ジェフリー・ディーヴァーは、1950年アメリカ合衆国のシカゴ郊外で生まれています。 雑誌記者、弁護士を経て40歳から専業のミステリ作家となりました。

 

”どんでん返しの魔術師”と呼ばれるディーヴァーのミステリは、ラストのどんでん返しだけでなく、ストーリーが二転三転するのが特徴。 

 

特に犯人側と捜査側が相手を出し抜こうと攻防を繰り広げ、逆転に次ぐ逆転が起こるストーリーはディーヴァーの真骨頂でしょう。

 

代表作は、四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムと女性巡査アメリア・サックスが活躍する「リンカーン・ライムシリーズ」です。 全世界でベストセラーとなっていて、25か国語に翻訳され150か国で読まれているそうです。

 

1997年に第1作「ボーン・コレクター」が執筆されてから、最新作は2021年に執筆された第15作「真夜中の密室」。 今年73歳になるディーヴァーはまだまだ健在のようです。

 

そんなディーヴァーのベスト3を選んでみました。

 

第1位: 「ウォッチ・メイカー(上・下)」 (2006年)

 

リンカーン・ライムシリーズの第7作。 シリーズ最強の犯人ウォッチ・メイカーを綿密な科学捜査によって追い詰めるライム。 しかしそれを上回る驚異的な犯行計画。 目まぐるしい攻防は、後半さらに疾走感を増しますが、それは一直線ではなく変幻自在でどこに着地するかが予測できません。 ジェットコースターミステリという言葉がこれほど相応しい小説は他にないでしょう。 私は本作を海外出張の飛行機の中で読んだのですが、二転三転どころでない怒涛の展開に一気読みさせられました。

 

第2位: 「コフィン・ダンサー(上・下)」 (1998年)

 

リンカーン・ライムシリーズの第2作。 本作の犯人はプロの殺し屋で、ライムは過去に部下を殺された苦い経験がありました。 不正行為を目撃した証人を殺すよう依頼を受けた殺し屋と、証人を隠れ家に保護し罠を張って待ち構えるライムたち。 交互に挟まる犯人側の描写とライム側の描写。 双方とも相手を出し抜こうと工夫を凝らし、それをまた見破って逆をつく。 この攻防は緊迫感が満点です。

 

第3位: 「クリスマス・プレゼント」 (2003年)

長編ばかり書いていたディーヴァーが初めて執筆した短編集。 タイトルになっている「クリスマス・プレゼント」はリンカーン・ライムが登場しますが、それ以外はかなりブラックなものも含んでバラエティー豊かな内容です。 共通しているのは、16の短編すべてにどんでん返しが入っていること。 ディーヴァーの魅力が凝縮された短編集と言っていいでしょう。

 

次点: 「スリーピング・ドール(上・下)」 (2007年)

 

「ウォッチ・メイカー」に登場した行動心理学の専門家キャサリン・ダンスを主人公とした物語。 いかなる嘘も見抜くという尋問の名手キャサリンと、他人をコントロールする天才犯罪者の頭脳戦が繰り広げられます。 キャサリンの家庭問題や犯人に支配されていた女性の自立を描く場面もあり、女性読者が初めてディーヴァーを読むなら、ハードなライムシリーズより本作から入るのが良いかもしれません。

 

最初はベスト3、次点も含めてすべてリンカーン・ライムシリーズにしようかとも思ったのですが、ちょっと偏りすぎるので、少し変えてみました。

 

それだけに「エンプティー・チェア」「魔術師」「12番目のカード」などなど、ライムシリーズは他に面白い作品が目白押しなのです。

 

ただ、シリーズも巻を重ねてくると、読むほうもディーヴァーの仕掛けるどんでん返しに慣れてきて初期の作品で覚えた衝撃が少し薄まってきているかもしれません。

 

また、”このミス”などミステリランキングに最近の作品が入っていないのも気になります。 しかしそれを差し引いたとしても最高レベルに粒が揃ったミステリシリーズであることは間違いない所でしょう。