温故知新~温新知故?

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現代ロシアの軍事戦略 小泉悠 著 読了 〜国力を失ったロシアが大国復活に向かう、NATOとの対決、なぜプーチンがウクライナに戦争を仕掛けたが少しわかる〜

2023-01-02 11:54:46 | 

小泉氏はTVにもコメンテーターとしてよく出ていて、ロシアに限らず兵器について詳しいので彼の本は読んでみたいと思っていて、たしかこれも朝日新聞の書評で知って予約した。
冷戦後、軍事的にも経済的にも超大国の座から滑り落ちたロシアは、なぜ世界的な大国であり続けられるのか。NATO、旧ソ連諸国、中国、米国を向こうに回し、宇宙、ドローン、サイバー攻撃などの最新の戦略を駆使するロシア。劣勢下の旧超大国は、戦争と平和の隙間を衝くハイブリッドな戦争観を磨き上げて返り咲いた。メディアでも活躍する気鋭の研究者が、ウクライナ、中東での紛争から極東での軍事演習まで、ロシアの「新しい戦争」を読み解き、未来の世界情勢を占う。 「軍事バランスでは劣勢にあるはずのロシアがこのような振る舞いに及び、実際に成果を収めることができたのはなぜなのか。そこには古典的な軍事力の指標では測りきれない要素が働いているのではないか。これが本書における中心的な問いであり、以下ではこれを様々な角度から検証していくことにしたい。」(本文より)

ロシアによるウクライナ侵略が始まってからというもの、小泉悠氏の顔をテレビで見ない日はないと言っても過言ではないだろう。専門的な知識を持たない一般の視聴者を置いてきぼりにしない分かりやすい語り口は、本書においても存分に生かされている。  こうした冷徹な判断のためには、ロシア軍を戦闘機や戦車などの性能だけで見るのではなく、彼らがどういう脅威認識を持ち、それにどう対応しようとしているのかという「軍事戦略」を知ることが重要になる。この点で、本書ほど充実した内容のものはないだろう。
本書の内容は、結論から言うと小泉氏は良くも悪くも軍事オタクなんだなぁ〜ということ。下のアマゾンの読者評にもある通り、今のウクライナ戦争の1年くらい前に、このようなことをまとめていたのはさすがである。
冷戦下で、国力を失ったロシアが大国復活に向かう、NATOとの対決、「ハイブリッド戦争」と「ドローン戦争」と言う言葉や2017年頃からロシアとウクライナの戦争はあったこと、「非接触戦争」(敵の戦闘力ではなく、経済力を標的)「非線形戦争」「永続戦争」などの「非軍事的闘争論」にある、軍事力だけではないものによる戦争が現実のものとなっていることを知ることができて、なぜプーチンが、今、ウクライナを攻撃するのかと言うのが、少しわかった。

5つ星のうち5.0 ウクライナ戦争勃発前の本だが、ロシアの手の内が良く分かり、とても役に立つ本。 2022年9月6日に日本でレビュー済み Amazonで購入 本書の初版発行は、2021年5月。ウクライナ戦争勃発の1年近く前である。とは言え、読んで無駄になる本ではない。 ウクライナ戦争で、泥沼にはまっているような感があるロシア軍だが、幾ら事前に考えておいても誤算が付き物なのが実戦だから、全ての前提が無に帰した訳ではないと言うべきだろう。 本書の内容は余りにも多岐にわたるので要約は避けるが、冷戦体制下で米国やNATOと真正面から対決して来たソ連と、同じ事をするだけの国力を失ったロシアが、必死で考えた小技の集大成についての調査と考察と思っておけば良い。 例えば、冷戦下のソ連は、核兵器の先制使用の放棄を表明し国際世論に訴えかけていたが、通常戦力で米国・NATO軍を緒戦で圧倒する自信があったからだとの事。逆に、通常戦力に不安があった米国、NATO諸国は核兵器の先制不使用を明言しなかったと言う。今や、事情が逆転してしまい、ロシアは核の限定的使用をちらつかせる事によって、バランスをとろうと必死なのだそうだ。 核兵器のような大規模な話でなくても、対テロ戦争のような国家間の直接的な対決でない非正規の戦争、近隣国家との軍事対決、SNSやインターネットを通じた対立国への世論操作など、それぞれの場合について、卑怯と呼ばれようとも、急所を突くことによって形勢を変えるような手立てを緻密に考え、練習し、可能な場合には実行して来た事を著者は明らかにしている。 また軍事的な手段によらない「政権転覆=西欧的イデオロギーの浸透」への警戒も忘れていないとしている。 ウクライナ戦争の実態を見る上で、上記のような本書の分析は非常に有効で、腑に落ちる事頻りだった。 それにしても、各国の文献や資料を気の遠くなるほど集め、整理・分析した大変な労作である。感心する事頻りであった。
小泉氏は、最近よくTVに登場するが、出演番組で、この本に書かれている内容をひけらかすような場面はないように思う、それはこの本の内容は数年前で、現在に彼の主張は、この本を執筆した時点とは変わっていると言うことが本質だろうが、番組や現在の世論に忖度しているのだろうと思われる。現在メディアはロシアは悪、ウクライナのゼレンスキーは善という扱いに偏向している(戦争は戦争している国はどれも悪)中、もっと事実に基づいた発言をしたほうがいいと思う。でも、この本のあとがきにもあるが、声高にそのような発言するのは、本来軍事オタクの彼としては避けたいのだろう。
また、この当時はロシアはドローンなどウクライナより装備的に優位だったようだが、昨今の情勢を見ると、ウクライナが欧米あるいはNATOの支援を得て、ロシアより優位に立っているということだ。ただし、現ジアのメディアは、ロシア悪、ウクライナ善なので、その過去には触れずに、ロシアは劣った戦力で無駄なことばかりしているというような扱いで、それは事実なのだけど、過去、それが逆転していて、数年で戦略的に取り組めば、しのげるという、今の軍事戦略の変化の激しさを痛感した。また、ロシアは、戦争を終わらせるのではなく、「勝たないように戦う」ことが目的という記述も新鮮に読んだ。
一つ不満を挙げると、彼は文章は決して上手くないように感じた、難しいかつ馴染みのない用語が多いのだから無理ないのだけど、述べられていることがスムーズに入って来なくて、何度も何度も同じ文章を読み直すことが多かった。

その他最後に、私が興味を持ったキーワードを上げる。
ー「戦略縦深」、クレピネヴィッチによれば、「より有利な地位を獲得するために、空間を時間、例えば戦争に突入する前に部隊を動員したり、有力な国家を同盟国として引き込む時間に変換するオプション」、つまり、広大な空間を保持しておけば、それだけで敵の侵略に対してより有利な対応をとるための時間的余裕がえられるということ。
彼のロシア対ウクライナの最新版戦争論を読みたいと思った。

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