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カテゴリ:昭和歌謡ラプソディー
~ちゃんちゃんちゃん ちゃんちゃんちゃん ちゃかちゃかちゃんちゃんちゃん~ ~若くあかるい 歌声に 雪崩は消える 花も咲く 青い山脈 雪割桜 空のはて きょうもわれらの 夢を呼ぶ~ この歌がラジオから流れると、良一はどうしても真子のことを思い出すのだった。東京から引っ越してきて丘の上の二階家に住み、窓からはピアノの音がもれていた。真子の家はハイカラでお金持ちそうだった。転校してきた真子はセーラー服をなびかせながら、多摩川の土手を自転車に乗って颯爽とペタルをこいで高校に通いだした。 その真子が自転車がパンクをしてべそをかいていた。 「どうしよう、授業に遅れちゃうわ、、」 「どうしたの?パンクしたのか、よし、治してあげるよ。」 良一は真子の自転車のパンクを手際よくを直してあげた。それから二人は仲良しになった。良一も真子と同じ春が丘高校だったので、多摩川の土手を自転車に乗って毎日のように二人は一緒にペタルをこいでいた。 真子は勉強もよくでき、背のすらっとして都会の匂いをさせた女学生だった。とくに英語の発音は先生よりも上手だった。屈託のない真子は良一に弁当を作ってくれたこともあったし良一のほつれた学生服を繕ってくれたこともあった。 高3のF組ではあの二人は付き合ってると噂になって、クラスメイトから冷やかさえることもあった。でも、良一も真子もそんなことは気にしなかった。気のあう仲良しの二人だっただけだ。 だが、そんな真子が病気を患って学校を休むようになり、土手の上に真子がペダルをこぐ自転車は走らなくなってしまった。思い切って、良一は親に内緒で、八百屋の店で一番高いメロンを抱えて、ドキドキしながら真子の家のチャイムを鳴らした。真子はパジャマの上にガウンを羽織ったままだったが、思ったより元気だった。 「ねえ、良一君、勉強してる?あたしね、病気だけど、ちゃんと勉強はしてるの。儚い命だなんてなんて悲観してもしょうがないわ、病気を治して元気になって、早稲田に入りたいの、ね、良一君、二人で一緒に早稲田大学に通おうよ、ね、約束しよう!」 「うん、そうだな、僕も勉強して必ず受かるようになるさ、」 良一は大好きな真子と同じ大学に通えることで夢心地になっていた。良一は毎週見舞いに行った。真子の顔はか弱く青白かったが、真子も真子のお母さんも嬉しそうだった。暖かいレモンティーが甘酸っぱくておいしかった。 丁度その頃、「愛と死を見つめて」という小説や映画が流行っていた。 ~まこ、甘えてばかりでごめんね、ミコはとっても嬉しかったの~ 良一は真子との関係を重ねあわせていたのだろうか、、いや、そんあことじゃない、ただ純粋に真子を励まそうと思っているだけだ。 ~僕はずるい人間なんだろうか?何のために何が目的で真子の家に行くのだろうか?~ 純愛がなかったと云えば嘘になりそうだ、 ~はかない 命と 知った日に意地悪言って 泣いたとき涙を拭いて くれたまこ~ 良一の中では葛藤がやまなった。 (後編に続く ) 作:下肥流行 下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.05 15:14:41
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