5月定期のデュトワ氏、リハの内容など質問を頂きましたので少しお話を。


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の、前に、譜読みについての記事を読んで下さった方より、今回の譜読みについてご質問がありましたので

・ハイドン→まるっと弾いてみた

・ラヴェル→弾いた事あるのでサラッと見た

・ペトリューシュカ→難しそうなところを探す(1箇所あったので3段くらいらさらう)、YouTubeで探して楽譜を見ながら聴いて注意ポイント探す、YouTube流してカラオケして、他パートの聞こえる音を確認、音だけで分からない所はスコア見て答え合わせ

こんな感じで譜読みしています。


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さてさて、デュトワ氏のリハーサル。

有り難い事に今回で3度目の共演。

大きな印象は、皆んなで一緒に一曲にしていく、というリハーサルの進め方です。


テクニック的な部分や、絶対に合っていなければいけないところ、仕組みを分かっていない(勉強出来ていない)奏者には厳しく、オーケストラ全員を待たせても一人に吹かせたりリズムの確認や"心地良い音程"の拘りは緻密です。

ただ、その緻密な直しによってそれぞれに自信が付くやり方なんですね。同じ事をやっても、奏者の自信を失わせストレスを与え調子を狂わせる悪循環指揮者と何が違うのか、お人柄でしょうか、出来ると思わせてくれるのがこのマエストロ。


音楽的には、求めている音や雰囲気の打診があり、あとは任せてくれる感じです。むしろ出る音を楽しんでおられるような。勿論違えば違うと仰るけれども、指揮者1人がイメージするモノより任せてしまって奏者たちが合っている方が効率が良いんですねきっと。

そもそも、クラシック音楽本場の巨匠がアジアの片隅のオーケストラ奏者たちを信じて任せてくれる懐の深さが凄い。アジア人蔑視をする欧米の指揮者は少なくないので、ここでもその人柄に信頼度が上がります。

ちなみにザ日本人的な日本人指揮者の多くは、その環境のせいか、歳を重ねるほど"先生"みたいになっていきます。先生と呼ばれても振り向くから先生だと思ってると思うし、まんま学生オケとかの指導者みたいで同じ舞台に立つ音楽家には到底思えn、、ん?ぶつぶつ…


もとい。

ハイドンでは、最初大人しく弾いていた我々に「もっと!」やっても「もっと!もっと!」なんか全然許してくれないからもう弾きたいようにノリノリで弾いたら「そう!・・もっとね!」

古典はお決まりの弾き方もあるので(その認識が違う人には「そこテクニックが違う」とゲキが飛びつつ)、それぞれが弾きたいように弾いても合うし、誰かに合わせるのではなく弾きたいように弾く事で奏者個人の音楽が活きていて、ストレスが無い。こうして一色に染めない事で色彩豊かになり、その色の出方がオケの色なんだと思います。

これがもし合わせなきゃとか、指示された通りに弾かなきゃいけない、となると、ストレスはもろに音に出ます。またその瞬間からその奏者個人の音楽は死にます。指揮者やコンマスの色一色に染められる感じですかね。


上手く言えないけれど、やっぱり凄く巧みなんですね。奏者をバカにする態度なんて絶対に取らないし、そもそも上からモノを言わない、指導するわけではなくあくまで一緒に創る姿勢を崩さない。

こう言うとそうじゃない指揮者がノーマルみたいですが、、ハハハ( ̄▽ ̄)ハハハ、アハハハ


時間にはとてもキッチリしておられる方で、10分しかない休憩時間が終わる1分前には指揮台に座っていて「みんな遅いよー!時間だよー!」といたずら顔で奏者達をからかう、お茶目っぷり。

1970年、今から52年前に、初めて日本で、フェスティバルホールで振ったんだよね!誰か知ってる?と嬉しそうでした(^^)

随分前ですが、

ソリストとオーケストラを見ていて弾き方が違うように思うのですが、変えているのでしょうか、

みたいな質問を頂きまして、

・・ソリストのレベルや立場になった事無いし( ̄▽ ̄)お応えの仕方がわからなかったのでスルーしていました。

 

ご質問の内容とは違うと思いますが、

自分なりに思うネタがあったので書いてみます。

 

昨日まで、ブルックナーの5番をリハから3回の本番まで一週間弾いて、弓にあたる所の親指が(途中経過としてはおじさんの踵みたいになって)皮が剥けて、今こう↓

 

弓にあたる部分ですね↓

 

普段、そんなに弓を強く握っていないので、

オーケストラで大音量の金管に負けじとfffでトレモロとかスタカートとか速い動きの弓を頑張ったりすると、グッと持った結果こうなります。

一人で弾く時には絶対しない弾き方で、家で練習していたり、オーケストラ業務がお休みの時には、親指がこんな事になっていないです。

 

ちなみに、小さい音の時は、オーケストラでは人数がいる分、1人で弾く時の何倍も小さい音を出そうと努力します。

 

