(前回からの続き)
やはり・・・前々回に予想したとおりの展開になりましたね・・・
深刻な債務危機に陥っている中国の大手不動産企業「中国恒大集団」(China Evergrande Group)は、19日期日の人民元建て社債の約1.2億元の利払いを実施する、と発表しました・・・って、同社は9月以降の3回の期日においてドル建て社債の利払い(約2.8億ドル)のほうは行っていないにもかかわらず、です。その意味するところは・・・厳しい資金繰りのなか、同社(と中国当局?)が元建て社債の保有者(自国の投資家)への支払いのほうを優先した、ということ。他方でこれ、ドル債保有者(欧米投資家)にとっては恒大のデフォルト(債務不履行)宣言も同然でしょう。19日に1.2億元ものキャッシュが「身内」に渡れば、同社の手元にはもう「びた1セント」も残らないでしょうからね・・・
というわけで、UBS(スイス)やブラックロック(米)などなどの債権者は巨額の貸し倒れ損害を食らうことになってお気の毒・・・だなんて、正直、思いません。すべては自己責任だし、中国の一般庶民の苦労はそっちのけで、結果として恒大や共産党特権階級等とともに不動産バブルを煽ったあげくのことですからね・・・
とはいってもこれ―――過剰債務(それもドル建て債務)―――は、恒大だけではなく、中国の、とくに不動産セクターにおいては、先述のように構造的な問題です。したがって恒大がこうしてデフォルトすれば当然、他社も・・・となるのは避けがたいでしょう。実際、今月4日には不動産中堅の花様年(ファンタジアHD)が2億ドルあまりのドル建て社債の償還に応じることができずにデフォルトと認定されたほか、江西省などで事業を展開する新力控股の長期債務の格付けが投資不適格のシングルCに格下げされるなど、多くの企業のドル借金が次々と返済不能になりつつあります。そしてこのデフォルトのドミノは、そのまま欧米投資家の手持ち中華ドル債の不良化ドミノになるわけです。その総額は、少なめに見積もっても5千数百億ドル以上。これ、恒大のケースをふまえると、大半が貸し倒れる(欧米投資家のドルは中国人投資家への支払いに充てられる)と保守的に想定しておくべきでしょう。そのダメージは相当なインパクトがあるものと考えられます、日本円で60兆円超が消滅する?わけですからね・・・
もっともそのあたり、内外の経済メディアの多くは、中国の不動産バブル崩壊にともなう影響は同国内にとどまり、欧米金融システムへの波及は限定的、なんて見方を伝えています。が、わたしはもっと危機感をもったほうがよろしいかと考えています。というのも、上記、そしてこちらの記事等でも書いているように、欧米諸国は、高い利ザヤを得られるということで、超低金利マネーを借り受けて、これを中国(おもに民間企業)に貸し付ける、というディールを延々とやってきているわけで、これまた構造的、ようするに、(主要中銀演出の超低金利環境と)かの国のバブルの膨張を前提としたものだからです。それが崩壊するわけですから、次のような逆回転は不可避でしょう、つまり・・・中華不動産投資ファンド価格が暴落→レバレッジをかけていた投資家が大損→返済資金確保のために資産売却→株価・債券価格が急落・金利急騰→・・・といった毎度の?コースが現実となる、という次第です・・・