日本には豊かな自然があります。
温かくて湿った潤いのある気候が自然を豊かにして、そうした環境と恵みによって、日本の生活が出来上がっていったのです。
「和」の心は、自然と共にあります。
そんな自然と共にある生活をあらわす素材があります。
それは、木と紙と土です。
西欧の文化は、石の文化です。
それに対して、日本の文化は紙です。
紙というものは、「平面」です。
その平面的思考によって、日本人は様々な物や空間を作り上げてきました。
たとえば。
着物は、布を平面のままに縫製して仕上げますよね。
身にまとう時、ふくらみをつけて、張りをもたせて立体に見せようとしていますが、平面の立体化とは見えても、身体に合わせて立体に縫製するものと比べてみれば平面であることから逃れられません。
立体に裁断する場合には、不要な部分を切り落とさなければなりませんが、一巻(一反)の布で、どの人のサイズにも合わせて縫うため、切り捨てる無駄がありません。
なかなかに合理的な発想ですね。
演劇の舞台も平面的です。
西欧のオペラの舞台は、演ずる場所よりその後ろの奥行きが何倍もありますが、和の能楽の舞台の背景は、いつも変わらず、松が描かれたヒノキの鏡板一枚です。
歌舞伎劇の舞台でも、書き割りという板に描かれた背景が変化したり、その前に何枚かの幕が下ろされたりするだけですよね。
背景が平面的であるということが、演じられる内容や演技上に不都合を起こすわけはありません。
観る側にも、平面を補うイマジネーションが豊かに養われていくことにもなります。
これは「見立て」にもつながる考え方ですね。
日本の平面性がもっとも生かされた、世界的に知られたもの。
何かわかりますか?
そうです、アニメやマンガです。
日本のアニメやマンガを世界の多くの人々に面白いもの、楽しいものだと知らしめたのは、日本人が平面の達人だからといえるでしょう。
平安時代の後期から鎌倉時代にかけて制作された、京都の高山寺に伝わる『鳥獣戯画』の絵巻では、猿、兎、蛙などが遊ぶ姿を擬人化して描いています。
この遊び心と線画の画法が、今日のアニメやマンガの原点になっているものの一つです。
江戸時代の北斎漫画のデフォルメの素晴らしさも、また現代的です。
もちろん、琳派のデフォルメもそうです。
家紋に代表される、多種多様な紋様もそうですね。
「和」の美が、平面の世界で構成されているという視点。
これで読み解いていくと、普段とは違うものが見えてくると思いますよ。
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