優平の童話館

優平の童話館

創作童話を発表しています。
できれば、絵本を描きたかった。
絵が描けないので「絵のない絵本」童話を書いています。
今までに書きためた過去の創作童話童話や、新作童話の発表で更新します。

創作童話のブログです。


今まで書き貯めた旧作から、できたての新作まで、


発作的に発表したいと思います。


童話作家を目指しております。


どうぞごゆっくり、優平の童話館をお楽しみください。

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        5

 土曜日の朝。


「今日は一日中、マコトと公園で遊ぶからね」


 ユウヘイは朝ごはんを食べながら、

とうさんとかあさんにいった。


「宿題は?」

 奈良漬けをポリポリ食べながら、かあさん。


「昨日、全部やった」

 いいながらユウヘイは、みそ汁も全部食べ終わり、

玄関の方に走る。


「クルマに気をつけろよ」

 と、とうさん。


「うん!」

 元気に答え、ユウヘイはうちを飛び出した。


 今日のユウヘイは、冒険アイテムが入った

ウエストポーチをぶら下げている。

 おもちゃだけどちゃんと使える懐中電灯と双眼鏡、

メモ帳とボールペン、キャンプで使った

細くて丈夫なロープ、カッターナイフ、虫眼鏡、笛、

前に公園で拾った使いかけの百円ライターが入っている。


 きょうは、何としても黒マントを見つけて、

ボクの覚えていない時間に、いったい何があったのか、

ちゃんと聞きたい。


 だって、あのことばを信じるなら、

魔法をもらっているかも知れないんだから。


 ユウヘイは、ワクワクドキドキしながら、


公園への道を急いだ。


 公園の手前で、

肩からバッグを下げているマコトと合流する。


「どこから調べようか」

と、ユウヘイ。


「よし。まず、すべり台の下から、

猫の足あとをしらべよう」

とマコトが答え、二人ですべり台の方に歩き出した。


             つづく



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            4


「うん。確かにあのネコだったと思う」


「ふーん。黒マントが消えて、

とつぜんあらわれた黒ネコか……」


 そういいながら、マコトはユウヘイに、

目で合図を送った。

ユウヘイも小さくうなずき、ゆっくりマコトと

すべり台の方へ歩きはじめた。


 とつぜん、ふたりは二手に分かれ、

マコトはネコの前に、

ユウヘイは後ろに飛び出す。


「ニャー!」

とひと鳴き、サッとネコは後ろを向いて駆けだし、

ちょうどユウヘイの両手の中に飛びこんだ。


 しり餅をつくユウヘイ。


「ナイスキャッチ!」と、マコト。


「フゥゥゥー!」

ネコはユウヘイの腕を引っかき、

ものすごい速さで公園の水飲み場の方へ走っていった。


「いててっ!」

 ユウヘイは腕をおさえる。


 マコトが心配そうに近づいてきた。

「だいじょうぶ? ちょっとキズ見せて」


 ユウヘイはそっとおさえた手をはなした。


「あれっ!」引っかかれた腕はキズ一つなくて、

なぜか痛みも消えている。


「どうなってるの!」と、ユウヘイ。


「ボクがききたい」と、マコト。


 ふたりは、首をかしげる。


「それに」と、気味悪そうにユウヘイ。

「あのネコ、ボクの手に飛び込んできたとき

、一瞬だけど、すっごく重かったんだ」


 顔を見合わせ、二人は同時につぶやいた。


「魔法?」


 急に背中がゾクゾクと寒くなり、マコトがつぶやく。


「ユウヘイ、ボクこわいよ」


「ボクもこわい」


 公園は、いつのまにか夕暮れ時も終わろうとしていた。


 遊んでいた子供たちも、

おかあさんに連れられたヨチヨチ歩きの赤ちゃんたちも

みんないなくなり、

ユウヘイとマコトの二人きりになってしまった。


「きょうは、このくらいにしておこう」


「よし、この辺でゆるしてやろう!」

 大きな声でそういって、二人はゆっくりと出口の方へ歩き始めた。


「ニャ~」と、背中の方からネコの鳴き声。


「うわぁー!」


二人は全速力で駆けだし、

そのままうちに帰り着くまで走り続けた。


           つづく


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「で、ユウヘイはこのブランコにのって、

おかあさんを待ってたんだね?」


「うん。空は真っ赤で、夕陽がきれいだった」


 学校が終わると急いで公園まで走り、

ユウヘイとマコトは、

もう長いあいだブランコの上で、

黒マントについて話しあっていた。


「気がつくと、ブランコを降りていて、

