約束の日 安倍晋三試論 (幻冬舎文庫)
小川 榮太郎
幻冬舎
2013-07-19


(9月11日記)


本書のテーマは「第一次安倍政権の軌跡、業績、朝日ら左派勢力の行状」です。

オビには、「追悼 かつてこれほど日本と日本人のために戦った政治家はいなかった」とありますが、この言葉には微塵(みじん)もウソや誇張(こちょう)はないものでした。

安倍さんの業績については、7月14日、9月15日のコメントでも説明しているので、もう一度読んで欲しいです。

皆さんにとって人生は、まだまだ続き、政治との関係も続く以上、民主主義下の「まともな有権者」として、安倍さんの事績(じせき)を知っておかねばなりません。

政治を正しく考えるとは、過去からの政治について、正しく記憶することでもあるのです。

今回のように大半のメディアが真実を無視して、安倍さんや、事件について、一定の方向に誘導すべく、歪んだ報道を連ね、左の識者とされる卑怯卑劣な連中が、偉大な治績(ちせき)を残した大宰相を貶(おとし)めようと画策していますが、正しい事実を知っておくことが、正しく在(あ)ることの要諦でもあります。

本書、初版は2013(平成25)年7月ですが、今夏に再刊され、その内容が特に良いので、何度か薦めてきましたが、改めて紹介します。

当レビューの読者ならば、是非とも、基礎知識、情報として読んでおかねばならない書です。


目次の一部をざっと紹介すると、

内閣発足
組閣
教育基本法
スキャンダル暴き
正面突破の戦う政治
大臣の死
年金記録問題炎上
孤独な続投宣言
健康問題と靖国
辞任

となっています。


第一次政権、戦後最年少の52歳でスタートしました。2006(平成18)年9月のことでした。

前任の小泉純一郎首相、純ちゃんの後継指名により、スムーズに就任した感があります。支持率は70.3%、朝日でさえ63%でした。

しかし、たった一年で辞任しました。内情は本書に詳しく、かつ、よく安倍さんの胸中をも洞察したものでした。

1年で仕事をしたと言えば、菅(すが)前首相がいますが、安倍さんの1年は、それ以上になります。こんなに仕事をした、それも並の内閣にはできない難事業がいくつもありました。


列挙してみます。

発足翌月の2006年10月、国家安全保障に関する官邸機能強化会議設置
12月、Ⓐ防衛庁設置法等改正し、防衛省昇格
同月Ⓑ教育基本法、60年ぶりに改正!!
翌月3月「弾道ミサイル防衛システムを運用するための緊急対処要領」閣議決定
4月、海洋基本法成立
5月、Ⓒ国民投票法成立
同月、イラク復興支援特措法改正
同月、児童虐待防止法改正
6月、学校教育法・教育職員免許法改正
同月、日本年金機構法・国民年金法改正、
同月、年金時効撤廃特例法改正
同月、Ⓓ国家公務員法改正
その間、日中首脳会談、日韓首脳会談、日中韓首脳会談、Ⓔインド国会で演説

をしています。


防衛庁が省になることで、防衛に関する、同省の発言権、予算要求重要度が飛躍的に拡充しました。防衛は票にならん、というので歴代内閣がなおざりにしてきた案件でした。

Ⓑの教育基本法改正は、本書にあるように、激しい反対運動の中で、安倍さんだからできたことです。
これも票にならぬどころか、左派メディア勢力の抵抗が怖くて誰も手をつけられず、60年ぶりの改正になりました。

Ⓒの国民投票法が、これまでなかったこと自体が異常でした。改憲をするのに、その方法を司(つかさど)る法律がなかったのです。

いかに護憲の左勢力が強かったか、それを政治家が恐れてきたかを表しています。これも票にならないどころか、逆風に向かっていく案件です。

Ⓓの国家公務員法改正の主眼は天下りの規制だっただけに、官僚の激烈な抵抗がありました。

他の政治家は、とても手を付けるどころではなく、あの小泉純一郎ですら、本書108ページにあるように、「冗談じゃない」と即答したほどです。

Ⓔのインド国会での演説は、大変な感動を呼び、他国と同盟などしないインドが、クアッドや、「自由で開かれたインド洋・太平洋FOIPに参加する動機となった、重要な出来事でした。

皆さん、これらのこと、経緯、是非、覚えておいて下さい!!右から左に流していては、いつまで経ってもメディアのウソに流される、愚昧(ぐまい)な有権者、国民のまま、ということになってしまいます。

ⒶからⒹまで、『闘わない、闘えない政治「屋」』には到底できないことで、これだけでも大きな功績です。

そんな安倍さんを潰そうとしたのが、歪曲報道ばかりの朝日ら、左メディアでした。

朝日の社是は、「安倍の葬式はうちで出す」です。

これは、今は亡き、大物政治評論家の三宅久之(みやけひさゆき)氏に、朝日の元・論説主幹の若宮啓文(わかみやよしぶみ)が言った言葉です。

この話は有名で、論壇では誰でも知っているような話でした。

若宮は、ふざけた奴で、竹島を韓国に譲ってしまえ、と2005年3月27日付のエッセイで述べています。

中国出張に秘書兼愛人を同行、しかも「社の経費」で、という卑劣極まりない男でもあります。自分の愛人を連れて行くなら、自腹で払うのが男の嗜(たしな)みです。

えっ!?美達さん、そこじゃないでしょ、問題は!って!?

