ナショナル・シアター・ライヴ「ライフ・オブ・パイ」 | First Chance to See...

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 ヤン・マーテルのブッカー賞受賞作『パイの物語』は、日本語訳が出ると同時に飛びついて読んで度肝を抜かれた。その後、アン・リー監督映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のほうも、さほど期待していなかったものの進化したCGの動物につられて観た。

 

 そして、今回の舞台版「ライフ・オブ・パイ」だが。

 

 

 原作が原作だけに、「動物パペットがたくさん出てくる児童向けファンタジーアドベンチャー」とうっかり勘違いして子連れて観に行ったらとんでもないことになる、と警告したいところだけれど、それはそれで一種のネタバレになりそうだから悩ましい。ナショナル・シアター・ライブでの客席の様子を見る限り、ロンドンのウィンダムズ劇場は大人の観客が中心っぽくて、ま、高額のチケットを買う層なら『パイの物語』がどういう話かくらい知ってて当然ってことなのかもな?

 

 小さいお子さんには迂闊に勧められないものの、その分、大人にはかなりおすすめしたい。それも、原作小説を知らない人には強くおすすめ。原作小説の衝撃を損なわない脚本もいいし、虎をはじめとする動物マペットたちは、私の大好きな「ウォー・ホース 〜戦火の馬〜」から約15年、また新しい次元の表現力を獲得していた。さらに、「ブック・オブ・ダスト〜美しき野生〜」で感服したプロジェクション・マッピング技術はこの舞台でも上手に活かされていて、いやはや舞台技術は一体どこまで進化するのだろう。

 

 最後に一言。沈没船からただ一人生き残った主人公の少年パイに対し、事故調査のインタビューをする日本人サラリーマン、オカモト氏があまりにあまりに日本人サラリーマンっぽくて、私は何度となく苦笑した。もしこの舞台をロンドンの現地で観ていたら、絶対いたたまれなかったね。