夕陽に向かって歩く黒マントを見ていた。

そのあと、おかあさんの声にふり向いて、

目を戻すと黒マントは消えていた。そうだね?」


「うん」


「ということは、ブランコを降りて、

出入口の近くに立つまでの記憶を無くしている、

ということになるな」


「あっ」


 思いもしなかったことをマコトから教えられ、

ユウヘイはブランコから立ち上がる。


「そうだ! ぜんぜんおぼえてない!」


 マコトも立ち上がり、

公園の出入口の方に二人で歩きだす。


「たとえば、ブランコに乗っているときと、

黒マントのうしろ姿を見ているときの

夕陽の高さの違いとか、

そんなことは思い出せない?」


マコトは腕組みをして、ユウヘイの方を見た。


「うーん。ブランコから見たときはまん丸で、

立っているときは、下の方が半分ぐらい

沈んでいたような気がする」


 答えながらユウヘイは、

やっぱりマコトは天才だと、あらためて思う。


「その差が、ユウヘイが記憶を無くしていた時間だよ。

後で確かめてみよう。それから、黒マントが消えたとき、

その辺の風景に変わりはなかった?」


「そうだなぁ。砂あそびの赤いバケツが一個あったな。

それから、鉄棒に赤ちゃん用の帽子がかけてあった。

そうだ。黒マントが消えたあと、

ネコが一匹歩いていたような気がする」


「それって、もしかして黒ネコ?」


「えーっ! そんなことまでわかるの?」

ユウヘイは、ものすごくおどろいた。

ここまで天才だとは、知らなかった。


「ほら、あそこ。

歩いてるんだけど」


 マコトが指さす方を見ると、

すべり台のそばを黒ネコが歩いている。


 気のせいだろうか。ユウヘイを見ると、

ネコはあわてて目をそらしたように見えた。



             つづく



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長編 夕暮れ魔法使い

 

                  

 

「ユウヘイくんに魔法をあげよう」

 

とつぜん、そんな声がきこえ、

ユウヘイはあたりを見回す。


だれもいない。

 

ここは、夕暮れどきの公園。


さっきまで

一緒に遊んでいた仲間たちは、

みんなうちに帰ったし、

かあさんもまだ仕事から戻らない。


 

「だれ?」と、ユウヘイ。
 

なんとなく

一人で家に帰るのもいやで、

 

ユウヘイは

公園のブランコにゆられながら、

かあさんを待っていた。


 

「怪しいものじゃない。

通りすがりの魔法使いだ」


そういわれても、

魔法使いというだけで、

 

じゅうぶん怪しい。

 

「えー、ボクんちはおカネがないので、

誘拐してもムダです。

 

うちはすぐそこだし、

もうすぐかあさんが、迎えに来ます」


ユウヘイはブランコをおりて、

声とは反対方向の

公園の出入り口の方に、

ゆっくり歩きはじめた。

 

「ホーホッホッホ。

ワシは人さらいじゃない。

魔法使いだ。ま・ほ・う・つ・か・い」


へんな笑い声で、

魔法使いはいう。

 

「いまキミは淋しがっている。

 

友だちが帰って、淋しい。

かあさんが来なくて、淋しい。

公園にひとりぼっちで、淋しい。

 

ちがうか?」
 

当たり。

 

ユウヘイは、淋しかった。
 

出口の近くで、

声のする方へと思わずふり返る。


「わかります?」

 

「ホーホッホッホ。わかる。

で、魔法だ。

ユウヘイくんには、

ワシの姿が見えまい?」


 

「見えません。消えてるんですか?」

 

「ちがう。消えることもできるがネ。

すべり台の上にネコが見えるだろう?

それがワシだ」


なるほど、すべり台には、

クロネコが座っていて、

ユウヘイを見つめている。


 

「えっ! ホントにネコなの! 

ホントにヘンシンできるの!」


ユウヘイはおどろいた。
信じてしまった。


ボクも魔法がほしいと思った。

 

「魔法使いさん、魔法くれるの?」

 

「もちろん。あげる。

 

ただし」
 

 やっぱり。

 

「あー、たとえば、ボクは、

自分のタマシイとかは、

大事にしたいんですが……」

 

「そんなものは、いらんよ。

ワシは、悪魔じゃない。

魔法使いだ。ま・ほ・う・つ・か・い。

 

ユウヘイくん、9歳だったね」

 

「はい。あ。どうしてわかるの?」

 

「魔法使いに、わからんことはない。

 

ワシは

10歳になる前の子どもたちみんなに

魔法をあげることにしている。

 

逃げる子もいるし、

いらないという子もいる。

 

いるという子には、

ワシは気前よくあげるんだ」

 

「ただし?」

 

「うん。ただし。

 

