けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

核兵器の準備しましたけど、何か・・・?

2015-03-18 00:34:27 | 政治
昨日話題になったニュースの中に、ロシアが約1年前にウクライナからクリミアを併合した際、プーチン大統領が核兵器の使用を準備していたとの報道があった。多くのメディアは「ケシカラン!」とお怒りの様であるが、個人的な感想としては、(マスコミは)あまり事態を呑みこめていないのではないかと感じている。

以前からブログでは書かせて頂いるが、佐藤優氏のご指摘の様に、ロシアとウクライナの争いは毒ヘビと毒サソリの争いの様なもので、短絡的にロシアのみが悪だと決めつけられる様な短絡的な物ではない。「力による現状変更は認めない!」のスローガンは分かるのだが、この言葉の意味するところは実はかなり抽象的である。我々のイメージでは、この「力による現状変更」とは「軍事力を背景とした、侵略・侵攻による現状変更」を想像するのだが、この様な外向きのベクトルを意味する「侵略・侵攻」とは趣が異なり、外から国内のクーデターを仕向ける内向きのベクトルとしての「力」であったとしても、それは何処かの国を不安定化させてドサクサに紛れて現状変更を行うものであるから、この場合の「クーデターを誘発させる策略に伴う現状変更」も、同様に「力による現状変更」の部分集合と見なされるのはそれ程理解に難くない。

ロシアの主張の根底にあるのは、少なくともウクライナは昔はソビエト連邦の一部であり、東西冷戦後もロシアと西側諸国との間の緩衝剤的な役割を維持することが求められる地域であり、その様な地政学的に重要な地域に土足で入り込む行為がどうして「力による現状変更」ではないのか?という不満である。以前のキューバ危機の時は、アメリカの庭先であるキューバにソ連が土足で踏み込んで、核ミサイルを配備しようとした。アメリカは当然の如く怒りまくり、世界は核戦争勃発の危機に直面した。最近の西側諸国の行動は、この時よりはオブラートに包んだやり方ではあるが、とどのつまりは全く同じ状況を再現しようとしているのに近い。であれば、プーチン大統領の行動は、ロシアサイドの視点で考えれば、極めて理に適った行動であると言える。

少し視点を変えて考えてみれば、中国のチベットやウイグルで独立運動が本格化し、それを抑え込もうと中国が人権弾圧を熾烈化させようとしていたとする。この場合、過去の歴史的経緯を考えればチベットやウイグルの人々の民族自決の権利は当然認められて然るべきだが、彼らが仮に住民投票などを行って独立の是非を決めようとしたら、中国が軍事的に国民投票を妨害しない様に国連軍(実際には中国が拒否権を行使するので多国籍軍となるが)が進駐し、国民投票を平和裏に行おうとすれば、これは極めてクリミアで起きていた事態に近いことになる。そもそもクリミアは以前はロシアの一部であったのが、フルシチョフ第一書記の決断でウクライナに編入された経緯もある。ロシア語の使用を禁止する様な現ウクライナ政府の弾圧に対抗したという理解はそれ程無理筋ではない。だから、私の感覚ではクリミア問題はそもそも論的には若干ロシア側に有利な事態で、一方で現在のウクライナ東部でのゴタゴタは、若干、ロシアに不利な状況ではないかと感じている。一方的にどちらかが正しくて他方が間違っていると見なせない事態であるならば、現ウクライナ政府が「ドサクサに紛れて一気に制圧したい」と考えるのと同じように、ロシアサイドが「ドサクサに紛れて一気に独立させたい」と考えるのも理解できる。問題は国連が全く機能しない中で、常任理事国が正面切って対立する環境での落としどころをどの様に模索するかである。

その様な中でのプーチン大統領の「核準備」発言をどう捉えるべきか?

