First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 マシュー・ボーンの新作バレエ、今回のお題は『ロミオとジュリエット』だ!

 

 

 前回観た『マシュー・ボーンのシンデレラ』が2018年、コロナ禍前だったことを思うと、何だか隔世の感がある。しかし『シンデレラ』同様、マシュー・ボーンの振付の下でプロコフィエフ作曲のバレエ音楽はいよいよ不穏に鳴り響き、物語の読み換えのほうもやっぱりよく出来ている。

 

 

 反抗的な子供たちを収容する「ヴェローナ機関」で出会い、恋に落ちた少年と少女、という設定はいいとして、でも「ロミオとジュリエット」である以上、一体どうやってあのエンディングに繋げるつもりなんだろう、と幕間に一人で首をひねっていたが、おおお、そう来ましたか——ちょっと強引、という気もしないでもなかったけど、でも決して悪くないぞ。

 

 ……にしても、キスしながら踊るシーンは、ダンサーにとって体力的にも結構キツいんじゃなかろうか?

 大塚国際美術館と言えば、西洋絵画の傑作を原寸大で陶板に焼き付け実物そっくりに復元し展示する、世界でも唯一無二、超ユニークな美術館である。私の周りで実際に行ったことのある人たちは口を揃えて褒めていて、私も大いに気になっていたが、先日ようやく羽田空港から徳島空港へ、徳島空港からバスでたどり着くことができた。

 

 

 本物そっくりとは言え、クリムトの「接吻」とかブリューゲルの「バベルの塔」とか、私が実際に実物を見たことがある作品に関しては、本物と比べて少しばかり作品のキラキラ感というのかピカピカ感というのに欠ける気がする。でも、世界各国の門外不出級の大作/名作を横並びで鑑賞できるおもしろさを前にすればそんなのは些細すぎる欠陥でしかない。大きいとは聞いてたけれどダヴィッドの「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョセフィーヌの戴冠」は本当に等身大サイズのデカさで大迫力だな、とか、レンブラントの「夜警」って実物サイズだとこんなにも躍動感があるんだな、とか、どれほど高画質でも画集やネット画像じゃわからないものを体感させてくれる。

 

 ましてやそれが一枚の絵画作品にとどまらず、システィーナ礼拝堂丸ごと復元とかになると、いよいよおもしろい。そりゃバチカンの本物の荘厳さとは比較にならないかもしれないけれど、逆に本物の教会ではないからこそキリスト教信者以外の人間もお気楽に楽しめる、とも言える。

 

 

 そう、本物じゃないからこそ、気に入った名画の前で好き勝手に記念撮影できるのもいい。本来、世界各地の美術館にバラバラに展示されているものを、特定のテーマや特定の画家ごとに何の遠慮もなく一ヶ所にまとめて展示されているのを眺めるのもすごく愉快だ。

 

 もちろん、本気の西洋美術研究家や愛好家には物足りないだろう。ゴッホの「ひまわり」とか、陶板の強みを生かして油絵具の厚塗り感を出してはいたが、それでも実物には及ばない——絵画研究には絶対に使えない。でも、私も含め、ほとんどの人は西洋美術の学術論文とは無縁だしね。実物を見るために世界各国の美術館や教会を飛び回る財力も時間もないしね。だったら0か100かにこだわらず、この陶板名画美術館をおもしろがるほうが断然お得なんじゃないかな?

 ヤングアダルト馬小説、The October Horsesシリーズの3作目にして最終巻。シリーズ2作目、Facing The Fireのアディは家族の元に帰省中、といのことで本作では不在、代わりにThe October Horsesのご近所さんだがこれまであまり付き合いがなかった馬術競技のトッププレイヤーのメイジーが、語り手の一人として登場する。

 

 

 メイジーは欧州遠征メンバーの一人に選出されるほどの実力者だったが、愛馬にして相棒のタイタンが試合中に突然死したことで窮地に立たされる。愛馬を亡くした悲しみや、代わりの馬を用意できないため遠征メンバーから外されることになったつらさに加え、タイタンが急死したのはメイジーがタイタンに違法な薬物を投与していたせいではないかとの疑惑が乗馬関係者の間で持ち上がったのだ。もともとメイジーの元コーチ、ダークが違法薬物投与やパワハラまがいの指導で訴訟沙汰になった時、メイジー自身はダークの違法行為を目撃していないと答えたせいで、馬術競技仲間から冷たい目を向けられていたが、タイタンの突然死がそれに拍車をかける結果となり、メイジーを中傷する悪質な動画がネットにアップされてしまった。おまけに、目下のところ豪華クルーズ旅行を満喫中の両親からは、これ以上馬は買わない/飼わない、それどころか今の馬術競技用リンク付きの家を売り払って都心の快適な集合住宅に移り住むことに決めたと電話で告げられ、メイジーの人生は20代半ばにして早くも詰んでしまった。

 

 ——かに見えて、そこはもちろんヤングアダルト馬小説、メイジーはThe October Horsesとの出会い、The October Horsesで引き取られていた馬たちとの出会いによって人生の新しい活路を見出す。最初のうちは四面楚歌だったメイジーが、周りの人や馬を受け入れて少しずつ人生を立て直し、人や馬への信頼を取り戻していく過程は、ところどころ若干強引な気もしたけれど、清々しいっちゃ清々しいし、続きが気になって読むのを止められなくなったのも確か。何ならこの小説が終わった後の物語があるなら読んでみたい気さえして、いやはや完全に著者の術中にハマってますな、私。