魔法をもらった瞬間、

ワシに会ったことも、

魔法が使えることも、

全部忘れてしまう」
 

すべり台のネコは、

モヤモヤとわき出したケムリにつつまれ、

人間の姿に変わっていった。


 細長い顔。大きな鼻。黒い帽子、

黒い服、黒いマントを着た、

いかにも怪しげな魔法使いだ。

 

「それじゃ、魔法が使えること、

わからないじゃない!」

 

と、大声でユウヘイ。

 

「想い出す方法が、一つだけある」


 すべり台から駆け下り、

魔法使いは、ユウヘイの顔を指さして、

その指をグルグル回しはじめた。

 

「どうやるの?」

 

「こんな夕焼けの日に、足の間から、

さかさまの夕陽を見れば思い出す」

 

「魔法は、どうやって使うの?」

 

「魔法のジュモンをとなえる」

 

「どんなジュモン?」

 

魔法使いの、

指を回す早さがドンドンはやくなり、

とつぜん、ピタリと止まる。

 

「ジュモンはこうだ。

ホッホッホー、ウホホホホー!

 

これでキミも魔法使いだ」

 次の瞬間、ユウヘイは、

魔法が使えることも、

魔法のジュモンも、

思い出す方法も、

 

目の前のヘンなおじさんが

魔法使いだということさえ、

きれいさっぱり忘れてしまった。

 

魔法をもらった、

他のみんなと同じように。

 

で、ユウヘイは、

目の前にとつぜんあらわれ、

 

『これでキミも魔法使いだ』

 

ということばを残して、

沈みかけの夕陽の方に歩いていく、

黒マントのおじさんを、

不思議そうに見送っている。

 

 ボクが魔法使いって、

どういう意味だろうと考えながら。

 

「ユウヘイ」


背中の方から、やさしい声。

かあさんだ。

 

「あっ、かあさん。

あの黒いマントのおじさん。

 

あれ?」


ユウヘイが、

かあさんの方を向いている間に、

黒マントのおじさんは消えていた。

 

「さ、帰りましょう」

 

「うーん。ねえ、かあさん。もちろん、

いま黒いマントのおじさんとか、

見てないよね?」

 

「えっ? 黒いマント?」

 

「ううん。なんでもない」

 

ユウヘイは、かあさんに、

学校のことや友だちのことを話しながら、

ゆっくり歩く。

 

こんなふうに、夕方の帰り道を、

かあさんと一緒に歩くのが、

ユウヘイは

少しはずかしいけど大好きだった。

 

もちろん、

かあさんを心配させるといけないから、

『これでキミも魔法使いだ』のことばは、

秘密にしておく。


あした学校で、

親友のマコトにそうだんするつもりだ。
 

なんだか、ワクワクする。

 

きっと、

すごい冒険が待っているような気がする。

 

明日が来るのが、

とても待ちどおしかった。

 

             

 

翌朝学校で、さっそくユウヘイは、

親友で天才のマコトに、

黒マントのことを話した。

「うーん。そいつは、

カルト教団の、

新手の勧誘活動かもしない」

と、マコト。

 

マコトのことばは、

むずかしくてユウヘイにはわからない。

 

「かるときょうだんってなんだ? 

あらてってなんだ?

かんゆうってなんだ?」

 

マコトは、すこし眉をよせ、

ユウヘイに説明する。

 

「メチャクチャする宗教の人が、

新人を集める、新しい方法」

 

「なるほど」

 

最初からそういえばいいのに

とユウヘイは思うが、

口には出さない。

 

「うーん。別に、

何も誘われなかったけど」

 

「きっと、

ユウヘイの方に歩いてくる

かあさんを見つけて、

わずに逃げ出したんだ」

 

やっぱりマコトは、するどい。

 

だんだんユウヘイも

そんながしてきた。

 

でも、「これで君も魔法使いだ」

ということばが、

どうしても気になる。

 

「魔法って、本当にあるのかな?」

 

「さあ、わからないけど。

たとえば超能力は、

実際に科学的な研究の対象になっているよ。

 

だけど、そのおじさんが、

ユウヘイを魔法使いにして、

何の意味がある?」

 

あ。

 

 

意味ない。

 

でも、

あのことばはたしかに聞こえたし、

きっとなにか、

ボクが気づかない意味があるはずだ。

 

考えれば考えるほど、

わからなくなる。

 

「よし。じゃあ、明日、

朝から公園に調査に行こう、

土曜日だし。公園に朝十時集合。いいね?」

と、マコト。

 

「うん。でも、

今日の帰りにちょっと下調べってのは?」

 

「オーケー」やっぱり親友だ。

 

先生が教室に入ってきた。

 

授業が始まっても、

ユウヘイの頭の中は、

黒マントのことでいっぱいだった。


                     つづく


 

