤブレーキは止めようとしています。
トヨタ車では、クラウン・マジェスタ・マークX
レクサスでは、GS350・GS430・GS450h・GS460・IS250・IS350
などで多発している症状で、
保証延長も出ましたが、それももう、随分と前の話し・・・
リヤキャリパーは左右ともASSY交換を行って下さいとお伝えした上での、納車となりました。
ご用命、ありがとうございました<(_ _)>
<参考データ:車両走行距離 145,000km>
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