とにかく、こんな浅ましい男だということです。

朝日自体、脱税で調査が入り、そこで発覚したというわけで、他の社員も会社の経費で、接待ではなく、「自分らで飲食」したことがわかりました。

私のように飲食一切は全て自腹でと決めている者には、汚(きた)ない行為です。

オヤジは言いました、「遊びは自腹、遊びの金は花びら」と。

私は忠実に守り、花びらのように見事に「ひらひら」させていました。

安倍さんは、「戦後レジームからの脱却」を唱えています。

改憲の他に、アメリカに頼りっきりの卑怯で情けない国防体制の改革も重要でした。

情けないと感じませんか?

自分たちの生命・財産を守ってもらって、ひたすら金儲けに精を出してきた日本、他国の紛争にも手を貸すことなく、無関心の日本が。

金は持っていても国際外交では、いつも軽視されてきた日本です。

安倍さんが標榜した「美しい国、日本」とは、

文化、伝統、自然、歴史を大切にする国
自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国
未来へ成長するエネルギーを持ち続ける国
世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国

のことでした。

左派は、これを嘲笑しますが、どこに笑える要素、理由があるのかわかりません。皆さんは、虚心に、どう感じますか?

どれも日本人として大切なことです。

最後の項目につき安倍さんは実現した人でした。世界から寄せられた弔意や国葬をみれば、否定しようがありません。

官邸機能強化については、1996年発足の橋本政権から謳われてきましたが、実際に大きく進展したのは安倍さんの時です。

首相補佐官を2名から5名に増員し、国家安全保障会議の日本版を設ける下準備に着手します。これも大きな事業です。

また、それまで順送りだったⒻ内閣官房副長官の事務方(かた)に、的場順三(まとばじゅんぞう)氏を起用しました。

Ⓕとは、官僚の最高ポストのことです。

気骨のある人で、以前、竹下内閣の時に、「今の内閣の5室長は無能」と言った小沢一郎に対し、「私たちが機能しないとすれば、それは上の方の御器量の問題です」と切り返した人でした。

竹下内閣時での小沢は本物の実力者でしたので、的場氏、「もののふ」です。

安倍さんは、予定調和的に順送りされる人事をやめ、適材適所に改めたのでした。

細かな政策目標は本書で見てもらうとして、大きなものは、

「イノベーション25」
「アジア・ゲートウェイ構想」
「再チャレンジ支援策」
「成長なくして財政再建なし」
「教育再生」
「主張する外交への転換」
「国家としての対外広報」
「改憲」

でした。

本書では各条項について「ここがポイント」と、よくわかるように説明があり、これも知っといてほしいことです。

今後の日本にとって必要な施策が並んでいます。

教育に関しては、志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくる」としていますが、志のあるなしは、人にとって大切なことです。

外交では、日本だけではなく、世界とアジアのための日米同盟とし、主張する外交に転換とあります。

この着眼の大きさ、安倍さんしかいません。

対外広報、これは安倍さんになって大きく転換した一つです。日本の立場を十分に説明しようとした試みです。

従来の外務省が左派で自虐的、なにもしない無作為だったのに対し、まともにしましたが、岸田政権になって逆戻りになっています。

教育基本法改正についての世論調査では、必要が67%でした。

安倍さんが提示した条文は次の通りです。

第一条「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」

第二条一「幅広い知識と教養を身につけ、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培(つちか)うとともに健(すこ)やかな身体を養うこと」

同条三「正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」

同条五「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」

三は特に皆さんのために紹介しました。

「主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する」、どうか実践して下さい!!

