マイマイのひとりごと

自作小説と、日記的なモノ。

【自作小説】夏の悪夢に囚われて【R18】

2019-06-15 06:28:31 | 自作小説
久々の小説投稿でございます。
続きは気が向いたら書くかも。

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一筋の光も届かない漆黒の闇の中。
 無限に続く洞窟のようなその場所を、佐伯アイはふらりふらりと頼りない足取りでさまよい続けていた。
 これが現実ではなく夢だということだけは、なんとなくわかっている。
 自分がどうしてこんなところにいるのか、どこから来たのか、どこまで行くのか、ほかにはっきりしていることはひとつもない。
 何もない、誰もいない。
 こんな夢、早く覚めればいいのに。
 奥へ進めば進むほど現実との境があいまいになり、万が一これが現実の世界だったらと思うと寒気がした。
 暗くてさびしい。
 もう帰りたい。
 出口はどこにあるの。
 ねえ、誰か。
 もう前へ進む気力もなくなりその場に座り込みそうになった瞬間、暗闇の先にぼんやりとした明かりが見えた。
 電気とも蝋燭の炎とも違う、夏の夜の蛍よりもずっと頼りない光。
 あれは……?
 もしかしたら出口かもしれない。
 一縷の望みを託しつつ駆け寄ってみると、光は洞窟の天井部分と壁面から地面までをぐるりと囲むように生えた苔のような物体から漏れ出ているようだった。
 毒々しい赤色や緑色、暗い青色、黄色にピンク。
 まるで絵の具を散らしたように色とりどりの苔は凸凹とした岩肌全体に点在し、中にはドロリとしたゼリー状の固まりが混じっている部分もある。
 苔の一部は、ときどき動いているようにも見える。
 なんなの、これ。
 悪い予感がする。
 背筋がぞわぞわとして落ち着かない。
 こんなところ早く出なくちゃ。
 踵を返そうとした瞬間。
アイは視線の先にあるものを見て、凍りついたようにその場から動くことができなくなった。
 
 極彩色の苔が密集した地面の上。
 ついさっきまで何も無かったはずの場所に、真っ白な肌を惜しげもなく露出した女がぐったりと力なく横たわっていた。
 さっきまで誰もいなかったはずなのに。
 誰なの?
 なぜこんなところに?
 女は27歳のアイよりも、ずっと年下のように思えた。
 大学生か、まだ高校生くらいかもしれない。
 発育しきっていない少女を思わせるほっそりとした肢体。
きつく閉じられた目の縁は涙に濡れ、長く艶やかな黒髪はゆったりと波打つように広がっている。
 女の身体には赤い縄が掛けられ、両腕は背中側で、両足は閉じられないように左右の太ももを大きく開かれた姿勢で固定されていた。
身じろぎひとつしない様子から、人間ではなく淫らな格好をさせられた人形のようでもあった。
 人形。
ああ。
思わずため息が漏れた。
 決して好んで見たいような光景ではないはずなのに、女の体から目を話すことができない。
幾重にも掛けられた縄のせいで不自然に強調された乳房と、存在を主張するようにぽっちりと突き出た薄桃色の乳頭があまりにも卑猥で。
大きく開かれた両足の狭間にまでぎっちりと縄目が食い込んでいる様子は目を背けたくなるほど残酷でいやらしくて。
悪い子。
悪い子は罰を受けるんだよ。
 もっと、お仕置きして。
 頭の中で誰かの声がする。
 男の声と、それに応える女の声。
 アイはその場に立ち尽くしながら、自身の両足の間がじんわりと熱く湿っていくのを感じていた。
 あれは、もう何年も前の。
 下着の内側で胸の先がじんじんと疼きながら固く尖っていくのがわかる。
 さわって、おねがい。
 きもちいいの、ねえ、もっと。
 いや、いや。
 考えたくない、思い出したくない。
 
