K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ミロ展 ー 日本を夢みて

2022年02月28日 | 美術
たまにはタイムリーな情報共有を、ということで先日会期が始まったばかりのミロ展をご紹介します。渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中です。




《展覧会概要》
スペインのバルセロナで生まれた大芸術家、ジュアン・ミロ(1893-1983)。ピカソと並ぶ現代スペインの巨匠として日本でも広くその名は知られていますが、ミロの創作活動の裏側には日本文化への深い造詣があったことは意外なほど知られていません。一方日本では1930年代からミロの作品が紹介され、世界に先駆けて1940年にモノグラフ(単行書)が出版されるなど、日本は早くからその活動に注目をしてきました。そして現在も日本各地の美術館が数々のミロの名品を収蔵しており、今なおミロの人気は衰えません。
本展では、若き日の日本への憧れを象徴する初期作品から代表作、そして日本で初めて展示されたミロ作品を通し、相思相愛であったこの画家と日本の関係に迫ります。さらに本人のアトリエにあった日本の民芸品や批評家の瀧口修造との交流を示す多彩な資料を通してミロと日本の深いつながりを紐解き、ミロというよく知られた画家を約130点の作品と資料で新たな角度からご紹介します。
(ミロ展特設サイトより) 



NON STYLE-カメレオン作家

ミロの作品と聞くと、何となくですがクレーやカンディンスキーのような、図形や線などの幾何学的オブジェクトを組み合わせた抽象絵画を想像します。
なぜカンディンスキーらが率いる青騎士のメンバーではなかったのかと思ってしまうほどですが、美術史的にはシュルレアリスムに分類されるようですね。

まとまった形でミロの画業を観るのは初めてでしたが、ミロ=抽象絵画という勝手なイメージはこの展覧会を通じてなくなりました。
時代によっては実にセザンヌ的な風景画を描いていたり、ナビ派を想起させるクロワゾンを用いたり、晩年には習字に影響を受けたピエール・スーラ―ジュのような黒い作品群を制作するなど、型にとらわれない作風が私の目には新鮮でした。
特に、アルティガスという陶芸作家と協業して立体作品まで制作していたとは……スタイルに拘らず挑戦を続けた、カメレオンのような作家だったのですね。



一足遅れたジャポニスム

サブタイトルにも「日本を夢みて」と記されているように、ジュアン・ミロは型にははまらない作家でしたが、逆に徹底していたように感じたのは日本文化への執着です。
展覧会自体が歌川国貞のちりめん絵から始まり、要所で登場する東アジア的なモノたち。ジャポニスムと呼ぶには少々時代が現代寄りですが、所謂それ、タイムラグ版ジャポニスムです。

特に今回の展覧会で取り上げられていたのはいち早くミロを日本に紹介していた詩人瀧口修造との合作です。半具象的な画風とも捉えられるミロとは作風的にも相性が良かったのかもしれません。

とりわけ個人的に強く関心を引いたのが、華道家の勅使河原蒼風と親交があった点です。実は、私は大学の卒業論文で映画監督の勅使河原宏を扱ったのですが、その父が草月流の創始者蒼風なのです。
今回は関連作品が三点、《マーク画廊ミロ近世展ポスター》《すると鳥は、ルビーが降り注いで茜色に染まったピラミッドの方へ飛び立つ(勅使河原蒼風のために)》《女(勅使河原蒼風のために)》が草月会から出品されていました。
思いがけず勅使河原と再会した高揚感に加え、いずれの作品も実にミロらしさ(←前段と矛盾…笑)に溢れていたということもあり、三点ともポストカードを購入してしまいました。

展覧会はあと2か月弱開催中ですので、よろしければ皆様ご覧になってみてください。

因みに、次回はあのコロンビアの巨匠フェルナンド・ボテロの個展「ボテロ展 ふくよかな魔法」がBunkamuraで開催予定です。
併せてドキュメンタリー映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』も公開されるのだとか……こちらもめちゃめちゃ気になりますね。
BOTERO - Official U.S. Trailer

「白」くて「細」いという敷衍した西洋式の美に対しアンチテーゼを唱えたボテロの姿、展覧会と映画の両側面から明らかになるのが今から楽しみでなりません。


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