皆さま、こんにちは!らぶばなです。アッシュのタイムワープ話の続きです。色々と設定がフワッとしていますが、気になさらないでください(汗)
〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜
「俺が叶えたかった望み」
第六話:インターハイを終えて
俺は英二をインターハイで優勝させるべく、サポートする気満々だったのだが、結局丁重に断られてしまった。と言うよりも、本気だと思われていなかったと言った方が正しいだろう。
インターハイまで期間が短かいし、所詮陸上に関しては素人の俺が何を言ったところで英二は真剣に耳を傾けはしまい。むしろ集中できずに困らせてしまうかもしれないと思い、遠慮してしまったところがある。
もっともっと信頼関係を築いていれば違ったアプローチができたかもしれない。出会ったばかりの俺たちの絆が何かを拍子に崩れてしまうのが怖かったのだ。その隙にリホや他の連中が英二にすり寄ってくるかもしれない。
(ちぇっ、残念だ。。。俺のこの頭脳を活かせないだなんて。。。)
見た目が派手な分、極力目立たぬよう学校の成績は標準よりやや上ぐらいに押さえている。
カシャカシャ。。。キーボードで俺は英二のライバルとなる人物について調べていた。なるほど、関東に水野という選手がいて、長年英二のライバルとされているようだ。体格がよく、国内トップクラスの選手らしい。彼のジャンプはとても力強く、人を圧倒させるような迫力がある。
一方、英二の棒高跳びのフォームは真逆だ。英二の場合は走り出してからジャンプするまでの流れが綺麗でごく自然に感じられる。気がつくとあっという間にスルッとバーを飛び抜けていたという印象だ。自然で流れるようなジャンプは人を惹きつける美しさがある。体格の違い、だけではないと思う。
俺はこの世界にやってきてから英二のジャンプをたくさんみてきた。俺とスキップの前で命がけで跳んでくれたジャンプがやはり一番感動したのだが、練習中や試合時のジャンプも見ていて飽きない。ダイナミックさよりも、軽やかでどこか繊細なジャンプなのだ。そして俺は跳んでいる時の英二の笑顔が何よりも素晴らしいと思う。
結局、インターハイで英二は2位だった。俺はクラスメイト達と当然応援に行き、声が枯れるまで応援していた。
あともう一歩で優勝できたが、やはり競合相手は強かった。英二はサッパリしていて悔しそうな顔もせずに、応援席にいる俺たちに手を振って応援団に礼を言うとコーチの元へと戻ってしまった。
過去を変えるのが怖くて結局何も出来なかった俺は心底悔しかった。今まで野球やフットボールゲームのサポーターとして応援したことなどなかったが、たった一人の親友のためなら喜んでサポーターになっても良いと思った。
「英二くん残念だったね。。。またあのライバルに負けちゃった」
「でも2位だよ!すごいよね。。。あとで声かけてお祝いしようよ、英二くん来るかなぁ?」
「カーレンリース君も一緒に参加しようよ」
クラスメイトに誘われたが、なんとなく英二は来ない気がしたので俺は断った。
***
部屋に戻り、俺はベッドに倒れるようにダイブした。慣れない応援なんてしたから喉が痛くて体もだるい。
「はぁ。。。」
閻魔大王との期限がどんどん近づいてくる。
(こっちに来てもう2ヶ月半か。。。)
カレンダーの日付を見ると、落ち着かない。毎日俺の望んだものについて考えているが思いつかないのだ。
焦りが俺の全身を包み込んでいた。
「くそっ。。。!あっという間に期限が来てしまう。。。」
このまま楽しく残りを過ごすのも良いだろうが、この謎を残したままというのがどうにも気に入らなかった。自分のことなのにどうして分からないのだろうか。
ーコンコンー
時計の針を見ると、普段なら英二は寝ている時間だった。やっぱり試合後はいつもと違うのだろうか。
「英二、どうした?」
「アッシュ、もう寝るのかい?」
