(前回からの続き)
直近ではその騰勢が急に弱まってきた・・・ものの、前述したことから、アメリカの不動産価格は(多少の上下動はあっても)今後も上昇していく・・・というより上昇させる以外にないと考えられます。そのためには金利(住宅ローン等)を超低金利に誘導し続ける必要がありますが、足元では実質金利が長期金利はもちろん住宅ローン金利でさえも消費者物価指数上昇率(≒インフレ率)を3%前後も下回るという異様な低さであるにもかかわらずこうして不動産価格が下落しそうになっている(デフレ・スパイラル堕ちの瀬戸際?)・・・ということは、アメリカ―――米FRB(米中銀)―――は、(これまで繰り返しそうしてきたように)実質金利を現状のマイナス約5%(=長期金利3%前後-CPI8%前後)から同6%,7%・・・へと深堀していくほかないでしょう。その意味するところは・・・当然ですがインフレのさらなる激化になります・・・
そのあたり―――アメリカにはもうインフレに向かうコースしかないということ―――は最近のこちらの記事に書いたとおりです。もっとも、同記事でも述べましたが、行き先は同じインフレでもコースは正しくは2つ、つまりリーマン・ショック並み(それ以上?)の金融危機を経るコースと、同危機を経ないコースがあるわけですが、リーマンの苦い教訓(同行を破綻させてしまったこと・・・よりはむしろそれによってAIG[米保険会社]に絶対に不可能なデリバティブ決済をさせる局面を招いたこと?)からFRBには後者の選択しかありえません。つまり、住宅ローンの貸し手が誰なのかによらず、経営危機が表面化するずっと前に予防的に金融緩和に転じてその資金繰りを支援してやる、といったことです。
そのへんに関して捕足すれば、こちらの記事等でも書いたように、同じ中銀でも、日銀や欧州中銀などと違ってFRBが完全な民間企業(米欧金融資本が株主)であることからも予想できること。つまりFRBは当然、株主である米銀の救済そしてその利害の極大化に動くわけで、それは株主破綻の回避すなわち不動産バブルの崩壊阻止そして同再膨張に向けた金融緩和の再発動となる、という次第。でもそれでは上記のとおりインフレがますます激しくなって一般米国民の生活がいっそう脅かされるのでは、って?いいんです、だって彼ら彼女らは当行(FRB)の株主ではありませんので・・・(?)
このように、不動産市況から眺めても、アメリカ(≒FRB)が目下のインフレを抑止することができない(する気がない?)様がはっきりと窺えるわけです。もっとも現在、FRBは利上げを進めてはいますが、これは、いわばブラフ―――本当は上記のとおり不可能なのにFRBが中銀の役割(インフレ制御等)を果たす能力があるかのように装うこと―――とみるべきでしょう。そこは、すでに住宅価格上昇の頭打ちなどとして発現しつつある「禁断症状」(金利上昇)に対してFRBが簡単に屈して「麻薬」供与・・・のような超低金利環境への誘導に(何度でも何度でも)回帰することで間もなく明らかになるのではないでしょうかね・・・