そのためにも正しい視座と知識が不可欠です。

左派の中でも、バランスの悪い、ウソまでついて反安倍を唱える愚者のような日本人には断じて、なってはいけません!まともなリベラルの人もいるのですが。

その左派でも、おかしな側は、「愛国心」が気に入らないので、一の道徳心、五の国と郷土を愛する条文に猛反発していました。

世論調査では67%が愛国心が入ったことに賛成しています。

皆さんが今日まで育ち、生きてこれたのは、国のシステムがしっかりしていて、法だけではなく、警察・検察・裁判所・刑務所という、法の執行機関があったからで、国への恩義もあります。

人として恩は忘れてはなりません。

当時の民主党、今の立民なんぞ、似たような教育基本法を唱えていたのに、ころっと変わって反対しています。

もっとも、この党は何ひとつ建設的なことをできず、反対、批判のみが存在意義のくだらん党でしかありません。

あのひどい党、政治を擁護する知見のない学者として北大の山口二郎、東大の御厨屋貴(みくりやたかし)教授を紹介していましたが、両人共、実にくだらん小人です。

山口に至っては、安倍さんを「叩き斬ってやる」とデモの時に叫んだ大バカヤローで、社会にいなかったのが残念な私でした。

学者なら、是非につき、客観視した上で評価できなければなりません。こんな、くだらん輩(やから)に教えられる学生が気の毒です。

左派は、なんとしてでも、安倍政権を倒そうとしていました。そのプロセス、本書で読んで下さい。

正義感のある人なら怒りの念が湧くはずです。

毎度、書きますが、左でも、反安倍でもいいから、事実をベースに主張しなければなりません。

良いことは良い、しかし、こうではないか、ならば説得力も共感も変わるでしょう。

理念や理想は大切です。それ以上に現実に的確に対処すること、リアリズムが重いのです。

国、政治の基本は、国民の生命と財産を守ること、領土を守ることです。これを土台として、時の経過、情勢の変化に合わせた、現実的な施策を実践しなければなりません。

時には激しい反対もあるでしょうが、国、国民のためとあらば、安倍さんのように闘って貫(つらぬ)かねば政治家とは呼べません。

岸田のように風ばかり気にして、弱腰なのは政治「屋」、ポピュリストでしかないのです。

左派メディアは、旧統一教会の件でも野党、立民の不祥事は報じません。

枝野、岡田、安住、大串の他10名以上の幹部が自民党と同じく、祝電を出す、会合に出席、選挙支援されていたことを報じず、ひたすら自民党と安倍さん叩きです。

以前も、鳩山元首相の母からの5年で9億円もの「おこづかい」の脱税、小沢の政治資金での不動産購入、菅直人(かんなおと)の問題ある団体への6250万円もの献金、など、スルーしています。

9億円の脱税は、一般人なら100%実刑で刑務所行きなのに、左メディアは黙っています。

小沢の件も裁判になっているのに知らんぷりです。

今回も、立民が旧統一教会と、かなり前から付き合いがあることを報じていませんし、ズブズブなら蓮舫と立正佼成会の方が上です。

何度も書きますが、安倍さんが安全保障を整備した恩恵は、私たち国民には多大なものでした。これだけでも、他の政治家にはできないことで、不滅の偉功(いこう)を立てたと言えます。

それが選挙支援、ビデオメッセージくらいで叩かれる、しかも犯人の山上まで擁護(ようご)する風潮は異常です。

安倍さんは殺されたのです!

国と国民のために、どれだけ深く強い志と意思を持って闘ってくれたのかを思うと胸が震えます。

安倍さんは、強大な左勢力を恐れずに敢然と立ち向かった「サムライ、もののふ」でした!

日本人がまともなら、その恩に対する報謝の念があることを願っていますが、少なくとも皆さんには、そのように考えて欲しいです。

これだけの政治家は、もう出ません。他の人では、あそこまで闘えないからです。

旧統一教会の件で、安倍さんの偉大な功績が消える、「九仞(きゅうじん)の功を一簣に虧(か)く」ことは断じてありません。

本書では、安倍さんが病気と闘いつつ、頑張った様子も描写されていました。

第二次政権では第一次の失敗を糧(かて)に力を伸ばした軌跡が窺えました。

それにしても、外交プレゼンス小国の日本から、これだけの政治家が出たことは驚異でした。同じ時代に生きられた私たちの幸運を、安倍さんに感謝するばかりです。

本書、必読です!

今回の本は


安倍晋三秘録
石橋 文登
飛鳥新社
2020-11-05


※これも丁寧な作りの必読書!


国家の命運(新潮新書)
薮中 三十二
新潮社
2011-04-08



安倍晋三 時代に挑む!
安倍晋三
ワック
2022-06-08






日本人よ! 目醒めよう
高山正之
テーミス
2022-09-01



【新装版】危機の構造 日本社会崩壊のモデル
小室 直樹
ダイヤモンド社
2022-08-31



新装版 日本教の社会学
小室 直樹
ビジネス社
2022-08-22












「歴史の終わり」の後で
フランシス・フクヤマ
中央公論新社
2022-06-24






女たちのシベリア抑留 (文春文庫 こ 48-1)
小柳 ちひろ
文藝春秋
2022-09-01






です。


『日本人が本来もっていた、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらの全てを純粋に保って、忘れずにいてほしい』(アインシュタイン)


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