人間は誰しも、自分をよりよく、

より大きく人に見せたいという願望を持っています。

意識するしないにかかわらず、

それは人間の自然な心理と言っていいでしょう。

しかし、ほとんど人は「ほんとうの自分」を

きちんと自覚していますから、

実像と大きく異なるような自分の虚像を作ろうとはしません。

それを平気で、日常的に行うことができる人、

つまり常に自分の虚像を作ってそれを人に見せようとするのが、

虚栄心が強い人ということになるでしょう。

では、虚栄心が強い人はどんな心理を持っているのでしょうか。

そこで今回は複雑にして難解だと思われがちな

虚栄心が強い人の心理についてご紹介していきます。








『自分の中で「自分」という存在が膨張してしまっている』


最初にあげられる心理は、「自分という存在の巨大化」です。

ふつうの人に比べて、自分の中で「自分」という存在が膨張し、

巨大化してしまっているのが、虚栄心が強い人の

最大の特徴ということができるでしょう。

ふつうの人は「自分はせいぜいこのくらいの存在に過ぎない」

という自己評価をどこかでしています。

そのために、無理に自分を大きく見せようとか、

嘘をついたり話を脚色してまで、

自分の飾り立てようとはしません。

買い物をするときも、身の丈にあった商品を選びます。

たまに話を盛って自分を飾ったり、

見栄を張った買い物をすると自己嫌悪を感じ、

後悔するのがふつうの人です。

しかし、虚栄心が強い人の精神世界の中では、

自分の存在が実態を離れて大きく膨れ上がってしまっています。

ですから、その巨大化した自分を満足させるために、

ことあるごとに自分を飾り、

人に大きく見せる必要が生じるのです。

その結果、精神的にも金銭的にも無理をして、

自分を飾ろうとするわけです。

これは一種の自己愛ではありますが、

かなりゆがんだ自己愛、虚ろな愛ということができるでしょう。











『常に人との比較によって、アイデンティティを確立しようとする』


次に、アイデンティティ確立のために、

常に他人を持ち出すという心理もあります。

「自分は自分、人は人」という意識を持つことができず、

いつでも他人との比較でしか「自分が自分であること」

を認識できないのです。

他人よりも上に立っていたいという欲求が強く、

「自分は他者よりも優れている、人よりも大きな存在である」

と確認することによってのみ、

安心を得られる心理と言い換えることも可能でしょう。

要するに、精神的に独り立ちできず、

他者の存在を借りることによってはじめて

アイデンティティを確立できるのが、虚栄心が強い人なのです。










『自信はなく、常に危機感を抱いている』


自分の存在が実態を離れて膨れ上がっているということには、

ほとんど場合、気づいていません。

しかし、「自分が虚栄心の強い人間である」

という自覚はしっかり持っています。

「虚栄心を満足させるために、

自分は無理をしたり嘘をついたりすることが日常的にある」

という認識はあるのです。

したがって、「実は自分はそれほど大きな存在ではない」

ということを、心のどこかで感じていて、

その「正体」が明らかになることに強い危機感を抱いているのです。

「虚栄心が強い人」というと、

我の強い自信家というイメージを持つ人が少なくないでしょう。

たしかに我は強いという特徴はあります。

しかし本当の意味での自信家ではありません。

自信家のように人には見せていますが、

内心はふつうの人よりも自信がないのが、

虚栄心が強い人なのです。









『自己否定の要素があり、虚栄を張ることに「うしろめたさ」を感じている』


自信がないということと関連しますが、

自己否定の要素を常に持っているのが、

虚栄心の対用人の心理の特徴です。

「自分はどうしていつも、虚栄を張ってまで

自分を大きく見せようとしてしまうのだろう」という反省をします。

反省しながら、しかしどうしても虚栄を張らずにいられない。

そうした自覚がありますから、

「ああ、また虚栄を張ってしまった」といううしろめたさを感じ、

それが自己否定につながるというわけです。











『精神的に弱い自分がいとおしい』


これまで見てきたように、

虚栄心が強い人はじゅうぶんな自覚を持ちながらも、

虚栄の世界から抜け出すことができません。

ひとことで言うなら、「弱い人間」ということになるでしょう。

そして、「自分は弱い人間である」という認識もちゃんとあって、

「そんな、弱い自分がいとおしい」という心理を持っているのです。

ここで再び「自己愛」が登場しました。

最初の自己愛は自分の中で自分が不当に膨張してしまったがゆえの、

かなりいびつな性質のものでした。

それに比べると、こちらの自己愛は「ダメな自分がいとおしい」という、

ごく一般的でふつうの性質のものと言っていいでしょう。

自分がいとおしいという感情、心理が、

さらに自分の中で自分の存在を大きくするという結果につながります。

これが、虚栄心が強い人の「自己膨張のスパイラル」ということになります。









このように、虚栄心が強い人は大変複雑で難解な心理を持っているものです。

そして、見てきたように「根は気の弱い善人」ということもできるのです。

ですから、「虚栄心が強い人=嫌な人、悪人」という先入観は

持たないでつきあうことをおすすめします。















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