高円寺のバイクカフェ・キピオスで、
偶然隣に座っていた人から0円で譲っていただいたVESPA100。
ただより高い物はない、って言葉を人生ではじめて実感致しました。
なにしろひと目見た瞬間、頭に浮かんだ感想は
『土に還りそう・・・』
だったからね・・・。
『TK5』
(土に・還る・5年前)という略語を生み出したほどのボロVESPA。
当然ながら、
書くまでもなく不動車。
見るからに不動車。
リアル不動車なわけで、
そのオーラはもうすでに、走り出す事を拒否している趣を醸し出している。
悪魔のZの対極に位置していて、
ちょうどラピュタの巨神兵(動いてない奴)と同じくらいのオーラ。
前にキャブを外したり、いろいろ外したりしたんだけど、
キャブとかあまりにも腐ってるので、そのまま庭に投げ捨てて1年経過してしまった。
錆びまくっててホントスゴい。
錆落とししてったら、
クッキーみたいに車体なくなっちゃうんじゃないかって
心配になるくらいの状態。
過去に、VESPAをいじった事があって、
どんだけこのイタリア製のスクーターがイカレた構造になっているのか、
ある程度知っている人であれば、
こいつが走り出すまでに、
どのくらいの時間と労力が必要になるか想像するだけで
確実に体調おかしくなる。
なので自分も、できるだけこのVESPAに関する事を忘却する事に決めて、
そして1年という時間が平穏に流れたわけですが、
何を思ったのか急に取りかかることに決めてしまいました。
最初に掲載した写真で、なぜVESPAが横倒しになっているのか・・・
クラッチ、シフトワイヤーなどが、すべて車体の真下にレイアウトされているという
到底理解不能な設計がなされているため。
街でワイヤーが切れた時には、
自分もアスファルト上に寝そべって作業しなくてならず、
そのアスファルトと、街行く人々の視線の冷たさと言ったら・・・。
シフトワイヤーはマーキングしないで外してしまって、
エンジンを乗せる時に、どっちがアップ側とか分からなくなって、
50%に賭けた結果、逆に張ってしまってもう一度車体の下に潜ることになると
本当に泣きたくなるので写真を撮っておく。
すべてのケーブルやワイヤーを外し、
車体にエンジンを繋いでいるシャフトを引き抜く。
当然ノーグリース状態なので、
プライヤーを使用しないと引き抜けない。
ほんと引き抜けてよかったとおもう。
もう少しで鉄の買取相場を調べるところだった。
引き抜いたシャフト。カラッカラ。ゴビ砂漠か。
とりあえずエンジンは車体から下ろすことはできたが、
ボディからやるか、エンジンからやるか非常に悩ましい。
どちらも同じくらい産業廃棄物に近いからだ。
はずしたパーツを部屋で並べてみる。
『外したパーツ』っていうよりも、『出土したパーツ』ってほうがしっくり来るな。
ドライバーを使った記憶があるが、
どうやら発掘作業だったみたいだ。
よくできたOパーツである。
洗浄は取り付けの時にやるとして、
分かりやすく袋に分けておく。
左側のワイヤーのストッパーのネジ穴の中に、
米粒よりも小さいスペーサーとかあって、
知らないとそれ、なんかのカスかと思って捨てそうになるんだけど、
しっかり保存しておく事。
米粒より小さいスペーサーってなんだよ。
もうちょっとネジの形状工夫しろよ。
とか、ほんとに突っ込みたくなるけど、
こんな事に突っ込んでいてはVESPAを修理する事など到底不可能。
VESPAを修理する事、それはつまり、
ひとまわり自分と言う人間が大きくなるための修行であって、
このバイクの構造自体が、自分を成長させてくれる試練である。
VESPAを修理する事は、そう。
仏陀に近付く事に他ならない。
修行初日はここまで。