VOL.120 [美の源泉] 2021.05.09掲載

source of beautyこの世には多種多様な「美」が溢れています。デザインの世界や芸術の世界、そして大自然の中にも。我々が「なんて美しい!」と思わせるものの中において、一体何がそうさせているのか、なぜに人を魅了し虜にさせる正体とは。以前にも、ここで何度か美についてお話したことがありますが、今回は美についての具体的な製造過程といった観点からお話しようと思います。

美には音楽、絵画、文学、舞台、ファッション、ダンス、映画、建築、工藝などなど、人が作り出すものの中に、美というものが沢山あります。そして美とは、どのようにして生まれるものなのか。その美のパワーは、一体何から出来ているものなのか、といった美の源泉とも言える「基(もと)」になるものを、じっくりと探ってみようと思います。まずは美を現出させるには、いくつかの構成要素が必要かと考えます。

1)秩序
美は秩序を基本として現出し、成り立ちます。秩序とは、整えられたルールです。無秩序の中で生まれるものは混乱です。一見、無秩序であるからこそ自由な発想が生まれると思いがちでありますが、基本の考えや技術を身に付けてからの向上・成功が本道とみてよいのではないのでしょうか。

2)バランスを保つ
秩序が整えば、バランスも必要です。形のバランス・色のバランス・素材のバランス等、この世界にはゴールデンルール(黄金比)なるものが存在し、それに近づけるための努力が必要となります。これを「アクセルとブレーキの関係」とも言い換えられますし、マクロ的に見れば「宇宙の進歩と調和の法則」、このバランスを崩さないことが肝要であります。

3)メンテナンスの継続
バランスを保つことが出来たなら、それを継続させることも大切です。せせらぎの小川をイメージしてみてください。常に水はさらさらと流れ、あの透き通った水質が保たれるのは、周りの環境保全があってのことです。小川に大木が倒れ、枯葉が溜まり、泥が堆積すれば水は澱みます。常に手を入れることやメンテナンスの継続が見落としがちのポイントです。

4)イノベーションの余地
美は最終段階を経て完成するものと考えがちですが、まだまだ成長の余地(伸びしろ)を残しつつ、前進し続けてこそ、本物の美しさは耀きを放つことができるのです。時間軸でもって完成と区切ることは必要ですが、永遠の時の中で見た時、完成は単なる成長過程でしかありません。この世界は止まることはなく、循環し続けていることが真理であれば、成長する可能性を秘めていることも美であるのです。

5)品格が備わっている
美には絶対不可欠な要素として「品格」や「気品」を上げておきたいと思います。ここは絶対に外せない部分であり、品格の反対は「醜さ」です。では、どのようにして品格を磨けばよいのかを平易な言葉で言えば、正直で嘘をつかず、人から褒められなくとも、誰にも見られなくても、自分の長所を伸ばし愛する。それを信じ続けることであると思います。

6)魂の輝きを込める
作品に対して作者の気持ち(魂の輝き)をどれだけ込めることができるのかにかかっています。これは感覚的なことでもあり、とても難しいと思いますが、大自然の中で生きる私達人間を見守る存在、美を司る存在を信じて、その存在に指導や支援、応援してもらう想い、「託す」という感覚が大切だと考えます。

最後に、人間ひとりでは何ひとつ出来ないという真実を立脚点にすることが、このコラムテーマの出発点であります。

以上が美の構成要素や製造過程だと述べましたが、これは現時点での私の考えです。私の人生テーマのひとつに「美しく生きる」というものがあります。死を目の前にして自分に問うとしたら、「お前はこの人生、美しく生きたか?」「お前の存在は、この世界を美しくするために、少しでも役に立つことができたのか?」それを問いたいと思っています。

コロナ禍の2021年ゴールデンウィークに、のんびりと自宅で過ごし、今回の美コラムを書いてみました。さて、あなたにとって美しい世界とは、どんな世界なのでしょうか?一度思いを馳せてみるのも良いかと思います。

添付写真:三代歌川豊国と歌川広重の合作作品「雙筆五十三次 江尻」

絵の上部には天女、左下には三保の松原が描かれています。江尻の位置は現在の清水港(静岡市)の西側にあり、三保の松原が遠望できた宿場町でした。また、三保は富士山を望む白砂青松の景勝地で、天女が衣を掛けたといわれる羽衣の松がある羽衣伝説で有名な所です。私の実家は、羽衣の松から程近い所にあり、幼少の頃から慣れ親しんだ場所でもあります。2013年には富士山世界文化遺産の構成資産にも登録されています。今振り返れば、三保に生を受けた意味も、この地域性に深く関係しているように思えてなりません。

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Written by Yasumoto Takashi

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