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遺族「障害者への差別」 逸失利益、健常者の6割は妥当か

2021年10月09日 | 年金・保険・消費生活など
「産経新聞」令和3年10月9日(土)付け記事より引用(Yahoo!ニュース)
 大阪市生野区で平成30年2月、重度の聴覚障害があった井出安優香(あゆか)さん=当時(11)=が、暴走した重機(ホイールローダー)にはねられ死亡した事故をめぐり、遺族が運転手側に損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁で続いている。争点は、将来の就労で得られるはずだった「逸失利益」。健常者と同じ基準での算定額を求める遺族側に対し、被告側は、健常者の6割にとどまると主張した。遺族側は「障害者差別だ」と訴えており、訴訟の行方に注目が集まる。(佐藤祐介、西山瑞穂)

 事故は30年2月1日午後、同区桃谷の大阪府立生野聴覚支援学校前で発生。歩道で信号待ちをしていた児童らに重機が突っ込み、安優香さんが死亡、4人がけがをした。刑事裁判では運転手が当時、隠していた持病のてんかんによる発作で、意識を失っていたと認定された。

 今回の裁判で遺族側は、将来の年収額を健常者の子供と同じ基準に合わせ、一般男女平均の約497万円に設定。トータルの逸失利益は約3530万円で、慰謝料などと合わせて計約6130万円の賠償を求めている。

 被告の運転手側と会社側は死亡事故の責任は認めたが、安優香さんが生まれつき重度の難聴で、自賠責保険の基準に照らせば労働能力は92%失われていると主張。「大学に進学して正社員として就職することは難しい」とし、健常者と障害者の賃金差も踏まえ、将来年収額は聴覚障害者の平均の約294万円が合理的とした。算出した逸失利益は、健常者の約6割にあたる。

 これに対し、安優香さんの両親の気持ちは複雑だ。

 訴状などによると、安優香さんは補聴器を使用すれば会話が可能で、音声認識アプリなどを活用すれば就職にも支障がなかった。

 被告側は裁判当初、安優香さんの将来年収額を、一般女性の平均の4割にあたる約153万円と算定。これに対し、父親の努さん(48)が障害者差別と訴え、支援する署名10万筆余りが地裁に集まった後、9月の弁論で被告側が約294万円に引き上げた。だが、「娘の名誉は踏みにじられたまま」と両親は感じている。

 あの日、事故に遭わなければ、今ごろ安優香さんは中学校に進学していた。興味を持っていた英語を将来の仕事に生かしたいと、希望に胸を膨らませていたはずだった。

 「娘は障害を理由に、他人から勝手に将来も決めつけられた。屈辱を晴らしてあげたい」。努さんの思いに変わりはない。

■判断、社会情勢ふまえ変化

 裁判所が認定する逸失利益の金額は、被害者の年齢や収入、就労先など個別ケースによって異なる。被害時点で、算定の基礎となる収入がない子供の場合は特に判断が難しく、社会情勢などに応じて考え方は変化してきた。

 損害賠償に詳しい立命館大の吉村良一名誉教授(民法)によると、子供に逸失利益を認めるようになったのは50年ほど前。ただ、平均賃金の差などから、女子の額は男子よりも低く抑えられた。その後、女性の社会進出が進む中で、将来の就労の可能性に男女差はほぼなくなったとして、女子の逸失利益は一般男女の平均賃金を基準に算定する判断が広がった。

 一方、障害児の逸失利益は「ゼロ」とされることも少なくなかった。ただ、近年は男女差と同様、就労状況の改善を踏まえた判決も出ている。

 広島高裁は9月、高校時代に車にはねられ、高次脳機能障害が残った30代の全盲女性に、一般男女の平均賃金の8割の逸失利益を認定する判決を出した。現在の身体障害者の平均賃金は「一般男女の7割」だが、1割分を上乗せした形となった。

 吉村氏は「障害者との共生が今の国の政策であり、裁判所は社会の大きな流れを念頭に置いた判断をすべきだ」と強調している。
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