 ずるり。
 何か重いものをひきずるような音が聞こえた気がした。
 頭の中の声が消える。
 何の音?
 周囲を見回してみても苔と女の姿以外は何も見えない。
 気のせいか。
 でも。
 ずるり、ずるり。
 今度ははっきりと聞こえた。
 そんな、まさか。
 アイは大きく目を見開き、いやあ、と大声を出しそうになった。
 ところが、叫ぼうとしても声が出ない。
 掠れた息の音だけが、のどの奥でひゅうひゅうと鳴った。
 あまりの恐怖に手足の先から血の気が引いていく。
 異音は横たわっている女のまわりから聞こえてくる。
 ずる、ずるっ。
 不気味な音と共に地面がぼこぼこと大きく盛り上がっていく。
 光る苔を押し退けるようにして次々に這い出してきたのは、巨大な触手を思わせる生物だった。
太く赤黒い体をうねうねとくねらせながら女の肉体に絡み付いていく様子はこの上なくグロテスクで、巨大なミミズの集団のようにも見える。
一目散に逃げ出すべきなのに、やはり足はぴくりとも動かなかった。
どくん、と心臓が大きく脈打つ。
頭がずきりと痛んだ。
これを見るのは初めてじゃない。
またいつもの悪夢が始まってしまう。
アイは自分の胸に手をあて、泣きたくなるような思いで触手に飲み込まれていく女を見つめた。
 こんなもの、望んでいないのに。
 早く消えて。
 そう願えば願うほどアイの意識は女の中へと吸い寄せられ、やがて素肌に食い込む縄の痛みやねばねばとした触手に巻き付かれていく感覚がアイ自身のものへとすり変わっていく。
息ができない、苦しい、怖い。
 気持ち悪い、お願い、離れて。
 泣き叫ぼうとしても、やはり声は出ない。
 ぬるついた物体は容赦のない力で身体中に絡み付きながら、やがてその先端をアイの感じやすい部分に繰り返し擦り付けてくるようになった。
 無理な姿勢を強いられ、みしりと骨が嫌な音を立てる。
 突き出た乳房の周囲に数本の触手がまとわりつき、胸の先端までねっとりと舐め上げていくかのような動きで執拗に責め立ててくる。
 男の口のなかで、ねろりねろりと丁寧にしゃぶられていくような感覚。
 やだ、こんな。
 じん、じん、と乳首の芯が甘く痺れていく。
 すごい、気持ちいい。
 こんなの、いや。
 本当にいやなのに。
 与えられる快楽と状況の異常さに心を引き裂かれながらも、アイはさらなる愛撫を求めるように背中を大きくのけ反らせた。
 そこ、いいの。
 もっと、お願い。
 頭のなかで再び嘲るような声が響き始める。
 相変わらずだな。
 真面目なふりをしても隠せないぞ。
 この淫乱女。 
 おまえは普通じゃない。
 俺が欲しくてたまらないんだろう。
 言ってみろよ、ほら。
 やめて、もう言わないで。
 頭の中の声が消え、代わりにビチャビチャという水音が響いた。
 アイの乳肉を弄んでいるものたちとはまた別の、数十本の触手たちが今度は白い粘液を吐き出しながら太ももの内側を伝ってあの恥ずかしい割れ目のまわりを撫で回してくる。
 皮膚に染み込む粘液はまるで媚薬のようで、下半身全体がすぐに淫靡な熱を持ち始める。
 もうだめ、本当にいやなの。
 残された理性が無駄な抵抗を試みる。
ところが姿勢を少しでも変えようとして動くと、股間に押し付けられた縄の結び目があの敏感な箇所をぐりぐりと苛むように刺激してくる。
 びくっ、びくっ、と体が跳ねる。
わずかな摩擦に甘く鋭い快感が腰から上半身までせり上がってきて、脳天まで突き抜けていくようだった。
無責任に反応する肉体が悔しくてたまらない。
 触手たちは攻撃の手を緩めることなくアイの潤んだ陰部を強引に押し広げ、粘膜の襞をじっくりと味わうように摩擦しながら膣内にまで侵入しようとしてくる。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、と音を鳴らしながら女陰の入り口に吸い付かれ、ぬるぬるとした棒状の突起物で溢れ落ちていく愛液を掻き出されていく感触がたまらない。
 だめ、やめて。
 嫌だと思うのに、腰がひとりでに動いてしまう。
 股間で蠢く触手たちのなかでもひときわ巨大な一本が、ゆっくりと頭をもたげた。
 凶悪なほど赤く膨張した先端が、めりめりと秘裂を押し割ってアイの奥へ潜り込もうとしてくる。
 真っ赤に燃える鋼鉄の塊を押し当てられているのかと思うほどの熱。
体が内側から引き裂かれてしまいそうなほどの圧迫感。
 異物は焦らすように前へ後ろへと一進一退を繰り返しながら、少しずつ確実に秘肉の中へと沈み込んでくる。
 生理的な嫌悪感は吐き気を催すほどなのに、蹂躙されていくその部分は呼吸も止まりそうな悦びに満たされていく。
 汗腺が破壊されてしまったように、全身から噴き出す汗が止まらない。
 あついの、もうあつい。
 そうよ、もっと奥まで。
 いや、やっぱりこんなこといや。
 抵抗する理性と淫らな期待が交錯する。
 その直後。
 火傷しそうなほどに熱い剛直が、アイの奥深くを目指して一息に突き入ってきた。
 狭い肉路をこじ開けられながら、子宮の奥までめちゃくちゃに貫かれていく。
 細胞のすべてが性的な興奮に打ち震え、凶悪なほどの快楽の波に飲み込まれていく。
 ずぶっ、ずぶっ、と極太の肉根に何度も突き上げられながら、アイは腹の奥底から湧き上がる愉悦を感じていた。
 もう痛みや恐怖は気にならなかった。
 こんなにも嫌なのに。
 そこ、気持ちいい。
 もっと、めちゃくちゃにして。
 わたしのこと、ぐちゃぐちゃに壊して。
 好きなの、ほんとはこれが好きなの。
 自由を奪われた体勢のまま、アイは無心に腰を揺らした。
 普段は隠している淫猥な欲望が心の奥底から湧きあがり、肌のすみずみまで蕩けそうな悦びが駆け巡っていく。
 止められない。
 この感覚、知っている。
 もう何年も前のこと。
 あれは、おじ様。
 アイが憎らしい男の顔を心に思い描くのと同時に、化物たちの動きが激しさを増していく。
 膨れ上がった乳頭をちぎれんばかりに吸い立てられ、剥き出しになったクリトリスをねぶりまわされながら、凄まじい勢いで秘肉の奥底まで打ち抜かれていく。
 思考は千々に乱れ、どこまでも高まっていく快感だけがアイのすべてを支配していく。
 いく、いっちゃう。
 わたし、化物に犯されて、いっちゃう。
 体内に潜り込んできた触手たちが一斉に大きく蠕動し、膣奥に大量の体液を注ぎ込んでくる。
最高度まで感度を引き上げられた粘膜が、肉の悦びに満たされていく。
ビクビクと腰の痙攣がとまらない。
 あぁっ……!
 アイの肉体が絶頂の高みへと昇りつめた、その刹那。
化物たちの姿は跡形もなく消え去っていった。