「いや。まだもう少し起きてるつもり」
「ね、そっちに行ってもいい?母さんたち寝てるし、窓越しだと声が響くかもしれないから」
「そうだな、こっちに来いよ」
奥村家の玄関が開き、英二が俺の住むアパートに向かって歩いてくるのが窓から見えた。
冷蔵庫からペットボトルを取り出し、サイドテーブルに置いてから俺は玄関へと向かう。
軽くノック音がして、英二が入ってきた。
「こんな時間にごめんよ。なんか眠れなくて。。」
「そんな時もあるよな。まぁ、好きなところ座れよ」
「ありがとう」
英二は小さなカウチに座った。いつもと変わらないように見えるが、どこか表情がさえない。やはり試合のことで落ち込んでいるのだろうか。それとも疲れているのだろうか。迷ったが、試合のことが話題にでないのも不自然かと思った。俺は出来るだけさりげない口調で言うよう気をつけた。
「。。。あー、今日は惜しかったな。おまえ、カッコよかったぞ。」
「あぁ、応援ありがとう。まさか君がハチマキを頭に巻いて応援してくれるだなんて思わなかったよ」
「リホが。。。これが正当な日本の応援スタイルだって言うものだから。ちょっと怪しいなと思ったけど」
「君、目立つのは嫌いなのに応援団なんてしてくれるんだもん。可笑しくって跳ぶ前に吹き出しそうになった」
「。。。俺に何ができるか分からなかったから。リホめ、やっぱり俺で遊んでたな」
「ハハハ、でも君の存在のお陰で僕は元気をもらったけどね。」
「そうか、それならよかった」
「ねぇ、アッシュ。君って時々。。。すごく遠いところにいたんじゃないかって。。。気がするんだ」
英二はじっと俺の瞳を見ながら言った。俺はニヤッと笑った。
「あぁ、たしかにNYは遠いぞ」
「いや、そういう意味じゃなくて。同じ地球なんだけど、まるで別世界から来たような気がする」
「宇宙人とでも?ギズモか?」
「また、そんなことを言うんだから」
英二は肘で俺の脇腹を小突いた。
「あ、このソーダもらうね。いいでしょ?」
自分の好きな飲みものがテーブルに置いてあることに気がつき、英二は無遠慮に手にとってゴクゴクと飲み出した。俺は英二のこういうところが結構気に入っている。それだけ精神的な距離が近いことを意味するからだ。
「あー、旨かった。。あっという間に このソーダ、飲み終わっちゃった! あっという間。。。。あっという間だった。。。今日の試合も。。。」
「また来年があるさ。。。」
「ライバルの水野に勝つのは難しいと思ったけど。。。。何だかなぁ。。。僕の目の前に大きな壁のようなものがある気がするんだ」
「。。。。。。」
「あぁ、こんな事言っても困っちゃうよね」
何が正解なのか分からないが、俺は英二を勇気付けたかった。期待とプレッシャーで押しつぶされそうになっていたのだろう。それから解放されたが、不満足の結果になってしまった。まだ気持ちの整理が出来ていないようだ。
できる限りの言葉と想いを彼に向かって告げた。
「おまえはもっと大きな困難にぶつかるだろう。。。でも絶対にお前は壁を飛び越えられる。。。俺が保証する。。。」
英二はキョトンとしていたが、嬉しそうに微笑んでくれた。ごく自然な笑顔だった。
「ふふっ、まるで目撃者みたいな言い方だね」
「。。。そう?」
「ね、アッシュ。君がここにいてくれて良かった。今日なんて特に。。。」
「遠慮せずに俺のところに来れば良い。覚えておけ」
「うん!」
それからしばらくして、英二をモデルにした写真を撮影したいという依頼が東京からあった。
*続*
お読みいただきありがとうございました。英二の高校時代の設定がすっごく曖昧なので、間違ってたらごめんなさいね。もう一度漫画見直さなきゃ( > fly boy,...の方)なぁ。。。でもこのまま進んじゃうんだ(笑)
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