民法改正で借主の信用情報を保証人に提供 (465条の10)

2020年4月1日より新民法がスタートします。

それに伴い、注意すべき点が多々あります。

今回はその1つ

賃貸借契約の保証人に対する情報提供義務

について説明します。

ざっくり説明すると

「事業用の賃貸借契約で個人が保証人になる時は、借主の信用情報を保証人に告知する義務があって、それをしないと保証契約を取り消されるよ」

こんな感じです。

住居の契約は関係ありません。

そして、保証人が法人(賃料保証会社など)の場合も関係ありません。

事業用物件を個人で保証する場合のケースです。

「保証人になったばかりに・・」って話は誰でも一度は耳にしたことがあると思います。

それを防ぐ為に新民法ではこのような条文が新設されました。

465条の10です。

(契約締結時の情報の提供義務)
改正民法465条の10 
1項 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
2項 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
3項 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない

これ、貸主にとっては結構重大な変更点です。

個人の保証人が虚偽の説明を受けたとして、個人保証人は貸主に対して保証契約を取り消せるという事になります。

ということで、契約書には「465条の10をクリアして契約したよ」と書くことになるでしょう。

具体的には下記のような条項を入れることになります。

1.連帯保証人は借主と連帯して本契約から生じる借主の債務を負担する。

2.本契約が事業用不動産賃貸借契約で、かつ連帯保証人が法人以外の場合、借主は連帯保証人に対して保証委託をするにあたり民法465条10第1項に定める次に掲げる事項の情報を提供したこと、連帯保証人に提供した情報は正確であることを保証する。

一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

3.連帯保証人は、借主から保証委託を受けるにあたり、前項の情報の提供を受けたこと、借主から提供された情報の内容を理解した上で保証契約を締結することを確認する。

これを全ての契約書に入れておけば、住居の場合及び保証人が法人の場合には、この条項を読み飛ばせば良いだけですから。

改正民法 不動産売買・賃貸借契約とモデル書式