はっとして目を覚ますと、そこはいつもの自分のベッドの上だった。
 枕元の目覚まし時計は午前三時を指している。
 手の甲で額の汗を拭いながら、アイはゆっくりと体を起こした。
嫌な夢……。
いま目の前にある世界が現実であることを確認するように、まわりの景色を確認するように見回してみる。
 一人暮らしのワンルームマンション。
 ほとんど家具もない部屋は整然と片付けられ、普段と何も変わった様子はない。
 窓のカーテンは閉じられ、バルコニーのドアにも玄関のドアにもきちんと施錠されている。
 身に着けているブルーのパジャマも寝る前に着たときのまま、ボタンひとつ外れてはいなかった。
ふう、と小さく息を吐き、アイは再びベッドに体を横たえた。
 この数年、夏になるといつも同じ悪夢を見る。
 それはいつも似たような暗闇の場面から始まり、あの気持ちの悪い物体に凌辱され尽くすまで決して終わることはない。
 おかしな夢を見てしまう原因は、なんとなくわかっていた。
 心に刻まれた七年前の出来事。
 許されない行為に溺れた日々。
 きっとあのことが忘れられなくて、こんなわけのわからない夢を見てしまうのだろう。
 あんなこと……嫌だったのに……。
 嫌だった?
 本当に?
 男の皮肉な笑顔が頭の隅にこびりついて離れない。
 もうずっと連絡も取っていないのに。
あのひとは、いったいどういう気持ちだったのだろう。
 いまは何事もなかったかのように暮らしているのだろうか。
 男の顔と声を思い出しながら、アイはパジャマと下着を脱ぎ捨てて右手をそろりと両脚の狭間へと忍ばせた。
 まるでお漏らしでもしてしまったように、そこはぐっしょりと濡れている。
 大丈夫よ、大丈夫。
 いい子ね。
 すぐに終わるから。
 まだ幼かった過去の自分を慰めるように、アイは自身の割れ目の奥へと指先を沈み込ませた。
 
(つづく)

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