The Responder | First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 マーティン・フリーマン主演の、BBCのテレビドラマ。全5話がまとめてBBC iPlayerにアップされていたので、PCにかじりつくようにしてほぼ一気に観た。

 

 

 タイトルになっている「The Responder」とは、管内をパトロールして緊急通報を受けたら直ちに現場に急行し、初動捜査にあたる警官のこと。マーティン・フリーマン扮するクリスはリバプールでその任務にあたる一人だが、数々のストレスから目下のところメンタルダウン寸前で、職場の指示により定期的にカウンセリングを受けている。

 

 クリスは、良い人間でありたいと思っているし、良いことをしたいとも思っている。妻と娘のことも愛している。ただ、もともと仕事や家庭のことだけでも精神的にキツかったのに、さらに実の母親が癌になり、その治療費のため、幼なじみでドラッグディーラーをやっているカールにこっそり金を工面してもらい、その見返りとして裏で情報を流さざるをえなくなってしまった。良いことをするために警官になったはずが、気がついたら暴力で手っ取り早く現場を収拾するようになっていたりして、もう何が良いことで何が悪いことなのかさえわからない……。

 

 が、それでも大量の密売用ドラッグをなくしたことでカールたちから殺されそうになっている少女を見捨てることができず、その少女を逃してやろうとする。それがクリスにとって自分にできるせめてもの「良いこと」だったのに、おかげでカールから脅され自分の立場が危うくなったというのに、助けた少女が実はとんだ食わせ者だった。何のことはない、ドラッグはなくしたのではなく彼女が盗んだのであり、あわや殺されるところだったのにまったく懲りた様子もなく、売り捌いて金儲けする気まんまん。若さって凄い(苦笑)。

 

 少女がやらかしている一方で、クリスはいよいよ追い詰められていく。が、それでも警官としての日々の仕事は続く。続くったら続く。おまけに、これまでは一人勤務だったからある程度自由に動けたのに、思いがけず新人の生真面目な女性警官と組んでパトロールするよう命じられてしまった。

 

 このドラマで、マーティン・フリーマンは主演だけでなくエグゼクティブ・プロデューサーとしても名前をつらねている。それだけに、彼がこの物語のどこに惹かれたのか観ながらずっと気になっていた。彼がわざわざ本作を選んだからには、単に貧困層の荒んだ生活とそれを取り締まる警察の苦悩を描くにとどまるとは思えなかったものでね。

 

 実際、回を追うごとにクリスを取り巻く状況は悪化し続けるものの、最終回では見事な挽回が待っていた。最初、双方にとって「相性最悪」としか思えなかったクリスと新人女性警官との関係が、結果として双方にとって良い方向へと転じたのも何よりだった。

 

 ちなみに、精神状態が最悪の時のクリスときたら、知らずに観たら表情といい声のトーンといいマーティン・フリーマンが演じていると気づかないくらいの別人ぶりだった。でも、ラストで攻勢に転じた途端、「あ、マーティンが戻ってきた!」。