経理・経理・経理マンの巣窟

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名目倒れのリフィル処方箋

2022-05-05 20:55:22 | 経済ニュース編

 2022年4月から「リファイル処方箋制度」が導入されると聞いて、久々にグッドニュースだと大喜びしたものだが、残念ながら糠喜びに終わってしまった。と言うのも私のかかりつけの医師たちが、この制度を全く実施する気がないからである。

 さて本格的な嘆き節をぶちまける前に、まずこの「リファイル処方箋制度」について簡単に説明しておきたい。
 従来通常の処方箋は、医師が決めた日数分の薬を一度だけもらえるものだったのだが、リファイル処方箋では定められた一定期間内、回数内であれば、同じ処方箋で医師の診察なしに繰り返し薬をもらうことが出来るようになったのである。
 具体的に言えば、慢性疾患の治療薬で30日分処方、3回までリフィル可能となり、1回の受診で最大3回まで処方薬を受け取ることができるという制度なのだ。もちろんこのリファイル処方箋導入の狙いは、「患者の通院回数及び窓口負担額の減少」と「医療機関の混雑緩和」、「医療保険費の抑制」だと考えられる。

 まるで良いこと尽くめの制度なのだが、この制度を好ましく思わない者がいた。それは何を隠そうこの制度の鍵を握っている開業医たちだ。つまりこの制度が順調に機能してしまうと、いままで薬をもらいに通っていた患者の来院回数が1/3になってしまい、再診料と処方料収入が激減してしまうからである。

 ところで、私が慢性的疾患で最低月1回通っている医療機関は、心臓疾患の「循環器内科」、高脂血症の「内科」、慢性的腱鞘炎の「整形外科」、副鼻腔炎の「耳鼻科」などだが、これらの医師たちにリファイル処方箋を要求したところ、全員がうちでは扱っていないとの回答。その理由は1か月以上診察なしで薬を出すのは安全性の見地からよくないという、もっともらしい言い訳が大半だった。ただ一人だけ正直な医師が、収入減らしきことを仄めかしていたが…。

 だがそんなことはこの制度を創るときに散々討議され、政府が問題なしと判断して施行したのではなかったのか。そもそも海外ではとっくの昔に、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス等多くの先進国で導入されているし、国によっては1年間有効のものも存在しているのだ。日本ではたった3か月間だけだし、体調が良くなければ3か月経たなくても自主的に診察に行くのにね…。

 つまり開業医でリファイル処方箋が機能しない原因は、「発行の有無が医師の判断に任されている」ことにある。それは日本では相変わらず医師会の政治力が強力であり、いまだ薬剤師の社会的地位や職務範囲が弱いことに起因しているのかもしれない。

 それにしても、やっと導入した国際的かつ合理的な「リファイル処方箋制度」なのに、開業医たちの利益保守のために、このまま永遠に葬られてしまって良いのだろうか。この状況を政府がいち早く察知し改善しなければ、日本ではいつまで経っても、医療機関の大混雑と医療費の増加が抑えられないだろう。

蔵研人

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