私の中では、プーチン大統領は極めて「自制的」に行動したのではないかと評価している。例えば、プーチン大統領が今、「我々はNATO軍の軍事拠点に核ミサイルの照準を合わせている。ウクライナ東部へのウクライナ政府軍の侵略行為はNATO軍によるロシアへの侵略と見なし、核兵器を使用する準備ができている!」と発言したのであれば、それは欧米諸国もロシアへの核報復を前提とした攻撃態勢を取らなければならなくなる。双方が引き金に手をかけた状態が続くことは、何らかのヒューマンエラーで核戦争が勃発するリスクに繋がる。だから、「今」を語るのではなく、「過去」を語ることで直接的に核の引き金に手を掛け合うことを避けながら、それでいて自らの主張を効果的に相手に伝えることに成功している様に見える。それはそれで卑怯なやり方なので褒められたものではないが、勢いで拳を振り上げてその降ろし方に困ってしまう様な状態ではなく、拳を握りながらも低い位置で相手と一緒に拳を見つめ合う状況であるから、外交手法としては中々理に適った手法と言える。核兵器と言うのは使ってしまったら「終わり」なので、使わずに行かに活用するかが勝負である武器なのである。フルシチョフ第一書記やケネディ元大統領の様に、核兵器を使わざるを得ない直前の状況にまで持っていく政治家より、その様な極限状態を回避しながら十分なブラフをかけるのが、核兵器の正しい使用法と言える。性悪説に立って考えれば、極めて理に適っている話である。

一方で、アメリカを中心とする経済制裁はどうかと言えば、これはアメリカの思惑とはかけ離れた現実があるようだ。以下の記事にその辺の事情が書いてある。

地政学を英国で学んだ(奥山真司)2015年3月15日「ロシアに経済制裁が効かない5つの理由

これはNY Times紙に掲載されたサミュエル・シャラップ&バーナード・スーシャーの記事「なぜロシアへの経済制裁は失敗するのか」に関する紹介記事なのであるが、ここではアメリカは「ロシアへの経済制裁は軍事的コストを伴わない、極めて低コストの合理的な政策である」と考えている様であるが、実際にはその裏に潜むコストを考えれば「最悪の選択肢」であるということらしい。特に顕著なのは、プーチン大統領やその側近を狙い撃ちにした様な制裁であるはずが、実際にはプーチン大統領一派へのダメージよりもロシア国民の蒙るダメージの方が起きく、結果的にロシア国民の愛国心を高めてプーチン大統領の支持率を高めてしまった。支持率が低迷してレイムダック気味のオバマ大統領とは対照的だと言える。元々、完全に民主主義国家とは言い難いお国柄だから、この様な制裁は効果が効きにくい面もある。更には、アメリカが目指すグローバルな世界経済の半ば「否定」の様な効果もあり、今後はこの様な側面がボディブローの様に効いてくる恐れが強い。ドイツを始めとするヨーロッパ諸国も、自らの国への経済的影響、エネルギー安全保障的な視点では完全にアメリカと一枚岩の関係とは言えず、色々な意味で、アメリカは落としどころに困っている感がある。

多くのマスコミは、性善説に基づいた外交を期待している様であるが、そんなことで国際紛争が解決するはずはない。それは歴史が証明している。だから、「話せば分かる!」などという前提を取っ払い、最悪のシナリオを想定しながら、少なくともその最悪のシナリオを完全に回避できるベターなシナリオに着地させるように考えなければならない。自らの国の指導者が、薄っぺらな正義を振りかざして暴走しようとしたら、それを諌める役目もマスコミにはあるのだろう。

ルーピー鳩山氏がクリミアに行ったのも、あの何も考えていないオヤジが何も考えずに行動した話だから少なくとも褒められた話ではないが、短絡的にロシア悪玉論の中でルーピー鳩山氏を叩いても何も得るものはない。単に「黙殺」するのが結果的には良いのだろう。それよりも、例えば上述の様にチベットやウイグルとも絡めて議論を行い、この様な紛争の最低限のルール的な考え方をロシアとの間で合意を図るなどして、ウクライナ問題は早々と損切りした方が結果的には筋が良い。ロシアを完全な欧米の民主主義体制に取り込み、ロシアの民主化を加速させる試みを勧めた方が、ロシアの脅威を排除するためには100倍効果的なのだと思う。その為には、一時的な損切りの返り血を覚悟する勇気も指導者には必要なのである。その勇気を後押しするのもマスコミの仕事かも知れない。

幸か不幸か、ロシアはプーチン大統領の訪日に現時点でも前向きらしい。日本に出来ることは色々あるはずである。少なくともロシアを中国サイドのグループに走らせないような政策を、世界のコンセンサスにまとめ上げてもらうことを安倍総理には期待したい。

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