新しい臓器 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。

 「君はしばらく会っていなかった間に太ったようだね。新しい臓器が増えたのかね?」

 「さあ。どうですかね。ここのところ、仕事が忙しいせいで定期検診を受けていないので」

 「忙しくても定期検診には行かなくてはいけないだろう。世の中にはいつの間にか心臓とか肺の数が足らなくなって唐突に死亡した個体もたくさんいるのだから自分の臓器の数は常に把握しておくべきだよ。医師の診断を受けても死ぬ時は死ぬのだろうけど、あらかじめ死にそうだとわかっていれば遺族に別れの言葉を掛けるだけの時間を持てるのだからね」

 「身体が大きくなっているので今のところはおそらく臓器の数が減っているわけではなく、増えているのだろうと思うのです」

 「ひょっとして、脳が増えているのではないかね?既に新しい脳がこの会話を聞いていて私の存在を認識しているかもしれないね」

 「そういえば、そろそろ古い脳から新しい脳に入れ替わりそうな時期になっているかもしれません。身体の主導権の移行に手間取って感覚が混線する時間が長くなると死ぬかもしれないので厄介ですね」


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