全員がそれぞれ自分の思う音楽を創ろうとはするものの、要求された音を出すべく指揮者やコンマスに寄せに行くので、その点では弾き方もかなり変わります。

周りの人の動きにつられたりもするし、身体を動かして弾きたくても周囲が動かないから我慢することもあります。

勿論、オーケストラの中にも、自分を貫き通して一切寄せない方もいらっしゃいます。合わせられないとか合わせたくないとかではなくて、自分の音楽を守る感じでしょうか。※アンサンブルが出来ていることは大前提です。

何が正しいということもないので、色んな人がいてその音が混ざるのが、オーケストラの醍醐味かなと思います。

 

ご質問の内容とは異なりますが、

そんなこんなから考えると、、、

ソリストはオーケストラの音量に負けるわけにはいかないし、ソリストがいる曲の時のオーケストラは"弾いてるふり"並みに小さい音で弾く事もあるので、それはそれは弾き方が違うと思います(^_^;

 


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どのように譜読みをしていますか?

とのご質問がありました。

 

譜読み、という単語をご存知の時点で、音楽をされている方なのかな?と思いましたが、まず”譜読み”とは。

弦楽器Tuttiの場合、合奏のリハーサルまでに、”練習”をしていくというよりは、”譜読み”をしていくのが一般的ですね。

楽譜に書いてある事をザッと楽譜通りに弾いてみる、何が書いてあるかを知っておく、見ておく感じの事です。

練習とは少しニュアンスが違って、ザッと譜読みをしてから、どこを練習するか、練習しなくても大丈夫そうかを決めるのが譜読み。

言い方を変えると、上手に弾けるようになるのが練習、とりあえずなんとなくスルッと通して弾けるようにしておくところまでが譜読み。

 

なんで練習しないのって?

リハーサルに入ってから皆で練習しますし、譜読み程度にしておかないと、自分流が身についてしまったら誰かに合わせて弾く事が逆に困難になります。リハーサルで弾く弦を指定されてフィンガリングを変えさせられる事もあるし、指揮者のテンポは千差万別、また演奏の仕方を変えられる事なんてよくある事です。そういった指示に即対応する事が最優先。

ちなみに、完璧に練習してきた結果、合奏リハで指示があってももう直せないとか、自分の練習してきたテンポでしか弾けなくなっているなど、真面目なオーケストラ初心者にはわりとありがちです。

まぁ、、匙加減ですね。

リハまでに譜読みをしておく、リハで指揮者やトップのやりたい事を頭に入れる、本番までに上手になる。というか、譜面通り弾けている時点でそもそもみんな上手なんですけどね、演奏会の曲の練習じゃなくても基礎練は必ずしているし、これが仕事なので。

大概すぐ慣れます。

※当然ながら、リハーサルを通して本番までに完璧にならなければ、その過程で必ず練習します。

これはプロの場合ですので、アマチュアの方は楽譜通りに弾けるようになるまで練習が必要な方が多いと思います。なので、練習していっちゃいけないだなんて決して思わないで下さいね(^^;

 

本題に戻ります。

私の譜読みの仕方は幾つかあります。

 

楽譜を見て、難しそうなところがあるかどうか確認

→無ければ終了。私の場合はリハで全集中する為に敢えて弾いていきません。誤解がありませんように、弾いていかないと言っても、曲の勉強はある程度していきます。そこまでが譜読みです。

→難しそうな所があれば次へ

 

難しそうなところをザッと弾いてみる

→難なく弾けたら終了。

→サッと弾けなかったら、フィンガリングを考えて何度か弾いてみて、大丈夫そうだったら終了。

→それでも練習の必要がありそうだったら、さすがに全力でさらいます。

 

複雑そうな曲だと、音源に合わせてカラオケ

→音源と一緒に弾けなかったところ、落ちたところを見直して、とにかく波に乗れるようにしておく。

 

プロの譜読みはアマチュアの方の参考にはならないかもしれませんが、勧めるとしたら、オーケストラのような合奏曲での譜読みで最も手っ取り早く効率が良いのは、このカラオケだと思います。

難しそうな曲だったら先に難しそうな部分を譜読みして練習しておく、そして音源を鳴らして一緒に弾いてみる、その時に落ちたり弾けなくなった箇所を練習し直す、こんな具合でしょうか。

 


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バルトーク作曲。
弦楽とチェレスタ、打楽器のための音楽
略して弦チェレ。今月定期の曲です。

楽員ブログの方にネタ提供したのですが、
この曲が好きすぎるので
自分のブログにも投稿しておきます♪



↑楽器は他に、鍵盤楽器とハープ。パート割と配置が少し変則的で、こんな感じになっています。
手書きでゴチャゴチャ書いてあります。
この曲、実は大学院時代に分析した曲の1つで、その時の楽譜を大事に取っていました。



普通のオーケストラ曲以外にあまり知らなかった学生時代、この変わった曲に惹かれ、ウィーンでサイトウキネンの演奏を聴いて更に「なんて格好良い曲なんだろう!」とハマりまして。

