皆さま、こんにちは!らぶばなです。アッシュのタイムワープ話の続きです。伊部さんとアッシュの会話、何となくバチバチしてますが別にアッシュは敵意むきだしってわけではありませんよー。設定のおかしなところが多々あるかもしれません。ご了承くださいませ〜
〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜
「俺が叶えたかった望み」
第8話:不思議な少年
木造の小さな旅館の一室。畳6畳の空間が伊部の当分の住まいだ。
カメラの整理を終えた後、することがなくなった伊部はタバコに火をつけた。白い煙は天井に向かって上がり、そのうち見えなくなるのをボウッと眺めていた。
(ハァ。。。大丈夫かな。撮影無事に終わるんだろうか。。。)
奥村英二は思っていたとおり純朴で素直な少年だった。少しシャイなところがあるが、その内面は決して弱くない。むしろ自分の決めたことは曲げずに貫こうとするだろう。
伊部は、彼の心にあるまだ見ぬ灯火を明るく照らすことができたらと思っていた。だが、実際に会ってみるとそう思っていたのは自分だけでは無かったと実感していた。
皆から”アッシュ”と呼ばれる 外国人の留学生がなぜか奥村英二に張り付いているのだ。英二も別にそれを嫌がる様子もなく、ごく自然に受け入れている。
あの後、担任から奥村英二を紹介してもらった。アッシュと呼ばれる少年は奥村英二の側で伊部達の様子を眺めていた。はじめ、アッシュは驚いた様子で伊部を見ていた。彼の唇が動き、何か言いかけたことに伊部は気づいた。あの視線は初対面ではなく、既視感のあるものだ。だが結局アッシュは何も言わなかった。
(どこかで会ったかなぁ。。。?昔、モデルをしてもらったとか。。。いや、あんな子と知り合いなら絶対に覚えているはずなんだけど。。。)
今日はお互いに初対面ということもあり、英二とは雑談が中心だった。時々チラチラとこちらを観察しているアッシュが気になったものの、人懐っこい英二の性格もあって少し距離が縮まった気がする。
撮影に集中しなければならないが、常に英二のそばにいるアッシュの存在が気になってしまうのだ。それは彼の類い稀は容姿だけではなく、どこか寂しげで複雑な表情から気になってしまうのかもしれない。
「えっと。。。君は。。。?」
伊部は思い切ってアッシュに声をかけようとしたが、ふいっと顔を背けられてしまった。まるで俺に話しかけるなとでも言うかのように。
(逃げられちゃったか。。。)
***
翌日、英二が軽いストレッチとランニングをしている時、アッシュはグラウンド近くのベンチに腰掛けて読書をしていた。
「君。。。アッシュくんだね。僕は東京から来た。。。」
「知ってる」
自己紹介しようとした伊部の言葉をアッシュは遮った。
顔をあげたアッシュは眼鏡をかけていた。端正な顔によく似合っている。伊部はこの子ならフォーマルな洋服でも着こなせるだろうなと思った。
「俺はアンタのこと知ってるよ、イベさん」
「あ。。。そうなの!? 先生から聞いたのかな、アッシュ君?」
「。。。アッシュでいい」
落ち着いているせいか、実年齢より随分大人びて見えた。
(本当に高校生なのか? なんかすっごく。。。人生経験積んでそうな雰囲気があるんだけど。。。)
「あのさ。。。アッシュ、どこかで君と会ったかな? 」
「なぜ?」
凄みのある視線を向けられて、伊部は戸惑った。
「いや。。。何となく。。。」
「俺のこと、ナンパしているのか?」
冗談なのか本気なのか、判断のつかない言い方だった。
「えっ、そんなつもりじゃなくて。。。君が俺のことをまるでどこかで見たかのような表情で見てたから。。気のせいかな?」
伊部の言葉にアッシュはしばらく沈黙したまま空を見上げていたが、何か納得したかのように伊部の顔をまっすぐに見つめた。
「ふぅん。。。」
翡翠色の宝石のような瞳だ。何か妖しげなほど現実味のない美しさだ。もし彼が女性だったら伊部はアッシュに魅了されていただろう。
「カメラマンって感受性が強いのか?」
アッシュは独り言を言うかのようにポツリとつぶやいた。
「うーん、そうなのかもしれないね。。。フフッ、そんなこと聞くだなんて、まるで。。。」
(ゴーストかユーレイなのかい?)
喉まででかかったが、伊部はやめた。アッシュの儚く美しい容姿のせいで、彼の存在が霊的なものに見えるだなんて馬鹿馬鹿しいし失礼だろう。だが、この少年が何者なのかは知りたいと思った。
「じゃぁ聞いてみるけど、君は一体何もの何だい?」
笑いながら伊部は冗談でも言うかのように聞いてみた。
「。。。。」
ふっと冷めた笑いをみせたアッシュの表情は妖艶で怪しげなものに変わっていた。伊部はこんな表情を見せる少年を見たことがなかった。背中がぞくりとする。本当にこの少年は霊的な何かかもしれないと思えてきた。そうなると奥村英二は彼に取り憑かれているのだろうか。
そんなことを考えながらも伊部はこの少年から目を離せずにいた。この少年の不思議な何かを知りたいという思いと、恐怖心に近い感情で動けなくなったのだ。
「。。。殺人鬼だよ。それも少年犯罪史最悪の犯罪者で元男娼だ」
低い声でアッシュはゆっくりと囁いた。
「。。。。。」
きっと自分は彼に揶揄われたのだろうと伊部は思ったが、咄嗟に反応することが出来なかった。それだけアッシュの表情が真剣だったからだ。
(本当に冗談?でも。。。非現実的すぎる。そんな話、ニュースで聞いたことがないぞ。。。)
伊部の脳裏に、アメリカにいるジャーナリストの友人の顔がふと浮かんで消えた。しばらく黙っていると、アッシュがアハハと笑い出したのでハッと伊部は我に返った。
「なんて顔してるんだよ。あんたとはまだ会っていないよ、伊部さん」
「。。。。」
(「まだ」ってどう言う意味だ? なんかこの子が言うと冗談に聞こえないんだよな。。。)
伊部は「困ったな」と頭を掻きながら中途半端な笑みを浮かべた。
「君、なんか迫力あるし、日本語も上手だからさ。。。なんて言うか。。。冗談言っているように思えないんだよね」
「。。。そう?」
アッシュはニッコリと綺麗に微笑んだ。誰が見ても愛想笑いだとわかる笑顔だった。
「俺は地獄から探し物をしにやってきたのさ」
「探し物?」
「あんたのおかげで見つかるかもしれない」
「?」
理解できずに立ちつくす伊部のそばをアッシュはスッとすり抜けて校舎の中に消えていった。
(。。。不思議な子だな。。。やっぱり幽霊だったらどうしよう。。。お寺に行こうかな。。。)
伊部はぼうっとしながらしばらくの間誰もいない校庭を見つめていた。
*続*
お読みいただきありがとうございました。伊部さん、かなりアッシュにビビっていますね(笑)お化けだと思っていらっしゃるし(笑)
人生経験違いすぎるアッシュのド迫力に圧倒されまくりですが、カメラマンならではの感性?でアッシュに何か特別なものを感じているようです。
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