今週の「朝採り野菜ボックス」のお手紙です。
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冬野菜がほぼ終わりに近づき、今は春野菜がボチボチ出てきていますね。寒さの中でギュッと体を引き締めながら育った冬野菜に比べ、春野菜は生命がほとばしる暖かい時期にすくすく育つので、瑞々しくて美味しいですよね
一方で農家側からすると、春野菜は特に手間がかかる時期の野菜とも言えます。というのも防寒しながら育てるためです。
例えば大根も露地のままだと真冬の朝晩は凍結し昼に溶け出して、というのを繰り返す事で細胞壁が壊れ、スポンジのようになってしまいます。キャベツも寒さに強い品種を使いますが、あまりに寒さが強いと中が凍って腐ってしまう、という事もあります。
そのため、この辺りでは防寒のためビニールトンネルやビニールハウス内で防寒しながら育てるのが必須です。それがとても手間なのです。
秋冬野菜は種を播けば常温で育ちますし、何より草退治をしなくて良いので手間がかかりません。一方、春野菜は地温の確保と草を抑制するためにマルチを張り、種を蒔いた後に防寒のために不織布をかけ、その上にビニールトンネルを張り、更に風で飛ばないようマイカ線で縛りつけます。
そこに種を蒔くわけですが、やはり気温が低い冬は発芽も生育も本当にゆっくりです。
ところが節分を過ぎた辺りからトンネル内の気温は急上昇し春草が増え始め、3月に入ると一気に繁茂します。そのため草取りが必要なのですが、普通の草取りと違って、風で飛ばないようにギューギューに張っているトンネルをヨイショと半分開け、膝を地面について上半身をつっこんで草を抜くので非常にやりにくいのです。終わったらまたトンネルを閉める、という工程で、普通の3倍ぐらい時間がかかるのです
草抜きだけでなく、実は間引きという作業もあります。
大根など種を播く時は発芽率や生育不良の事も考慮して1箇所に3~5粒ぐらいが播かれます。それが順調に育つと過密になるので、間引いて1本にするのです。それが数千箇所もあるのです(1週間で1,500本出荷するとしたら4週間で6,000本分)。
先日、みみずの会の菅澤さんの大根の間引きのお手伝いをしましたが、ちょっと大きくなってしまったところは小指ほどの大きさになっていて抜くのも一苦労。それを何百箇所もやっていると握力が無くなってきます
しかし、気温がどんどん上がる春は人間の都合はお構いなしです。大根だけでなくちょうど人参も間引きと草取りの時期で、更に玉ネギのトンネルの片付けも重なるのです。田んぼをやっている人は種籾を播く時期で、もう、とんでもない忙しさなのです
こんな手間をかけても春の気温は気まぐれ。1週間に1,500本ずつ出せるよう種まき時期を何回も分けたのに、寒さが続くと生育が進まず野菜不足。逆に気温が高い日が続いて生育が進んでしまうと、来週出すはずだった野菜が今週分と一緒に出せるようになり野菜余り、と同時に来週分が無くなるという事態に。
といったように、どうしても予定通りにはいかないのが春野菜の特徴なのです。
ということで、農家さんは多少は廃棄前提で多めに種を蒔きます。
そのような手間と苦労がある中で、秋冬野菜が無くなり春夏野菜が出そろうまでの端境期(はざかいき)は、どうしても野菜の種類が不足します。
手間だけの事を考えれば、春野菜はやらない方が楽なのですが、お客さんに健康な野菜を年を通して届けていくために、真冬に種を蒔き手間をかけて春野菜を揃えています。
同じような野菜が続く事もありますが、どうぞご理解頂き有り難く頂戴しましょうね