当時、2楽章と4楽章の冒頭1分くらいを打ち込んでMIDIにして、mld変換してガラケーの着メロにする熱狂ぶり。

ずっと、ずっと、弾きたい曲で、今回やっと機会に恵まれた事で、分析した楽譜を出してじっくり見ると…

・・・何が書いてあるのかさっぱりわかりません。覚えていないものですね。黄金比が使われていて、計算機を使いながら「クライマックスはここですね!」とかやっていた事は覚えているのですが、前述したガラケー着メロで耳に残っている部分もちゃんと楽譜を見てみると「思っていた譜割りと違う」なんて情けなさ。
改めて楽譜を片手に音を聴いてみると、やっぱり格好良い2楽章と4楽章!
相変わらず理解出来ない1楽章と3楽章、なのでした。

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という事で、曲の紹介を少し。

〜バルトークの基礎知識〜
彼は当時珍しかった蓄音機を持って民俗音楽の収集をするのがライフワークでした。という事で彼の作品には民俗的な曲も多く残されています。
また、黄金比を用いて楽曲を書いた事でも知られていて、特にこの弦チェレは顕著に表れているのでは無いでしょうか。

※黄金比とは
例1)フィボナッチ数列がわかる方は、その隣り合う数字の比率が近似値であると思って頂ければ大丈夫です。
例2)高校数学時点での私の理解。ある長方形から短辺の長さの正方形を切り取った時に、残った長方形が最初の長方形の短辺長辺比率と同じ、何度繰り返しても比率は同じ。これを解の公式の計算式に当てはめると出る答えは1:1.618(以下切り捨て)
例3)分析時に習ったもの、以下の画像

ちなみにこの黄金比は、「この辺かな」というのは小節の数で計算出来ますが、演奏タイムで考えると同じ楽章の中でもテンポが変わるので、その小節は若干前後します。

また、バルトーク独特(だと私は思っている)中心軸システム(五度圏システム)と、それに踏まえてこの曲を簡単に分析したものがこちら


ここまでが基礎知識。
では本編の分析を!
とご紹介したいのはやまやまですが、その内容がこんな感じでして↓

ええっと。自分で改めて見ても、解説が無いとちょっとよくわからないのです。。

ということで、聴きどころを少し。
私が実際の演奏を聴いて「凄い!」とワクワクしたのは、配置と構成からくるステレオ効果。
※配置は最初の画像をご参照ください。
2楽章冒頭で、おお!と身を乗り出しました。
現在の通常配置や、時々あるただの対向配置では叶わない、変な言い方ですが生音のステレオ効果。
普段よくクラシックを聴かれる方ほど、その新鮮さにお気付き頂けるかと思います。
譜面の上ではこんな感じになっています。

明らかに左右からくる音、これは4楽章でも感じられるかと思います。

この曲自体の黄金分割点は3楽章。歌。
きっとバルトークが一番聴かせたかった部分なのでしょう。

私がオーケストラに携わる仕事をするようになって約15年以上、演奏機会が無かった弦チェレ。という事はお客様もあまり触れる機会が無かったのではないかな、と思います。
バルトークの計算され尽くした世界、そして彼の音楽を堪能して頂ければ幸いです。


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4オケの舞台裏について教えて下さい。
と、前々からご質問頂いておりましたが、
舞台裏って、何を書けば良いのか、、、
と思っていたところ
同僚が楽員ブログで書いていましたので
リンク貼っておきます♪↓
https://ameblo.jp/daiphilgakuin/entry-12669112791.html

コロナ禍での開催ということで楽屋密を避ける為に、
前回(昨年より延期で先月開催)と今回は
一日でゲネプロ4オケ分→本番4オケ分ではなく、
・ゲネプロのみの日(ホール練習のようなもの)
・本番のみの日(↑←いずれも4オケ流れ作業)
の2日間に分かれていました。
自分のオケの開始2時間以上前に来館しないこと、
終わったら速やかに退館すること、
という事で他オケの方々にはほぼお会い出来ず。寂。

先月は我が社がトップバッターだったので
そんな事を考えもしませんでしたが、
2番目以降のオケは本番前に音出しが出来ない(´・ω・`)
開演60分前に開場、音出しはそれまでしか出来ず、
更に2時間前制限によりそんな早く来られず、
そもそも最初のオケのセッティングだから舞台は×、
廊下でも良いから音を出したい時には舞台で他オケが本番中だから音出し厳禁という、、、
なんだか謎の緊張感に包まれておりました。
※特定の楽屋を除き、基本的に楽屋で音出ししません

お客様にはどうでも良い事でしょうけれども
私が毎回気になるのは、一番VIPな楽屋が誰の楽屋になるか。
今回は飯守さんでした(^^)
その他コンマスの個室楽屋の場所とかも
意味があるのかどうかはわかりませんが、
もしかして何かの序列かしらね?と、
妄想しながらチェックするのも楽しみの一つです♪
と、舞台裏らしい事を書いてみました。