Around the World in 80 Days | First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 昨年末からBBCで放送が始まったテレビドラマ、「Around the World in 80 Days」。BBCのテレビでは現時点でまだ弟5話くらいまでしか放送されてないけど、なぜかBBCのiPlayerには既に全8話がアップされていて、ジュール・ベルヌの原作小説『80日間世界一周』は未読だしこれまでに製作された映画やドラマも観たことがないけれど、今回ばかりは「主演・デイヴィッド・テナント」にまんまとつられた。

 

 

 時は1872年。デイヴィッド・テナント扮する英国紳士フィリアス・フォッグは、金銭的には何不自由ない身分だが、ロンドンの自宅と会員制クラブを行き来するだけの無為な日々を送っている。そんな彼が、同じクラブの会員で学校の同級生でもあった友人のベラミーと売り言葉に買い言葉なやりとりをした挙げ句、「今や80日で世界一周も可能」という新聞記事を実現できるかどうかで2万ポンドの賭けをすることに。そして、会員制クラブのウェイターだったが身分を詐称してフォッグの従者になったフランス人のパスパルトゥーと、件の新聞記事を書いた当人であり旅の記録と報道をかって出たアビゲイル・フォックスの3人で、極めて場当たり的な世界一周旅行に出発した。

 

 デイヴィッド・テナントのフィリップ・フォッグは、私の期待たがわずかわいくていじらしくて、おまけにほんのり頼りない。おかげでハラハラさせられずにはいられないし、応援せずにもいられない。

 

 内容が内容だけに、エリート白人男性の帝国主義的価値観を表面化させずに済むものだろうかと危惧していたが、その点はかなり気を配って処理していたように思う。何より、このドラマのフィリップ・フォッグは夜郎自大な冒険家気質を持ち合わせておらず、総じて自分に自信がない。それ故、「80日間世界一周」はむしろ、フィリップ・フォッグにかけられた「自分にはできない」という呪縛を解き放つためのものとなる。
 

 にしても、どうしてフォッグはそのような呪縛を背負ってしまったのか? その答えは簡単に言うと「フレネミー」ってことになるのだろうが、ホモソーシャルな世界においてこのような形の呪縛がかくも強力に作用することがある、と、臆せず描いた時点で、このドラマは立派に2022年の作品になったと思う。