さて、以前からこのブログではADHDの報酬系はオカシイということを書いてきました。

特に遅延報酬の話については今でこそかなり知られるようになってきましたが

3年程度前はあまりメジャーな話ではなかったようで、結構読んでもらえました。

 

この遅延報酬課題が一般に注目されるようになったのはどうも、かの有名なマシュマロ課題

についての研究が広く報道された事で認知されるようになってからのように思われます。

ご存じの方も多いと思いますが、マシュマロ課題とは試験者が子供の被験者にマシュマロを目の前に置いて立ち去り、ある程度の時間我慢できたら、目の前にあるマシュマロより沢山あとであげますという試験です。 この試験の際に我慢強く目の前のマシュマロを我慢できた子はその後、無事に受験戦争を勝ち抜き、高学歴を獲得することで高収入にもつながったが

一方で、後でもらえる沢山のマシュマロを我慢できず目の前の1個を食べてしまった子は

その後の学業は振るわず、中退してドロップアウトしたり、ギャンブルにのめりこんでしまったりと道を踏み外した人が多いという興味深い話です。

 

ではADHDはどちらの側なのか?といえばもちろん、後でもらえる予定の沢山のマシュマロを我慢できず目の前のマシュマロを食べてしまった後者の方なのです。

これが遅延報酬の理解ができていないということと同義といえます。

 

したがってよくADHDは遅刻するとか、掃除ができないとか、将来を見据えたコツコツ型

の努力ができないというのは全部この遅延報酬系の不理解と関係があります。

遅刻すると問題が起きるがそれは未来の話で今やってる面白いことから離れられないとか

掃除をすれば無くしたモノとかが出てきたり、来客があっても困らないはずだが、それは

未来の不確実な話で今見てるテレビが面白いため掃除に取り掛かれない

というような形で表出してくるわけです。

 

この手の脳の異常、具体的には線条体などの報酬系回路の不全

一応当該本人もなんとなく本能的にはわかるわけで、セルフメディケーション

するようになるのです。このブログはサプリメントや行動療法などを扱っていますが

酒とかタバコや宗教に走る可能性もあります。どれくらい健全な解決策を選ぶかが

大事といえます。 また子供時代に落ち着きなく(今もそうかもしれませんが)授業中に

教室をウロウロしていたとか、隣の女の子に消しゴムを投げたとかこういうのも

脳の報酬系が動いていないため、刺激が欲しい→刹那的な享楽を追い求める

というパターンで強引ですがセルフメディケーションの一環といえます。

周囲の人はたまったものじゃないですが。。。

一方で、投薬の話になりますがコンサータなどが上手く効くタイプの子は

あれだけ暴れていたのに急に静かに大人しくなるということもあります

これは物理的に脳の報酬系が作動を始めたため、教室をウロウロしたり

誰かにいたずらするといった外部からの刺激による報酬を求める必要が

なくなったからといえます。 こういう作用機序があるようです。

 

一方これはドーパミン系の作動薬によるアプローチですが、最近ではセロトニンも重要なようです。神経経済学とかの学者が研究しているようですが、脳のセロトニン濃度が高まっている

と遅延報酬(未来の巨額報酬)が待てるようになるようです。このことは以前書きました

トリプトファンとか5htpがもしかすると効く可能性がありますが、試す場合は慎重さが求められます。

 

また遅延報酬理解とは、 かの有名なフロー体験でおなじみのチクセントミハイの話と

関係があります、彼がいうフローとはスポーツや音楽のプロが自分の高度な能力を

最大限発揮している最中、いわゆるゾーンに入ったという表現もありますがそのことです。

ちなみにテレビを見ている、遊んでいるなどというのは別に高度な能力を発揮してないので

当該本人にとっては楽しいといえば楽しいのですが、フロー体験がもたらす高度な知的満足

感には全く及びません。

 

ところでゾーンに入るためには、音楽なら高度な曲が弾けるまで、スポーツなら

膨大な練習が必要となります、 ここでまた出てきたのが遅延報酬です

現在のつまらないけど必要な将来を見据えた努力ができますか?という話なのです

このことはフローの話では、活性化エネルギーという用語で表現しています。

遅延報酬が理解できる人は活性化エネルギーを用いて努力することになります。

 

以上みてきたように、ADHDはゾーンやフローがもたらす高度な知的満足より

ギャンブルとかテレビをだらっと見ている、その他てっとり早く満足できる即時報酬

求めやすい傾向にあるのでくれぐれも注意しましょう。

 

問題提起だけでは無責任になってしまいますが、行動療法や疑似餌手法

セロトニン回路の活性などで健常者同等まではいかなくても

かなり良い線まで遅延報酬理解ができるようになる場合もあります。

それは成人後の努力にひとえにかかっているでしょう。 子供時代は目の前のマシュマロを

我慢できず食べてしまうかもしれませんが、大人になった自分はそれを乗り越えられる

かもしれません。 

 

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