私 「・・・え?」


長谷川 「兄貴と高校からの親友でさ。
      竹内さんの紹介で今の会社も受けたんだよ。」


私 「そうだったの・・・。」


長谷川 「うん。だから、性格も女癖もだいたい知ってる。」


私 「立ち入った事、聞いてもいいかな?」


長谷川 「うん。」


私 「お兄さんは、いつ・・・?」


長谷川 「兄貴が28の時だから5年前かな。」


私 「竹内さん33歳か。年の離れた御兄弟だったのね。」


長谷川 「だね。だからめちゃくちゃ可愛がってもらってた。」


私 「そっか・・・。」


長谷川 「俺が二十歳の時だった。
      俺は、まだまだ子供で、兄貴と仲良くしてたつもりが、
      兄貴の悩みも、プライベートも何も知らなかったし
      大学で楽しくて、なんも気付いてやれなかった。」


私 「・・・。」




彼の顔が


歪んで行く。




見ていられなかった。




私 「変な事、聞いちゃってごめん。話題変えよう?」


長谷川 「あ。うん。いいんだよ。ごめんね。」


私 「私もまだまだ、のぶくんの事なんにも知らない。
   楽しい事も、苦しい事も、全部一緒がいい。
   また少しずつ話そう。」


長谷川 「ありがとう。」



弱弱しく、笑顔を作った彼の顔を見て、


彼の抱えてる重い重い荷物を、


一旦、降ろして


今度は、二人で抱えたい。





こんな風に、相手を思いやれるようになれた私は


今までの恋愛を思い返していた。






今、考えると


恋人と呼べるような相手は


いなかった。



私はずっと


「恋愛ごっこ」 をしていたのかも知れない。






長谷川 「由香さん?」


私 「ん?・・ああ。うん。」


彼に笑顔を向けた。


長谷川 「大丈夫?」


私 「私は大丈夫!のぶくんこそ・・・。大丈夫?」


長谷川 「大丈夫だよ。ありがと。」





頬笑み合い、



向かい同士なのに、二人、手を伸ばし合って


掌を重ねた。






私 「すきだよ。」


長谷川 「うん。すきだよ。」





私が原因で


大事なお兄さんの親友(竹内)と、

気まずい思いをさせているのかと思うと


胸が痛んだ。



もう二度と、竹内が私の前に現れませんように・・・。





そう願うしかなかった。













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