長編 夕暮れ魔法使い 第3章 | 優平の童話館

優平の童話館

創作童話を発表しています。
できれば、絵本を描きたかった。
絵が描けないので「絵のない絵本」童話を書いています。
今までに書きためた過去の創作童話童話や、新作童話の発表で更新します。


         


「で、ユウヘイはこのブランコにのって、

おかあさんを待ってたんだね?」


「うん。空は真っ赤で、夕陽がきれいだった」


 学校が終わると急いで公園まで走り、

ユウヘイとマコトは、

もう長いあいだブランコの上で、

黒マントについて話しあっていた。


「気がつくと、ブランコを降りていて、

夕陽に向かって歩く黒マントを見ていた。

そのあと、おかあさんの声にふり向いて、

目を戻すと黒マントは消えていた。そうだね?」


「うん」


「ということは、ブランコを降りて、

出入口の近くに立つまでの記憶を無くしている、

ということになるな」


「あっ」


 思いもしなかったことをマコトから教えられ、

ユウヘイはブランコから立ち上がる。


「そうだ! ぜんぜんおぼえてない!」


 マコトも立ち上がり、

公園の出入口の方に二人で歩きだす。


「たとえば、ブランコに乗っているときと、

黒マントのうしろ姿を見ているときの

夕陽の高さの違いとか、

そんなことは思い出せない?」


マコトは腕組みをして、ユウヘイの方を見た。


「うーん。ブランコから見たときはまん丸で、

立っているときは、下の方が半分ぐらい

沈んでいたような気がする」


 答えながらユウヘイは、

やっぱりマコトは天才だと、あらためて思う。


「その差が、ユウヘイが記憶を無くしていた時間だよ。

後で確かめてみよう。それから、黒マントが消えたとき、

その辺の風景に変わりはなかった?」


「そうだなぁ。砂あそびの赤いバケツが一個あったな。

それから、鉄棒に赤ちゃん用の帽子がかけてあった。

そうだ。黒マントが消えたあと、

ネコが一匹歩いていたような気がする」


「それって、もしかして黒ネコ?」


「えーっ! そんなことまでわかるの?」

ユウヘイは、ものすごくおどろいた。

ここまで天才だとは、知らなかった。


「ほら、あそこ。

歩いてるんだけど」


 マコトが指さす方を見ると、

すべり台のそばを黒ネコが歩いている。


 気のせいだろうか。ユウヘイを見ると、

ネコはあわてて目をそらしたように見えた。



             つづく



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