 

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ヒカリのシャボン玉

 いま、ボクは生まれた。

「おかあさん」
「おかあさん」
「おかあさん」

 ストローでひと息ふきこむたびに、
ヒカリはおかあさんを思い、
 ヒカリの思いが、
ボクのからだをどんどんふくらませる。

 ヒカリが、いままでふくらませた中でも、
 いちばん大きなシャボン玉。
 それがボクだ。

 ヒカリの思いをいっぱいつめて、
ボクは空へと舞い上がる。

「このままわれないで、
おかあさんのところまでとどけ」
 ヒカリの願いに送られて、
ぼくはフンワリ舞い上がる。

 おうちのバルコニーから
ボクを見上げるヒカリが、
どんどん小さくなる。

 ボールぐらいに小さくなって、
ビー玉ぐらいに小さくなって、
砂つぶぐらいに小さくなって、
ついにヒカリが、見えなくなった。

 ようし、空をただよいながら、
ボクはぜったい、
おかあさんのところまで飛んでいくんだ。
ヒカリのために。

 われないように気をつけて、
フワフワ、フワフワ、ボクはとぶ。

 青い空と、まぶしいお太陽の下、
キラキラ、キラキラ、かがやきながら。

 道路をふたつ、公園をみっつ、
ビルをたくさん、ゆっくりこえて、
ボクは飛ぶ。

 とおくの空から、
羽ばたきながらハトが近づいて、
 ボクをつつこうとするけど、ボクは平気さ。
 ほら、フワリ、フワリ。
 ハトのハネがおこすかぜで、
ボクはハトから逃げてしまう。

 フワフワ、だんだんくもり空。
 川をみっつ、森をふたつ、山をひとつ、
ゆっくりこえて、ボクは飛ぶ。

 いつのまにか、太陽が雨雲にかくれ、空気もしめって、雨のけはい。

 われないように、ボクは大きな木の下までおりて、そのまま浮かんで、あまやどり。

 こんなところで、われるわけにはいかないボクは、じっと浮かんであまやどり。

 夕ぐれどきに雨はあがって、またまたボクは、舞い上がる。

 夕やけ空と夕日の色が、
ボクをまっ赤にそめていく。

 ボクは、小さなもうひとつの夕日。

 空の、すごくすごく高いところから、
小さな夕日のボクをめざして、
 トンビがビューンととんできた。

 するどい爪で、ボクをつかもうとするけど、ボクは平気さ。
 ほら、フワリ、フワリ。

 トンビのハネがおこすかぜで、ボクはトンビからにげてしまう。

 そうしてフワフワ、夜の空。

 ミカヅキお月さまと、
きれいなキラキラお星さまが、
そっとボクを見おろして、
ボクの旅を、笑顔でおうえんしてくれる。

「もうすぐだから、がんばれ」
「がんばれ、シャボン玉くん」って。

 朝がきたら、きっと、ボクの旅はおわる。
 ぜったい、ぜったい、おかあさんに会って、ヒカリの思いをつたえるんだ。

 お月さま、お星さま、そして夜の風さん、ボクもすこしねむっていい? 

 われないように見ていてくれる?

 太陽が、
あの山のむこうからかおを出すまで。

 フワフワ、フワフワ、朝の空。
 まぶしくて目をあけると、ここはもう、
おかあさんのふるさとだった。

 きっと、夜の風さんが、夜のあいだにボクをはこんでくれたんだね。

 おかあさんのいる病院が、とおくに見える。
 ヒカリの、おかあさんに会える。
 
 ボクはゆっくり空から下りて、おかあさんの病室のそとに浮かんで、
 中にいるおかあさんを見た。
 
 窓のそとのボクを見つけて、
おかあさんがおどろいた顔で、窓を開けた。

 窓から、中に入り、ボクはフワフワ浮かんだまま、じっとおかあさんを見た。

 ヒカリの思いの中にあった顔と、おなじ顔がそこにあった。

 おかあさんも大きく目をみひらいてボクを見ている。
 ボクに、ヒカリがうつっているかのように。

 じゃあ、ヒカリ、おかあさんに伝えるよ。
 ヒカリの思いを、伝えるよ。

 エイッと力を入れると、
パチッとボクははじけ、
小さな小さな、千つぶのしずくになった。

「おかあさん、さみしいから、
はやく帰ってきてね」

 はじけたボクの中から、
ヒカリの思いが声になって、
おかあさんにとどいた。

 しずくになって、床におちる瞬間、
ボクはたしかに見たよ。

 おかあさんが、ほほえみながら、
何度も何度もうなずくのを。

 よかったね、ヒカリ。

                         おしまい

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